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40.悪役令嬢は平穏を望まない

「――皆様、これより大講堂前にて、クラス分けの発表を行います。速やかに移動を開始してください」

 上級生の子息が、風魔術を使って、声をサロン内に響き渡らせる。パーティーの終了を告げる鐘の音が鳴った。

「パーティー、終わるの早すぎないかしら」

 全然楽しめなかったと不満に思っていると、ギルが近づいてきて「これからも沢山あるんだ。その時楽しめば良い」と言った。それもそうねと納得し、私はギルとフランク、レオン、ローラと一緒にクラス分けの紙を見に行く。

「さあ、クラス発表を見に行きましょう!」


 

 大講堂の前に張り出された掲示板の前は、新入生たちでごった返していた。

 聖アマリリス王立学園のクラス分けは、個人の能力そして何より家格や噂、実力によって厳格に決められる。そして、そのピラミッドの頂点に君臨するのが、一握りの天才と超名門貴族だけが集められるSクラスだ。

「まあ、見るまでもないけれどね」

 なんなら、実際には存在しないけれど、SSSクラスに入っても私の実力としてはおかしくない。

 私は、人混みをかき分けるまでもなく、一番高い位置にある『Sクラス』の名簿へと視線を向けた。そこには、私の予想通りの名前が並んでいた。

 ・ソフィア・サブジーナス

 ・レオン・サブジーナス

 ・フランク・ロペス

 ・シルヴィア・ロドン

 ・カイン・ヴィルハルト・アマリリス

「やっぱり。全員同じクラスね!」

 誰一人欠けることなく、乙女ゲーム主要人物全員、一番上のSクラスに大集結だ。物凄く平穏な生活を送れない気がするわ。それが楽しいのだけどね!

「……これはまた、面倒なクラスになったな」

 フランクが掲示板を見上げながら、疲れたように溜息をつく。

「まあまあ、楽しそうじゃん。僕は、ソフィアお姉様とフランクと一緒で嬉しいよ」

 レオンが一六三センチの身長を少し傾け、可愛さ100%の笑顔を浮かべる。レオン、可愛すぎて心配だわ。

「ええ、私も嬉しいわ、これからよろしくね。ギルも宜しくね」

「ああ」

 授業中、教室の前の廊下には、各貴族の専属使用人はずらりと並んで待機する。待たせるのは申し訳ないのだけれど、学園の規則なのよね。


 

 ふと見ると、少し離れた場所で、聖女シルヴィアがカイン殿下の隣に立ち、自分の名前がSクラスにあるのを確認していた。

 殿下は相変わらずの鉄壁仮面で眩しい作り笑顔を浮かべ、シルヴィアもまた、穏やかな微笑みを浮かべている。

 二人並ぶと、神々しいほどに美しい絵画のようね。

 それで、シルヴィアは誰を攻略するのかしら。レオンやフランクは私の逆ハーレム要員だから攻略されそうになったらガンガン邪魔させてもらうわよ。


 

 全ての条件は揃った。さあ、私の最強のSクラス学園生活、開幕よ!


 ◇   ◇   ◇


 私達は教室内に入り、自分の席を確認する。

 皆さん、聴いてくださいませ。

 なんと!

 最前列でシルヴィアと王太子殿下に挟まれた!要注意人物トップツーがどっちも隣ってどういうことよ。

 救いは、真後ろにフランクとレオンが配置されたことね。メンタルの安定性がこれで確定されたわ。

 「宜しくお願いね、二人とも」

 私はすちゃっと後ろを振り返り、挨拶をする。

 前世のオタク知識を総動員し、美少女がやったら一番可愛いとされる「首の傾け度」「完璧な口角の上げ具合」をバッチリ意識してみた。

 「ああ、宜しくな」

 「こちらこそだよ」

 あまり意味無かった。私こんなにも可愛いのに

 ――しかし。

 前を向いた私は、微塵も気づいていなかった。

 私の真後ろで、フランクとレオンが「今のは反則だろ……!」と言わんばかりに、耳の先まで真っ赤にして完全にフリーズしていたことに。

 


 王太子殿下にも挨拶をしなければと考え、私は社交スマイルを浮かべる。

 「王太子殿下、1年間宜しくお願いいたしますわ」

 「ああ。仲良くしてくださるとありがたい」

 ニコッと、普通の令嬢ならばどきりとしそうな笑みを浮かべる。

 ですが残念。

 私、ゲームで、貴方の胡散臭いその笑顔見慣れていますの。私には一切効きませんわ!

 心の中で盛大にドヤ顔を決める。

 「シルヴィア様も、是非仲良くさせてくださいまし」

 「はい。勿論です。ソフィア様と同じクラスでホッとしました」

 両手を胸の前で合わせて、ふんわりと微笑む聖女様。

 ……うっ、可愛い。

 胡散臭い王子とは大違いだわ。癒やされる。



 それから、出席確認が行われた。

 「王太子殿下」

 「ロベリア子爵子息」

 「聖女様」

 「マルタン伯爵子息」

 「サブジーナス公爵令嬢」

 「ロペス宰相家子息」

 「ベルナール侯爵子息」

 「サブジーナス公爵子息」

 という感じで、当たり前だが優秀な人ばかり集まっている。良好な関係を築かなきゃ!



 それから、担任となった先生に、今日はもう寮に戻るようにと言われる。

 明日は、ゲーム通り生徒会の方々による学園案内だ。実物がどんなのものなのか、楽しみだわ。



 私はレオンとフランクと一緒に教室から出る。外には、ビシッと並んだ使用人たちの列があった。

 圧がすごい。

 横から見るとほぼ直線で、殆どの使用人たちには気品があり、背筋もピンと伸びている。

 我が公爵家にも負けない程の服の高級さだ。生地の良さが見て取れる。

 私は、ギルやローラに緊張しながら声を掛ける。

 「行きましょう」

 彼らはこくりと頷いた。



 学園の噴水広場まで歩く。

 「優秀な人ばかりだったわね」

 私がそう切り出すと、フランクが「そうだな。問題など聞いたこともない人たちばかりだった」と冷静に頷く。

「使用人も凄かったぞ。思わずびびった」

 ギルがそう言うと、後ろに控えていたローラがげっそりとした顔で遠い目をした。

「あと、世辞や自慢ばかりでしたね。今までこういうことはあまり無かったので、ソフィア様たちの気持ちがうっすら分かりました」

 今まで無かったというのは、二人が平民だからだろう。サブジーナス家は実力主義なのよね。貴族とかあまり見ないから、必然的に侍女もあまり居ないわね。

 二人が貶されたりして無くて、ひとまず良かったわ。


 

 寮エリアに着くと、ギルやレオン、フランクと別れる。

 流石に、男子と女子で建物を分けるらしい。この学園では女子には女子の使用人、男子には男子の使用人しかつくことを許されてない。別に良い気がするのだけどね。

 ……でも待って。

 良くない? うん、良くない!?

 女子生徒に見られる危険がない男子寮だからこそ、彼らも少し積極的になれるはずよ!

『教室ではそっけないあいつ。だけど、寮ではいつもと違う姿で……「くっそ。何でこんなにドキドキするんだ!? 俺、どうなっちまったんだ。もしや、俺、あいつのこと……」』

 うふふ、腐腐腐腐。最高だわ。カイン殿下とフランクあたりでこのシチュエーション、想像するだけで寿命が延びるわ。

 あ、でも、ちゃんとカイン殿下には注意しないとね。

41話、華麗なる女子寮と、過保護な専属メイドを明日の21時頃に投稿します!過保護な専属メイド、誰かお分かりですよね?

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