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最大限の警戒を

学長フォリアとの会談を終えて。





 学長室を後にした私たちは、一先ず寮への道を並んで歩く。

 その道中の話題は、もちろんさっきの部屋での会話だった。


「…………お母さんもお父さんも、聞いてないんだけど」


「それはこっちのセリフですわっ!! 異次元の方だとは思ってましたが、四英雄の二人の間の娘なんて聞いてませんわっ!」


「よ、四英雄?」


「はぁぁ!? それすらも知らないで冒険者志してますの!? 冒険者を目指すものなら誰でも聞かされるお話ですわっ」


「あ、いやー……ほら、産まれて14年はその土地で修行漬けで、最後の1年もお父さんにくっ付いてただけだったからどうにも世情に疎くて……

 今思えば、お父さん異様に慕われてたなぁ」


「あったりまえですわ! ダリウス、カティアと言えば世界に二つしかないSランクパーティの構成者ですわ……!

 輝かしいまでの実績を短時間で積み上げ、果ては、復活し世界征服を目論んだ魔王をも討伐したとされているんですのよ!」


「魔王は知らないけど、マオって名前のお姉さんならよく家に遊びに来てたよ」


「変な洒落で現実逃避しないでおくんなまし!?」


「……あはは」


 い、いやだって、本当に何も聞いてないし。

 お父さんは、自分は母さんには絶対勝てないって笑うし、お母さんは、私はそこそこ強かったとしか言ってくれなかったんだもん!


「剣聖ダリウスに魔導王フォリア。狂け…………闘王カティアの三人に、彼らを束ねるは第一皇子にして勇者、アグニス·スタンフォード様。

 この国に暮らすものなら知らぬ人のいない四英雄ですわ」


「今、狂犬って言いかけ……」


「コホン! 飛ぶ鳥を殺す勢いで実績を重ねていた彼らでしたが、ある日、魔物の異常活性の原因を探るため魔族領へ出撃。

 数ヶ月後、帰ってきた彼らは『復活した悪深き魔王を討伐した』と宣言し、そしてその場でなんとパーティの解散をしたのですわ」


 解散?

 話を聞いている感じだと、まだまだこれからってところっぽいけど……


「解散の理由は本人たちが発表していないので、諸説ありますわ。

 アグニス様が王位継承の準備に入るため。養成学校学長にフォリアが就任するため。

 以上二つが、その後の動きからも最有力とされておりますね。


「へ~」


 ふむ。時代を造った超一流パーティの解散理由か……

 あ、今度聞いてみようかな。隠したいわけじゃなければ教えてくれるはず。


「……そういえば結局、3人目の子来なかったよね?」


「来てませんわね」


「大丈夫なの?」


「良くは無いと思いますけれど。

 まあ、仮登録証を受け取るだけなら今日じゃなくとも……あら?」


「貰ってないじゃん! あれ? じゃあ用事って顔合わせとお使いだけ?」


「……有りえますわね。

 くせ者だったという噂も聞きますし、実際はオーク討伐をやらせる事自体が主目的やも」


 ふえ~。食えない人なんだなぁ。

 まあでも、最初から依頼が目的なら……安心度合いは増えたかな?


「……いや、逆か」


「どうしましたの?」


 思わず漏れちゃった独り言。

 聞こえたらしく、ソレイユちゃんが反応した。


「あ、えーと。オークの調査及び討伐依頼を私達に投げ渡すことが主目的だったってことはさ。

 期待の新人への初依頼の斡旋ってことで、比較的安全……なんなら裏で安全を確認した依頼なのかなーってちょっと思ったんだけど」


「ふむ。充分有りえますわね」


「超くせ者って話なんでしょ? じゃー逆かなって」


「逆」


「うん。失敗の可能性が有るくらいに、困難になるように手が加えられている可能性。

 油断すると足をすくわれるって教訓にもできるし。

 もうこの際、オークキングが出てきて当然くらいの準備で行ったほうが良いかも」


「オークキングって、それAランクパーティが駆り出されるレベルの事態ですわよ!?」


「うーん……でも、おかーさんなら、それくらいはやってくるよ」


「確率がぐっと上がるその補足情報聴きたくなかったですわっ!?」


 お母さんの修行傾向からすると、普通に有り得る。

 そしてフォリアさんは元パーティメンバーで、くせ者ってことは恐らく頭脳役……


 うん。これはもう警戒しすぎくらいで丁度良いね。


「ふふ。無茶振りは久しぶりだなぁ。出発、いつにする?」


「どうしてそんなに余裕ですの……こちらはいつでも構いませんわ。恐らく馬の脚で半日というところでしょうし、泊まりの準備はしたほうが良いですわね」


「あ、そうだね。じゃあ明日の早朝にする? 調査もすぐ終わるとは限らないし」


「わかりましたわ」


「よし。じゃあ明日、今朝よりちょっと早いくらいに集合しよっか」


「あ、お待ち下さいな」


「ん?」


 解散しようと背を向けかけたところ、呼びかけられる。

 改めて向き直ると、ソレイユちゃんはキッと引き締まった表情をしていた。


「修練、付き合っていただけませんか? やれることはやっておきたいですので」


「ん、もちろん! でも、初依頼直前なのにやる気だね。大丈夫かな?」


「貴女が脅かしすぎるからですわぁ!!!」


 あははは。飛ばしすぎないようにしないとね。

 終わったらお母さん直伝のマッサージも教えとこう。翌日に疲労が残りにくくなるんだ!








名前出しまくって、全力で警戒する姿をみせているわけだけれども。

読者の方々的にはコレはどういうフラグとして受け取られているんだろうかって興味を密かに持ってます。


ここまで露骨だと、出るか出ないかを結構楽しみにしてもらえているのかな? もしそうだと嬉しいな。


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