道中のトラブル? はお約束
最大限の警戒をしつつ依頼に向き合うことを決めたアデルたち。
翌朝。
早くから集合した私達は、馬に乗って目的の村付近を目指していた。
まあ正直な話、ただ速度だけを考えると、半日程度の距離なら走ったほうが早いけど……一人じゃないし、それに余計な消耗をするのもね。
何度でも言うけど、今日の私達はオークキングすら想定して動いている。
ある意味初陣でもあるのだし、ちゃんと万全を期さないと。
そういえば、昨日の修練の時に今さらながら衝撃を受けたんだけども。
ソレイユちゃん、クラスで言えば魔導師になるらしい。
後衛から強力な魔法をぶっ放す、攻撃の軸。
私が今世もなりたかったやつだね。
しかし、私と行うのは、基礎身体能力向上を主としたトレーニングな訳で。
だから、その時に少しだけ聞いてみた。
「ソレイユちゃん、私と修行してくれるのは嬉しいけど……
これでいいの? 無駄とは思わないけれど、効率悪いかも」
私に追いつこうと言う時に、寄り道まがいのことをして良いのか。
そんな視線に、彼女は真正面から立ち向かってきた。
「武芸も乙女の嗜み。
もちろん、魔術の修練もコレまで以上に積みますから問題は有りません。
……それに」
そこで一旦言葉を切ったソレイユちゃんは、ニヤリと笑ってみせる。
「……それに、ただ魔法の使い手として超一流になるだけでは、貴女と並び立てるとは思えませんわ」
「…………ソレイユ」
正直、まだまだ私自身も未熟な身であるから、この心意気が正しいかどうかはわからない。
けれど、なんだかたまらなく胸が高揚したんだ。
今は流石に、積み重ねの差が物凄いかもしれないけど、いつかはきっと……
「……ル。アデル!」
「ふえっ! はいっ」
不意に強く呼びかけられて、思考の海から舞い戻る。
隣をみると、ソレイユが訝しそうにこちらを伺っていた。
「大丈夫ですの? ボーッとしていたように見受けられますけど」
「ん、大丈夫。ちょっと考え事」
「全く。しっかりしてくださいな。わたくしにとっては初陣のようなものなのですから」
「あれ? 魔物退治とかしたこと無いの?」
「冒険者でもない者は普通、戦いには出ませんわ。
……というか、変に腕に覚えの有る子供が無茶しないための15,16歳ルールですわよ」
「ふえ~。10歳ぐらいにはお母さんに森に放り込まれてたけどなぁ」
「それを実行するカティア様も平然とするアデルも異常ですわ」
「いや、流石に平然とは出来なかったよ。魔物怖いし!」
「あーはいはい今更ちょっと普通なところもあるよアピールしたって響きませんの」
「ひどくないっ!?」
そんなこんなで適度に雑談をしつつ馬を飛ばし続ける。
もう少しで村……といったところで、思いがけない事態に遭遇した。
「あれは……!?」
「オーク、だね。もしかして、まずいかも?」
街道をまっすぐに進んでいた私達の目の前に現れた、一団。
二足で歩行し、武器を使いこなす。豚と猪を混ぜたみたいな顔の生き物……それがオークだ。
いわゆる魔物と呼ばれる存在の中でも、それなりには強い。単体ではDランクだったか。
そこそこの腕の冒険者なら苦労はしないというレベルだ。
当然ながら、こんな街道周辺に出てきて良いような魔物ではない。
そして、奴らが囲うようにしているのは、恐らく……
「っ! 被害は出てないんじゃ、無かったのっ!」
馬の背に立ち上がると、そこから大ジャンプ。
上空から確認。やはり、囲まれているのは馬車とソレを護衛しているであろう人間たちだった。
咄嗟に屋根の部分に飛び乗って、状況を見渡す。
幸いというべきか、その場で倒れている人間は居ない。
四人の冒険者に対して取り囲むオークの数は8。
一人は魔法使いだから、実質三人で前を抑え込んでいることになる。
まだ抜かれては居ないみたいだけど、長くは持たなそうだね。
「助太刀します!」
「助かるッ!」
突然屋根の上に飛んできた私にぎょっとした様子の護衛たち。
飛来したのが人間だったことと、そして続く私の言葉を受けて彼らは直ぐに目の前のオークに意識を戻した。
深く呼吸を落として、魔力を高める。
よし。行けるね。一体ずつ潰していこう!
タンっと飛び上がると、戦士の死角から襲いかかろうとしていたオークに肉薄。
まっすぐに拳を突き出し、その肉体を貫いた。
続けて、くるりと反転しながら左足を叩きつけるようにして、二体目を撃破。
回し蹴りを終えて正面に見えた3体目のオークとの距離は、2メートルほど。
ん。これなら。
「ふっ!」
右足の一歩で踏み込み、そのままの勢いで左足を振り抜く。
続けざまに、少し先に居た4,5体目を葬っている最中、敵の数が減って身動きが取れるようになった護衛の人たちが2体を撃破するのが見えた。
最後の一体。ささっと倒そうと、目を向けた瞬間だった。
仲間があっという間に殺られたのを目の当たりし恐れを抱いたか、生き残っていたオークはその場で反転。
私達には目もくれず、全力で走り出してしまう。
しかし、ほんの数メートル走ったところで、突如として強烈な火柱が襲いかかった。
闇雲に走っていたオークは為すすべもなく、炎に身を包まれる。
振り返ると、すこし離れたところで、どこか得意げなソレイユが笑っていた。
「ナイス魔法!」
「アデルこそ、流石の蹂躙でしたわね。
わかってはいましたけど、やはり規格外ですわ」
呆れを含んだような賞賛には、微笑みを返しておく。
まあ、伊達にえげつない訓練を乗り越えてきたわけではないからね。
明るく笑い合って、馬車の方へ視線を向ける。
さて、向こうも状況確認が終わったところかな?
道中で襲撃を受ける馬車に遭遇するのは正真正銘のドテンプレ(真顔




