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天才魔法使いは幸せか3

 自分のことすらよく理解できていなかった僕が、誰かの為になることなど出来るのか心配だった。

 だけど、

「馬鹿ね。なれるに決まってるじゃない」

 肯定してくれた。何の迷いもなく。

「見込みがなきゃ、引き受けていないわ」

 彼女の笑みに、引き込まれる。

 その笑みは、嘲笑ったり皮肉ったりするものではなく、以前のような、自信に溢れ、優しく、輝いている笑みだった。

 僕が今まで見てきたものの中で、一番、輝きを放っていた。


 

 輝かしい笑みが、どれくらい救いだったのか、彼女にはわからないだろう。僕にもよく分からない。

 だが、その笑みで、胸のなかにあった、自己嫌悪に似たもやもやは消えていた。

 


 僕は彼女を何回か見かけたことがある。話したことはあまり無いのだが。

 いつも彼女は楽しそうで、明るくて、優しくて、輝いていた。

 羨ましかったなぁ。

 彼女は、僕が今まで見てきたものの中で1番に。美しいと思った。



「だけど……」

「あーうるさいうるさい」

 本当に出来るのかとしつこくも聞こうとすると、彼女は両耳に手を当て、横に首を振る。聞き飽きたと言わんばかりだ。

「シエル、貴方はまず自己肯定感を上げなきゃね。そんなんじゃ、人生楽しくないわよ」

 呆れられた。

 だけど、不安にはならなかった。見放したとかいう訳では無かったからか。


 

 彼女は立ち上がって、僕に近づく。そして再び座ったままの彼の前髪に触れる。

 髪を払い、どこからか取り出したものーピンだろうか。それで止め、他の前髪は耳にかけた。少しくすぐったい。


 

 彼女は手鏡を取り出し、僕に僕の姿を見せた。

「これが……僕?」

 サブジーナス公爵子息や宰相閣下子息、王太子殿下とは違う印象だが、確かにこの世の中でいう『美男子』だった。

「……僕、なんだ……」

 こんな美丈夫が。

 ふわふわとした天然のチョコレートブラウンの髪に、くっきりとしたグリーンフロスの瞳。少し女の子らしいが、全体的にうまくまとまっている。

「そうよ。イケメンなんだから、自信持ちなさい」

 何それ。イケメンなんだから?外見について褒められても、あんま嬉しくない。

 その筈だったんだけど……今は、どうしても嬉しい。涙が上がってきて、体内から出てきそうだ。



 ……サブジーナス公爵令嬢は、悪女になったと思っていた。それもとびきりの。だけど……

 彼女の得意げな、それでいて優しさの滲む笑顔をちらりと見る。悪女がこんな表情をするとは思えない。

 彼女は、本当に悪女なんだろうか……?

 視界が、きらきらと輝き始めた。

 悪女よりかはもっと……


 ◇   ◇   ◇

 

「ありがとうございます。師匠!」

 憑き物が落ちたようにぱっと表情を明るくさせたシエルが、満面の笑みでそう言った。

「……別に」

 不意打ちの笑顔と真っ直ぐな敬愛の眼差しに、ソフィアは思わず一瞬言葉を詰まらせ、誤魔化すようにそっぽを向いた。



「ていうか、師匠?」

「はい。師匠です。駄目ですか?」

「まあ、良いけど」

 (悪女としては、違う気がするのよね。……別に、励ますつもりなんて毛頭なかったのに)

天才魔法使いシエルの回想、終了致しました!少しでも良いなと思ってくださったら、いいねやリアクション、評価、ブックマークなど、宜しくお願いします!

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