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42.悪役令嬢(主人公)は当然ながら巻き込まれる

 その後、私は部屋に戻って筋トレ&ストレッチ(日課)を行い、食堂でレオン達と夕食を食べ、夜になった。

 私は夜のバルコニーに立ち、風を快く感じていた。すると、隣からキィィーとバルコニーの窓が開く音が鳴る。視線を向けると、隣のテラスの柵の向こうから、見覚えのある輝きが見えた。この美しい銀髪は……。

「こんばんわ、シルヴィア様」

「あら、ソフィア様……お隣だなんて嬉しいです。こんばんわ」

 まさかの、隣室がシルヴィアの部屋という運命感満載のエピソード。

「シルヴィア様も風に当たりに来ましたの?」

「……はい。それと、星を見に」

 そう言って夜空を見上げる彼女は、美しく⋯⋯儚かった。

「シルヴィア様……貴方は今、幸せですか?」

 唐突にそんなことを尋ねてしまい、私はハッとする。

「も、申し訳ございません。気にしないでくださいまし」

何言ってんのかしら、私。

「ソフィア様は、私が幸せそうにみえますか?」

 質問に質問で返されてしまった。

「……私には、そう見えます」

「そうですか。ならば、私は幸せなのでしょう」

 寂しげな柔和な微笑みを見て、私は何かを間違ったのだろうと察した。けれど、私は何を間違えたのか、彼女が何を抱えているのか、今の私には分からなかった。

「ソフィア様……」

 シルヴィアが、まっすぐに私を見つめる。その瞳はひどく揺れていた。

「私は、貴方に酷いことをしてしまうかも知れません」

 問い返そうとした直後、彼女はハッとし、困ったような眉を下げた笑顔に戻った。

「世迷言です。どうぞ忘れてください。それでは、おやすみなさいませ」

 彼女が部屋に消えた後も、私は冷たい夜風の中で、ただ呆然と立ち尽くしていた。



 翌日、生徒会役員による学園見学が始まった。学園図書館などに行く。

 が、私は昨日シルヴィアが放った言葉を考えてばかりで、役員の話を1ミリも聞いていなかった。いや、いつも人の話聞かないんだけれどね。

「はぁ……」

 溜息を付く。あー、幸せが逃げていくー。

「ソフィア?大丈夫か?」

 ギルがこっそり声をかけてくれる。

 「ええ、大丈夫。……いや、大丈夫じゃないかも」

 「どっちだよ」

 私達の会話を聞いていたフランクがそう突っ込んでくる。

「多分大丈夫よ」

「無理しないでね、ソフィアお姉様」

 レオンは優しい笑顔を浮かべる。

 大丈夫よと笑っていると、前方で説明を受けていたカイン殿下と、ふと目が合った。殿下はいつもの完璧な王子様スマイルを浮かべつつも、その綺麗な眉をほんの少しだけピクリと動かした。まるで「お前、あからさまに上の空だな?」とでも言いたげな、胡散臭さ満点の視線。

 え、ええー。私、そんな大丈夫じゃなさそうかしら。

 うーん、まあ、でも待って。

 これって、ギルもフランクもレオンも、なんなら王太子殿下まで私を気にして視線を注いでるってことよね?

 ということは……うん。

 確実に逆ハーレムが順調に築かれているってことじゃない!

 私の体調をみんなが心配して囲んでくれるなんて、逆ハーレムの基本中の基本だわ!

「なら良いわね」

 さっきまでの憂鬱はどこへやら、私は一瞬でポジティブ思考に切り替え、内心で盛大にドヤ顔を決めた。

「ソフィア、急に不気味な笑みを浮かべるな。本当に体調が悪いなら、今すぐ医務室へ連れて行くが」

 フランクがジト目で私の顔を覗き込んできた。

「何言ってるのよフランク、私は万全よ!さあ、次の見学場所へ行きましょう!」


 ◇   ◇   ◇


「学園創立時の貴重な魔導書が保管されている特別資料室だってな。ソフィア、お前絶対好きだろ?……え」

 フランクは言葉を止める。

「どうしたのフランク?」

 レオンが不思議そうに小首を傾げた。

「ソフィアが、居ない」

 ギルとレオンがその場で固まった。

「お、お手洗いに行っているだけでは……?」

 ギルが冷や汗を流しながら周囲を見回すが、そこにあの華やかな公爵令嬢の姿はない。

「……あいつ、花を摘みに行くって言ってからもう何十分も経ってる」

 フランクの顔からすうっと血の気が引いていく。

 窓の外から、ざわざわと木々を揺らす生暖かい風が吹く。

「あいつ、何処行ったんだ」

 

 ◇   ◇   ◇


 森の近くで歩いている時、突然、心臓がドグンッと音を立てた。

 身体が徐々に熱くなってくる。身体から湯気が出ているみたいだ。頭痛もする。吐き気がする。

 私はお花を摘みに行ってくると言い残して学園の森へと入っていった。

 誰にも見られないように奥深部までいかないと。

 そう思って歩いていくが、足運びもたどたどしくなり、不自然な歩み方で進んでいく。



「くれーたー……」

 奥深部にはクレーターのような大きな穴があった。崖とも言える。しかし、縦に垂直だった。また、ちゃんと立っていないとバランスを崩すような強風が吹き乱れている。

 私はそこに向かって足を踏み出し、バランスを崩してこけた。

「いたい……」

 頭痛がする。体が熱い。身体に力が入らない。

 おかしいわ。全魔術を極め、筋トレを趣味としているこの私が、自分の身体の自由すら効かないなんて。

 ああ、頭痛が激しい。痛い。気持ち悪い。暑い。

 目をつむった後、ひときわ強い風が吹く。変な感覚がした。

 そのまま、私の意識は暗闇へと途絶えた。

この話の続きを明日の夜に公開します!最近模試の振り返りで忙しくて、今月、そこまで更新できなさそうです!次回、フランク目線です。

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