守り方
(さて、どうしようかしら?)
レリーナは空箱を目の前にして悩んでいた。『囲う』のはいつも、結界を使用していた。水属性の魔術を使って囲うことをしたことがなかった。
(一番、加工作業にもってこいなのは『氷』かしら?)
氷系の魔術は様々な形を作らせ固める。固体のため、通り抜けられることは、ほぼない。また、分厚くすれば、よっぽどの衝撃では、壊せない。頑張れば、溶けない氷だって作れる。レリーナは氷は守るのにもってこいと判断した。
(守る前提よね………。守るための建物……『城』………)
レリーナは祖国の王城を思い出していた。白い壁に青い三角屋根の建物が堂々と建っている。そして、その城を何重にも囲う高い塀と深い堀。
(跳ね橋を毎回、渡ってたわね。というか、また、不倫とかしてないわよね?)
遠くの地にいる元婚約者にふつふつと怒りが湧いてきた。不倫症の元婚約者の新しい婚約者ソーナ嬢のことが心配になってきた。シーナ嬢を悲しませたら、絶対に許さないわよ、ライルーク!
湧いてきた怒りをなんとか抑え込み、レリーナは集中して魔力を流していく。イメージは掴めている。モチーフは祖国の王城だ。下から徐々に氷の柱や壁が出来上がっていく。
(侵入できないように………隙間ができないように………)
穴が一つもできないように注意をはらって出来上がったのは………
「これは………『城』……ですか、ね?」
「窓がねぇな…………」
「形はいびつ……こほん!失礼。歪んでしまっているけど、隙間はないね……」
かなり歪な形の『城』だ。窓すらなく、高い塀に囲われ、難攻不落の城のように思える。侵入口がない。全くない。一つもない。入り口すらない。
「なんか、違う……。こんな歪な形じゃない……。やっぱり、思った形にできない………」
レリーナの評価はいまいちだ。レリーナは芸術的センスがほぼ皆無。唯一、できるのはバイオリンのみ。頑張っても人並みにできない。それがずっと、悩みだった。
「まあ、形はどうだっていいけどね。守れているし、いいんじゃない?これは、どれぐらいもつの?」
「さあ?半日は持つと思いますけど?」
あっけらかんと言っているレリーナに驚きの視線が突き刺さる。
「でも、壊されたら終わりですね。自動で修復はできませんから」
そう。これの難点は、穴が空いたら、そこから侵入されることだ。誰が塞げばどうってことないが、放置されれば、そここら崩される可能性もある。
「じゃあ、僕の出番はないですね」
「何言ってるのかな、グラディオ?一応、君もやるんでしょ?」
黒い笑顔のエルハントに肩を捕まれ、逃げれないと悟ったグラディオは渋々、箱の前に立った。
(レリーナのようにはできないからな……)
グラディオは氷を自在に操れる技術はまだ、持ち合わせていない。水だと、守るのに不十分……。
グラディオはとある本の内容を思い出した。
『過冷却水』凍らない水。刺激を与えると、氷となる。ゆっくり時間をかけて冷やしていく。すると、不思議なことに凝固点を下回っても水は凍らない。
(これを応用できないだろうか?水を出すと同時に風で冷やしていく。時間がかかるかもしれないけど……)
水のドームが箱を覆った。箱を中心に、水が張っている。無色透明のその水は変哲もないものだ。
「多分、できました。レン、試しに箱を取ってみてください」
「簡単に取れるぞ」
ダイレンがドームに手を突っ込んだ。すると、ドームは凍り、張ってあった水が一気に凍っていった。もちろん、ダイレンの手は氷によって、出せなくなり、足も固定された。
「一回だけですが、旗を守ることができます。レリーナのように、器用にできませんので…」
レリーナは目が点になっていた。もちろん、知識はあったが、やろうとも思っていなかった。
(これが筆記一位と二位の差かしら?)
知識を実践する者としない者。するとしないで、これだけ変わるものだ。
「すごいじゃないか!旗の守りは、ディオに任せるよ。囲いはレリーナ嬢が適任かな?」
結果、レリーナは旗を囲い、グラディオは旗の守護者となった。
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