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世間は狭い

学長に呼び出されたアデルたち。





「……はぁ。ごねたってしょうがないし。行くよ」


 コンコンと扉をノックする。


「アデルとソレイユです。参りました」


「入りなさい」


 許可が出たので、失礼しますと断って入室。

 学長室は、意外に質素なものだった。両面の本棚にはびっちりと本が敷き詰められているが、そのくらい。

 奥の机には、一人の女性が座っている。


 肩まで伸ばした緑の髪から突き出た長い耳が印象的な、美人さん。

 なんだろう。学長ってからにはもっとお年を召した感じを予想してたけど。


「アデルです」


「ソレイユですわ」


「二人共よく来てくれた。本学校は、そして私個人は君たちを歓迎するよ。

 私はフォリア。察しの通り、ここの学長をしている」


 威厳たっぷりにそう発した学長は、ゆっくりと席から立ち上がり、こちらに歩み寄ってくる。

 そして、私の目の前までやってくると、こちらをじっと見つめてきた。


「君がアデル、だね。

 …………バカダリウスと鬼のカティアちゃんは元気にしてる?」


「……はい??」


 後半から急に雰囲気を豹変させたフォリアさんの様子に、思わず面食らう。

 ちらりと横を伺うと、ソレイユも似たような表情をしていた。


 ってかちょっと待った。今、両親の名前出した?


「あら? 二人から何も聞いてない感じ? じゃあ、改めて自己紹介するわね。

 ……私はフォリア。現役時代、貴女の両親とはパーティを組んでいたわ。魔導師としてね」


「……! 両親から、当時いっしょに冒険をしていた魔導師の話は伺っておりました。

 母曰く、ウチの大魔女はその気になれば都市一つ消し飛ばせる……とか」


「はぁっ!? なに、あの子、そんなこと言ってたの!?

 実際に一人で街潰したのは自分でしょうに、何ほざいてんだか」


 言い捨てて、憤慨してみせる学長。

 けれど、私はそれどころじゃなかった。


「ま、街を?」


「ん、ああ。心配しないで。不正を働きまくって本当にどうしようもなかったクズ貴族の屋敷に単身乗り込んで、最高クラスの護衛ごと全部叩き潰したってだけだから。

 私もカティアも美人じゃない? それを聞きつけたのか私達を拐かそうとしたのよね。自業自得よ」


「……それ、いくら相手に問題があったとしても、貴族相手に手出したら大問題なんじゃ」


「ところがどっこい。うちのパーティ最後の一人はなんと第一皇子。カティアの襲撃により悪事の証拠がでるわでるわでたちまちお家取り潰しよ」


「フォリアさん」


「ん、なに?」


「わたし今、6歳の時お母さんに目の前で鉄の塊を拳でぶち抜く姿見せつけられて、『これくらいはできるようになってね』って言われたとき並に現状を理解したくないです」


「私の方こそ、貴女のお母さんが娘に一体どんな教育をしていたのか丸3日ほど問い詰めたくなったわよ。

 ……まあ、そのくらいでなければ、試験であんな点数叩き出したりなんかしないわよね」


「あー……そういえば。試験、入学試験とは思えないくらいに高度だったように思うんですけど」


「貴女、両親から本当になにも聞いてないのね。バカ王の意向で、ここの試験は5割が実質満点ラインよ。4割もできれば文句なしの特待生ね」


「バ、バカって……どうしてまた、そんな試験に」


「いーのよ。さっき言った皇子が現国王だから。

 そして試験に関しては、こうしておけば仮に将来とんでもない神童が現れたときにも評価できるであろうっていう彼の言葉よ。バッカじゃないのと思ったわね。昨日までは」


「はあ」


 私がおもわず生返事をすると、ソフィアさんはさっきからあまり言葉を発していないソレイユに向かって顔を向ける。


「ソレイユちゃん。貴女の点数はさっき言った500を超えて、6割弱。正直、この学校始まって以来の鬼才と言って過言ではないわ」


「は、はぁ。光栄ですわ。 ……しかし学長、このアデルは」


「あー、この子は考えちゃだめよ。英雄同士のサラブレッドに地獄級の訓練を課したらどうなるのかっていうもはや規格外とかいう次元を超越した存在だから。

 人の枠に収まる器じゃないわ。一応点数を言うなら、9割以上ってところね」


 あっさりと点数を暴露しながら、身も蓋もない言い方をするフォリアさん。

 良いのか。学長がそんなので。


「って、言い方があんまりじゃないですかっ!」


「やかましい。あんたはもっと自分の異常性を自覚しなさい」


「してますしっ! 私が流石に異質な存在であることくらいは判ってますし!」


「足りんわ! ……まあ、良いわ。貴女たち、入学までの期間そこそこ暇よね? ちょっと頼みたいことがあるんだけど」


 そう一方的に言うと、自身の机に戻り、なにやらごそごそと書類を漁りだす。

 少し経って、一冊の紙束を投げ渡してきた。


「わっ、投げないでくださいよ」


「あはは。それ、ちょっと溜まってる仕事のひとつなんだけど、もしよかったら頼まれてくれないかな。

 ちょっと学校関連でなかなか着手する余裕がなくてねぇ」


「仕事って、良いんですか?」


「大丈夫。ただの調査兼、討伐依頼だから。問題なくこなせるはずよ。入学前に初依頼ってことで、おねがい!」


 さっとだけ目を通す。なるほど。南西部の村付近におけるオークの出没。

 まだ被害は出ていないが、人里が襲われる前に調査と討伐をお願いしたい……って感じか。

 

 うん、まぁ確かにオークくらいならどうとでもなるだろうし、それに、わざわざ厳しくなる見込みがあるような依頼を渡しはしないよね。

 私達はあくまで素人なんだから。


 隣を確認すると、目があったソレイユが小さくうなずいた。 決まりだね。


「わかりました。お受けします」


「本当? 助かるわ~! 学校が始まるまでに帰ってきてくれれば良いから。

 最悪、貴女達の成績なら間に合わずとも構わないわ。既に充分だからね」


 入学前から、成績充分だから始業に間に合わなくても良いって、それなんのために学校行くんだ? と思わなくもない。

 ま、まあ、友達作るために行くのもあるし、気にしても仕方ないね。

 そもそもまだ冒険者資格には年齢が足りないし。


「それじゃあ、早速準備するのでここで失礼します」


「期待してるわ~」


 ひらひらと手を振って、見送られる。

 あれ? 結局もうひとりの子、来てない気がするんだけど。 


 ま、いっか。

 頭を下げて、退室。


 さて、初依頼。 オーク程度なら本当大した問題にはならないと思うけど、しっかり準備はしていこう。

 油断大敵。お母さんにも言われていたからね。


 ありえないと思うけど、オークキングがでてきても問題ないくらいの覚悟で。

 さ、初依頼、無難にこなすぞー!





??「あっ!仮登録証渡すの忘れてたわ!」



 オーク討伐、簡単な依頼だな! と思って油断する主人公。

 しかしそこにいたのは、ごくごくまれに出現すると言われるオークキングだった!


 という超あるあるのテンプレになる道を自ら潰していく作者こまるん。

 アデルちゃんはできる子なのでそこまで見通すのです。


 ほら、予告通り平和に会談終わったでしょ!!



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