歓迎パーティーの出来事【後編】
「なんか……嫌な感じ……」
「レリーナもそう思います?」
「程々にしろって、言っておいたんだけどなぁ」
「無理ね。私が言っても、無駄だったもの」
エリザベスでも、手を焼いているのだそう。どういう方なのでしょう、リベット皇女は。
眺めているだけだったが、レリーナが急に走り出した。
「え?!リーナちゃん!危ないですわ!」
シャーロットの声も聞く耳なし。
「なんで、なんで?!なんで、言うことを聞いてくれないのよ!わたしは!皇女なのよ!『風剣到来』」
皆が防ごうとしたが、すでに遅し。風の剣は金髪の少年に向かって飛んできた。少年が覚悟を決めたその時。
「なぜ、学園内で魔術を使うんです?学則違反ですよ?リベット皇女殿下――ですよね?」
銀簪を片手に持ったレリーナがいた。
説明しよう。レリーナは簪を『対物理結界』『対魔術結界』で覆い、風の剣を打ち落としたのだ。
「あ、あなたに指図される義理はないわ!わたしは皇女なのよ!」
「リベット皇女殿下。この学園では、身分は関係ありません。まして、権力は使用できないんですよ?ご存知ありませんでしたか?」
もちろん、学則に書かれておりますよ。と付け足した。
周囲はレリーナに唖然となっていた。
「し、知らないわ!でも、関係ないでしょ?」
「いいえ。ここは、学園の敷地内です。本日をもって、私達はこの学園の生徒となりました。学則に従うのは当たり前ですよ?」
ああ。レリーナ、怒っている……。グラディオの時のようには、なっていないが。
「てめぇ、この方を誰だと――」
「もちろん、この国の皇女殿下ですよね?知っていて、こうして注意しているのです」
「はっ。笑わせるな!お前の態度、不敬罪にあたいする!」
「あら、そうですか…。ですが、今は無礼講でしたよね?」
リベット皇女の腰巾着らしき令息が食って掛かったが、言いくるめられた。
「ふん!お前、だからって!」
「あぁ、うるさいですねぇ。ちなみに、私はレリーナ・アルースです。以後お見知りおきを」
名乗っていなかったので、カーテシーをとって、挨拶をした。いつ見ても、綺麗だ。
「お前の名前は聞いとらん!主席だからって、生意気な!」
「カイン殿、彼女を罵倒するのは、どうかと思うよ。彼女の保護者はあのルーベン殿、魔王ガウラン陛下だよ。自分がかわいいなら、それ以上、やめた方がいい」
エルハントが後ろにいた。いつの間に………。
「はあ?!ルーンだかなんだから知らねぇが――」
カインと呼ばれた少年は、途中で、止まった。汗がダラダラ垂れている。
「僕の娘をよくも罵倒しましたね?」
「レリーナちゃんを悪く言う輩は、国王だろうと、許さねぇ」
レリーナの保護者が怒気を放っている。レリーナは慌てて、二人を止めに行った。
「パパ、ガラン兄さん、私は平気ですから」
「そうですか……。次はありませんから」
「何かあったら、絶対に、我に連絡するように!」
「で、リベット姉上。これはどういうことですか?学則を破るなんて、もってのほかです!」
「エルハントには、関係ないわ!指図しないで!」
「ついでに言いますと、ディオは僕側の者です。引き抜くのはいいですが、本人の意志を尊重してくださいね。ディオ、行こう」
エルハントは座り込んでいた少年を立たせて、集まっている所に戻ってきた。
「リーナ、俺の娘がすまない!」
「ごめんね、レリーナちゃん」
「顔を上げてください!簡単に頭を下げないでください!無礼講であったとしても、やりすぎてしまいました。お詫び申し上げます」
レリーナはカーテシーをとって、深く謝罪した。
「……。あの、さ、助けてくれて、ありがとう、レリーナ。数年ぶり、だね」
「数年ぶりです、グラディオ様。この学園のいち生徒として、当然のことをしたまでです」
沈黙。レリーナもグラディオも思っていることはただ一つ。
((会話が続かない……))
「二人とも、顔見知りなんでしょう?ならなぜ、他人行儀なんだい?」
エルハントが痛いところについてきた。他の者もエルハントと同じ考えのようだ。
「顔見知りですが……なんというか……」
「数年前がアレですと……どうしても……」
二人揃って、遠い目をしていた。
エルハントはいきなり、レリーナの手とグラディオの手を握らせた。
「レリーナ嬢。こいつはグラディオ。みんな、『ディオ』と呼んでいる。それで、ディオ。こちらはレリーナ嬢。『リーナ』とシャルル達がそう呼んでいる。あ、いい忘れてたけど、二人とも、敬語は使わないこと。いいですね?」
「………えっと……改めて、よろしく、ディオさん?」
「よろしく。……『さん』はいらないから」
エルハントは満足そうに頷いた。
グラディオも交えて、会話をしていると、ガウランが近づいてきた。
「レリーナちゃん、こいつが我の孫だ。挨拶しな」
「初めまして、レリーナさん。ボクは魔王の孫のトネリ・ガウス・ハライフィル。祖父様から貴女のことを伺っているよ。一つ上の学年だけど、仲良くしてくれると嬉しいなぁ」
「トネリ先輩?よろしくおねがいします」
「ん〜。よろしく〜。みんなもよろしく〜」
トネリが誰かに似ているような気がした。雰囲気が何となく、ケイに似ている。
「そういえば、簪、どうしたのですの?せっかくのヘアアレンジが台無しですわ!」
レリーナはすっかり、忘れていた。着物で言う、帯の部分に簪を挟んでそのままにしていた。レリーナはおずおずと簪を出した。
「まあ、そろそろ時間なので、直さなくてもいいですのよ。ただ、残念に思っただけですの!」
「でも、アレは仕方なくない?動けたのは彼女だけなんだし」
「わたしもレンと同意見!かっこよかったです!」
「ありがとうございます?」
そろそろ、解散する時間。レリーナは改まって、カーテシーをとった。
「では、早いですが、私達はこれで」
国のトップに挨拶をして、一足早く、会場を後にした。
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