番外編 義弟(策士)は策に溺れる
――バリバリッ、と大気が真っ二つに引き裂かれるような断裂音が走った。
間髪入れず、天地をひっくり返したような「ズドォォォォン!!」という凄まじい落雷音が、世界を力任せに揺さぶる。
「近くに雷が落ちたのかしら」
「ああ、それなりに近くに落ちた。火は上がってないが、気にかけたほうが良いかもな」
「そうね」
ギルの返事に、私は納得する。雷が森林などにもしも落ちたら、火事になってしまう可能性がある。田畑などに落ちるのも問題だ。領民達が一生懸命作った農作物が駄目になってしまう。家も燃えてしまうかもしれない。衣食住のどれか一つでも無くなるのは避けたい。
火が付き始めていたら直ぐに消火しなければ。
しかし、そこらへんは大丈夫。サブジーナス家は過去を見ても優秀な人ばかりだ。私が考えることを考えつかない筈が無い。
そう考えて、ローラやギルを下がらせ、筋トレとストレッチを追加でしてから寝ようとする。
ベッドに腰を掛けた時、トントン、と扉が叩かれた。
「誰かしら」
十一時という遅い時間に訪問してくる人、思いつかないわね。
不思議に思いながら扉を開けると、枕をギュッと強く抱きかかえているレオンを見つけた。目を潤ませ、体を震わせている。
「え……レオン!?」
こんな遅い時間にどうしたの?と戸惑う私の服の裾を、彼は掴んで言った。
「雷が鳴って、その…僕怖くて…一人じゃ眠れないんだ。……一緒に寝て良い?」
上目遣いをするレオンは可愛すぎる……!
これを断れる人はこの世に居るのだろうか。少なくとも私は無理!
「勿論良いわよ。さあ入って」
私は、喜んでレオンを部屋に招き入れる。
そして、ベッドの窓側に私が座り、隣に来るよう促した。
彼は、タタッと軽く走ってベッドに近づき、ベッドにゆっくり乗った。
それを見てから、私はベッドに寝そべった。
「やっぱり、レオン、雷苦手なのね」
「え、あっうん。その……雷の時の大きな音が苦手で」
レオンは、鼻の頭を指で擦りながらそう答える。なんとなく気まずそうだ。雷が怖いのを恥ずかしいと思っているのかも知れない。
私はレオンの両手を掴んでから、彼の目を見つめて言った。
「雷が苦手でも、私はレオンが大好きよ。苦手な物は誰にだってあるわ」
微笑む。
「え。あ、ありがとう……」
レオンは、少しだけ強張った笑顔で、だけど嬉しそうに笑い返してくれた。
◇ ◇ ◇
ローラとギルが、自室に向かいながら廊下で言葉を交わす。
「今日は雷が激しくなっているけど、レオン様大丈夫かしら」
心配しているローラに、ギルは大丈夫だと答える。
「その心配は無用ですよ。俺も、さっき心配になってレオン様の様子を伺ってみたのですが……
『レオン様、大丈夫ですか?』
『ギル……!うん、大丈
_バリバリッ!ドッカーン!
俺は、突然の、大きな雷にびくっと体を揺らした。しかし、レオン様は、「うわー、凄い雷鳴ったねー。あ、僕は大丈夫だよ』
_バリバリッ
彼が言い終わるとほぼ同時に雷がなる。そして、彼の背後で雷が光る。落雷の閃光が逆光となり、レオン様の無邪気な笑顔を不気味なほど勇ましく照らし出していた。なんとなく怖かった。
「レオン様、雷に物凄く強かったです。微動だにしなかった。なので、多分、というか絶対大丈夫です!」
「ええ、そうなのね……」
ローラは複雑そうな表情になる。意外だと思っていると、彼女はあることを思い出した。
「だけど、さっき雷怖いから家族の誰かと一緒に寝るって言ってたわよ」
彼女の言葉に、ギルは戸惑う。
「え?」
「え?」
◇ ◇ ◇
寝れない。
向き合った状態でソフィアお姉様と寝るなんて、僕にはまだ早かった。ソフィアお姉様が僕のこと抱きしめてるから凄い近くて、体が熱い。お姉様の甘い香りが肺の奥まで入り込んでくる。鼓動が速すぎてバクバク鳴っている。
これ、ソフィアお姉様に聞こえてないかな?ソフィアお姉様寝てるし、大丈夫だとは思うけど……。嘘がバレるのはどうでも良いけど、緊張しているのがバレる方がよっぽど恥ずかしい!
雷が怖いなんて言う嘘をついて来たけど、なんというかこれは……。
あと、「やっぱり、レオン、雷苦手なのね」って何!?急に的はずれなこと言われてびっくりしたよ!そんで雷、そんな、全然怖くないよ!?軽くショックなんだけど!絶対に義弟としか見てないよね!
……義弟だけど、男なんだよ?
「もっと、僕のこと意識して。僕のこと、男として見てよ。ソフィアお姉様……」
寝ていて届かない言葉を、彼女の鎖骨のあたりに落とす。
溜息を吐いてから、月明かりに照らされた寝顔を見つめる。憎たらしいほど綺麗で、世界で一番可愛い僕の太陽。
彼女の白い頬に「チュッ」とキスをする。
「おやすみ、ソフィアお姉様」
起きた後、ギルやローラなどに二人とも怒られました。
活動報告で、そのシーンを書こうと思います。是非見に来てください!




