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専属執事は悪役令嬢を観察する3

 俺は立ち上がってから、ソフィアに手を差し出して立ち上がらせる。

「ありがとう」

 彼女が微笑んだ。

「私、朝はずっと屋敷周りを走っているのだけれど、ギルも一緒に走る?」

「六時半に終わるとして……あと三十分程度か」

「四周を目指しましょう!」

「それは流石にキツイだろ」

 一周三キロだから十分程度なのだ。普通に考えたら三周程度しか出来ない。

 目標を高く持つことは良いことだとは思うが。

「良いの良いの。じゃあ、走るわよ!」

 彼女は楽しそうに笑んでから、走り出す。それを受けて、俺も彼女を追いかける



「ソフィア、遅いぞ。毎日走ってるんだろ?俺より遅くてよいのか」

 俺は、黄金の装飾が施された青い屋根の尖塔群を見上げながら、快調なペースで石畳を駆け抜けていく。髪が風になびく。

「ギルが速すぎるのよ!私、騎士団新兵くらいの速さではあるのよ!?」

 ソフィアは、額に汗を浮かべながら、俺の背中を必死に追いかける。彼女の金髪はポニーテールにまとめられ、走るたびに揺れている。

 俺達は今、城壁の内側、ギリギリ敷地内を一周するランニングコースを走っていた。三十haという広大な敷地を一周するこのコースは、城内とはいえ、その景色は刻一刻と変化し、走る者を飽きさせない。

 今までしっかり見てこなかったが、それを勿体なかったと思うほどの美しさだ。



 スタート地点を通過し、まず、広大な庭園へと差し掛かった。

 高さ十メートル以上はある巨大な噴水が、オレンジ色に染まった水を噴き上げていた。幾何学模様に整えられた花壇には、世界中から集められた色とりどりの花が咲き乱れ、甘い香りが漂っている。

「やっぱり綺麗ね」

 息を荒くさせながら、そう彼女は呟く。

 この庭園は、確かに綺麗だ。

「まあ、そうだな」

「その返事何!?普通にめっちゃ綺麗だと思うのだけど。何?見飽きた?てか待って、息が……」

 何故か怒られた。

 そう言われても、この庭園よりも綺麗なものを知ってるからな_。



 ソフィアは息を切らしながら、庭園の端に並ぶ白磁の彫像たちの横を通り抜けていく。彫像たちは、歴代の公爵家の人々で、特に初代公爵夫妻の像は他の物と比べ、大きく、より細部までこだわられている。確か、サファイア様とレヴィア様だ。

 庭園を抜け、演習場へと差し掛かった。

 ここは、公爵家直属の騎士団が訓練を行う、広大な演習場だ。朝になれば、ここで何百人もの騎士たちが馬を駆り、槍を振るう壮観な光景が見られる。サブジーナス公爵家の騎士団は、国の騎士団に劣らない技術を持った、優秀な騎士ばかりだ。

 大きな鐘の音が一度、重厚に響き渡ると同時に、厩舎から次々と馬が引き出され、騎士達が整列を始める。

 鉄と鉄が触れ合う音、馬のいななき。

 ソフィアをちらりと見ると、目を輝かせて騎士達を見つめていた。ソフィアは騎士に憧れを持っている。


『勇気と子どもや女性への優しさ、誠実さを兼ね備え、主君に忠誠を誓う。_強さと優しさ、両方共持っているなんて、……マジで良いじゃない!騎士キャラ、最高!』


 前に、そんなことを話していた。小説の感想を語る時のソフィアと全く同じ状態だった。

 強く、優しい彼らが居るということは、以前は厄介だったが、今は頼もしい。



 演習場を抜け、俺達は再び庭園へと戻り、出発地点を目指して、最後の直線へと差し掛かった。

「さあ、そろそろ一周だぞ!」

 俺は、さらにペースを上げ、ソフィアを置き去りにしていく。

「ちょ、待って!?貴方体力ありすぎじゃない!?」

「ソフィア、一周した所で休憩するか?」

 そう聞かれ、彼女は悔しそうにしながらも叫んだ。

「っ〜……する!」

 思わず笑いが溢れた。


 ◇   ◇   ◇


 ソフィアと別れてから、俺は何時間か前にナイフ投げの練習に使った林檎達を自室に持ち帰り、切ってから、朝食として食べる。朝はお腹が空かないので、このくらいの量で十分だ。

 汗を拭い、身体を清潔にしてから執事服に着替える。身だしなみを整えると、俺は旦那様の執務室へ向かった。



 執務室の扉をノックしてから入ると、中には二十代ながら貫禄のある旦那様と、ルドルフさんが居た。

 俺は、一応気配を探って三人の他に誰もいないことを確認してから、二人がギリギリ聞き取れるような小さな声で報告をし始める。

「今朝侵入してきた暗殺者ですが、旦那様を狙ったようです。_依頼者の正体は既に?」

 旦那様は頷いた。やはり、ローラさんが報告していた。

「彼の所属していた暗殺者集団ですが、本拠を知っています。処分しますか?」

「いや、今は大丈夫だ」

「承知いたしました。それと、痕跡は消したものの勝手に処分してしまいました。勝手な判断、申し訳ありません」

 旦那様はそんなことで謝らなくても良いと失笑し、椅子から立って俺に近づく。

「ありがとう、ギル」

「……いえ」

 旦那様が、俺の頭にポンと手を置いた。俺は、旦那様と目が合わせられず、視線を旦那様から逸らす。耳が少し熱くなる。

 やっぱり、旦那様とソフィアは親子だ。

GWですね!皆様、素敵な連休をお過ごしください。

私は5月末のテストに向けて勉強中ですが、執筆も止まりません!

すぐに次の話を更新しますので、また読みに来ていただけると嬉しいです。

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