50.王太子は背負い
実技ー実戦ー
「今回は、皆さんの実力を推し測るため、魔法の使用と他者の援助以外何でもOKの実技戦となっています。実力の近しい人とあてています。怪我には気をつけて、行ってください」
多くの女性陣は女性と対戦する。当然だろう。きちんと戦えるかどうかすら怪しい。しかし、ソフィアは男子生徒とだ。ゲームでも優秀だったけれど、噂で聞いていた時も文武両道らしいので、良い配分だ。
だけど。
「ソフィア、直ぐ勝つなぁ……」
思わず呟くと、レオン子息が聞きつけ、怪訝そうにする。
「ソフィア?殿下、ソフィアお姉様のことソフィアって呼んでましたっけ?」
「え、私、ソフィアって呼んでたかい?」
「はい」
「そうか……無意識だったな」
取り繕って、誤魔化す。レオン子息は一瞬探るような目をしたが、直ぐにそんなことはなくなり、言った。
「殿下はフランクと対決するんですよね。頑張ってくださいね」
「ああ、ありがとう。レオン子息も、頑張ってくれ」
「はい。ありがとうございます!」
にこりと無邪気に彼は笑う。
ソフィアや令嬢・夫人達がレオン子息のことをよく、可愛い可愛い言っていたのを思い出した。確かに、男の俺でも可愛いと思う程だ。
「皆さん、対戦する人は確認しましたね。それでは、見本をお見せします。相手は……誰が良いですかね……うーん」
教師は対戦相手を決めるのを忘れていたことに気付き、首をひねる。その時、フランクがひょいと声を上げた。
「サブジーナス公爵家のギルはどうですか?執事ですけど、強いと思いますよ」
教師は少し驚いてから、朗らかに笑い、「では、その方に頼もう」と言った。
ギル……あ、この人か。
ギルさんを見つけた。確かに、ソフィア軍団と居るのをよく見る。
それにしても、嫌そうだな。顔が凄い。
フランク子息が手招きし、ギルは渋々という感じに出てくる。
露骨に不機嫌そうな顔をしているのを見て、教師は「負けるのが怖いのか」と勘違いしたのか、フォローの言葉をかけた。
「大丈夫ですよ、本気では流石にやらないですから」
「別に負けるのが嫌だとかいう訳じゃないんですけど……」
ギルさんはレオン子息に、助けを求めるように視線を向ける。レオン子息は彼の視線に気づいた後、グッドポーズをした。
ギルさんは諦めたように溜息をつく。
「本気でお願いします。手加減されるのあまり好きじゃないですし」
彼は教師に言った。教師は承諾してから、尋ねた。
「剣、使わなくて良いんですか?貸しましょうか?」
「いえ……剣は慣れていないので大丈夫です」
「分かりました。では、始めます!」
皆に呼びかけるように大声を出す。それと同時に、教師は攻撃を仕掛けた。
教師の木剣が空気を斬る。ギルさんは避けたと同時に、手刀を構えて首を狙う。が、流石に直ぐにやられるような弱い者ではない。伊達に実技教師をしていないのだ。
教師は手でそれを受け、胴付近に足を振り蹴る。
タッ
ギルさんが、踏み込みもせず軽々と跳躍する。そして、教師の頭を目がけて蹴りを放った。しかし、やはり受け止められた。
ギルさん強いっぽいけど、流石に教師には勝てないだろうな……ん?
俺は目を疑った。
「ギル、拮抗してる?思ったより先生強かったのかな」
「多分ナイフとか持ってるだろうけど、生徒の前だし使えないしな。ギルは恐らく暗殺や隠密の方が向いてるから、こういう形はキツいかもな」
レオン子息とフランク子息の会話を聞き、私は会話に入る。
「そうかい?」
「殿下は違うと思っているんですか?」
驚いたようにレオン子息は聞き返してきた。
「ああ、この試合、ギルさんが勝つよ」
「どうしてそう思うのですか?」
不思議そうに尋ねる。当然だ。ついさっき、初めてきちんと認識したのに、強いかどうかなんて普通分からない。
俺は、微笑んだ。
「知らなかったかい?王族特有の魔法。私も取得してるんだ」
「あ」
フランク子息は思い出したらしい。思い出した直後、成程と納得をする。流石の天才設定だ。
「それは……」
ギルさんが風を切るスピードで教師の背後に一瞬で回る。
「鑑定眼」
教師が振り返るその前に、彼は教師の首に手刀で触れた。
ギル・ジョーンズ 男 12歳
称号:無音の処刑人
好感度 53
所属 アマリリス王国筆頭公爵家
身分 サブジーナス公爵家ソフィア専属執事
ステータス
統率:64 知力:76 武勇:99 政治:51 魔術:65 野心:30
キール・スミス 男 31歳
称号 無し
好感度 61
所属 聖アマリリス王立学園
身分 聖アマリリス王立学園実技教師
ステータス
統率:69 知力:58 武勇:86 政治:41 魔術:30 野心:24
「ま、負けました」
教師がゆっくり手を挙げる。
次の瞬間——
静まり返っていた訓練場全体に、どっと凄まじい歓声とどよめきが広がった。




