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強☆人☆類 〜握力がインフレした俺はゴリラの異能使い〜  作者: 徳島静
第4章『ゴリラゴリラディエリ』
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カイポ

「しかしこんなにお化けが苦手だったのか。蛮族の長を片手で引きちぎりそうな委員長なのに……」


苦手なんて言葉――とうに通り越して情緒不安定とかパニック障害とかに近いものを目の当たりにした人間としては、こんなにも人が狂う理由が気になって仕方ない。

俺間違ったこと言ってる?


「蛮族の長を片手で引きちぎれる私でもお化けはダメなんですっ!!」


片手で引きちぎれるのかよ……どうやらスパルタと委員長に後退の二文字は無いようだ。


「委員長は昔から苦手なもの無さそうだと思ってたけどな。お化けはなんで駄目なんだ?物理攻撃が効かないからか?」

「それも理由のひとつですけど」

「……ひとつに入っちゃうの?」

「ええ、まあ意地を張らずに正直に言いますと本当に怖いもの全般が苦手なのもありますが、ただ理由は他にあると思います」

「それって?」


春の成増はまだまだ肌寒い。

少し暗くなったテーマパークの広場は、彼女の横顔に暗い影をつくりだす。

それから委員長はぼそりと語り始める。


「私、分からないものが怖いんです。だからお化けとか分からなくて、答えが出ないものが怖いんです。それはきっと……」

「昔のことが関係してるのか?」

「ええ」


空元気にしか見えない笑顔。

昔々、俺たちが小学校低学年だった頃によく見た幼い頃の委員長の笑顔だ。


始まりは成増ならどこにでもありそうな悩みだった。


生まれつきゴリラをはるかに超える握力の子供。

そんな子供に失望し、愛情を抱けずに、無関心を貫いた両親。


人間を超える握力を手にする者は、時に他とは違うという理由で迫害を受けることもある。


その頃の委員長はいつもいい子になろうと必死だったことを覚えている。


いい子になって勉強やスポーツで一番になれば、きっと両親は見てくれると信じてた。


だけど、


残念ながら今に至るまでその願いは叶わないままだ。


「ずっと……居場所を探している気がします。安心して座れる椅子みたいにここだってはっきり言える場所を……でも見つからない。分からない。自分はなんなんだろう?ここにいていいんだろうか?何もかも答えが出なくて不安になる。だから私は分からないことが……何より怖いんです」


こんな時どうしたらいいのだろう?


俺は最低のクズなのですぐに思いついた選択肢は「FFXのラストのごとくそっと抱きしめる」と「FFXのラストのごとくそっと抱きしめる」の不自由な二択でしかなかった。


「でも宇治春くんもこの気持ちはわかるんじゃないですか?」

「どういうことだ?」


ハグオアハグの選択肢に苦しむ俺な委員長は言うのだ。


「宇治春くんも最強のチームが解散になった時に、とても不安で自分が分からなくなりませんでしたか?仲間が次々といなくなった時私みたいな不安を感じたはずです」


痛い思い出をついてくるものだ。


そうかつて成増のアーチャーを破り、晴れて成増最強に君臨した俺をチームのやつはよく思わなかった。

全員が全員そうだったわけではないが、最強の座は我にあれと俺を狙うやつすら現れた。


結果チームは当然のごとく崩壊。


この宇治春、センチになったわけではないと言い訳したが信じていた居場所が壊れていくのを見るのは中々に辛かった。ましてや理由が自分にあるのだから。


「たしかに……アグラヴェイン卿やマーリンが庇ってくれなければ俺は完全に自分を見失っていた。あの時の俺は確かに居場所が分からなくなって不安だったよ」


庇ってくれる仲間が少しでもいたから俺は決断できて前に進めた。


即ち成増最強の称号など投げ捨てた。


俺は最強の座を板橋区観光課最強の存在である「イータン&バッシー姉妹」に譲った。どうでもいいが姉妹は今日に至るまで常勝無敗の化け物だ。


そしてその時以来、俺は特定のやつとつるむことはなかった。


なかったのだが。


「私たちは似ています。私は今でも不安です。だから……私と、私と……」


委員長は頬を染めて何かを言おうとするが言葉にならない。

しばらくモゴモゴと口を動かし、やがて決意を込めて宣言した。


「私とチームを組みませんか?宇治春くんと私なら成増など三日で手中に収まります。私たちは裏切られたり、見放される悲しみを、怖さを知っています。だから私たちは――お互いを絶対に見捨てないはずです!!」


かなり勇気を出してくれたのだろう。

その必死な言葉と表情、何より胸の内を明かしてくれたことに俺は感動する。


だが俺の考えは、少し違う。


「委員長、確かに分からないことは怖い。だが俺もお前も居場所についての解答はとっくに出ているんだぜ?」

「ぇっ!?」


俺は自分の踏みしめる地面を指差して語る。


「ここだ。俺たちは板橋区成増民。広大な成増の大地は等しく俺たちを受け入れて、拒絶なんてしてこない。難しく考えることはない。俺たちの居場所はいつだって成増だ。だから無理にチームなんて形式に縛られることはない。俺とお前は同じ大地(なります)に生きるフレンズさ」


かつてチームが解散した時に悟ったことだ。


「そうなんですね……なんだ……この板橋区成増が私の居場所だったんですね。宇治春くんらしい答えです。宇治春くんらしい――カス以下の以下が思いつく馬鹿な答えです」


委員長は笑顔で自覚のない罵倒を浴びせる。

真顔になってしまった俺に彼女は嬉しそうに近寄って、


「でもね……私の居場所はですね」


よく言えばいたずらっぽい、悪く言えばメスガキの顔になったかと思うと俺の左腕を掴んでグッと近寄った。


そして俺の左頬に柔らかい感触が生まれる。

動けない。目線だけをそちらにやるともう完全に闇(メスガキ)に堕ちた委員長の恋に恋い焦がれ恋に泣く表情が間近にあった。


「絶対にあなたの隣なんですよ」


これはもしやキ、キキで始まるキなんとかとか言うやつで……。


「ちゅ、チューーーウううううううチャああああああああ!!!!ぴかぴぃいいいいいい!!!!」


俺はピカチュウになって死んだ。

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