上院議員
――魔界。
(委員長の考える舞台設定なんだが初っ端からモノローグで嘘つき始めやがった)
当然ここは魔界ではなく板橋区成増である。
何の変哲も無い成増のドトールに俺と委員長は向かい合って座っている。
「見つけたぜ〜ローズマリー。俺たちはガラムとマサラ。組織の人間さ」
平穏は二秒で崩壊した。
全身赤ずくめの男二人が自己紹介しつつ、ニヤニヤしながら近寄ってくる。お前らコナン好きなの?
「で?一応きくけど、どんな設定の人なのアレ?」
「私に聞かないでください!!どうなっているんですかこの状況!?」
委員長も予想外の状況……ということは。
やはりそうか!
ドトールの隅から視線を感じそちらを見やると予想が当たった。
大家さんである。
このご時世にやたらタバコ臭い店内の隅から幼女姿の大家さんが邪悪な笑みを浮かべながらぼそりと呟く。
「D4C(いともたやすく行われるえげつない大虐殺)」
この人の人格が終わっている理由の一つが人の足を引っ張るのに金も労力も惜しまないところなんだろうなぁ〜としみじみ思う。
「ラブかれぴっぴ」
余計な一言付け加えんな。
つーかもう何でもありなのかこの変な企画。
思った瞬間赤ずくめの組織の男二人は銃を取り出す。
「悪いが組織の裏切り者は死んでもらうぜ!!」
大家さんの刺客は実弾を放つ。
この程度の銃火器では強人類に傷一つつけられないだろう。
と考え始めてしまっているのは、俺の感覚が異常者どもの奇行に慣れてしまったのか、はたまた成増の
治安が元々悪いからこれくらい日常茶飯事なのかもう自分でも訳がわからない。
まあでも万が一怪我したら困るので俺は委員長を押し倒すような形で銃弾から守る。
だがそれが逆に大家さんの逆鱗に触れた!
「そこの黒髪女を冬のナマズみたいに大人しくさせろぉおおお!!たんてきにいって殺せ!!」
「冬のナマズみたい大人しくなるのはてめぇだクソババア!!」
あいやんマンにより再度力ずくで連行された大家さん。
赤ずくめの組織の男二人は「なんかすみません僕たちも仕事なんで」とか言いながら謝礼金の二万円を置いて立ち去る。
何がしたかったんだ。
ほんとに成増は漫画のモブキャラみたいな奴らであふれてる街だ。
「あの宇治春くん」
大家さんのいともたやすく行われたえげつない行為のせいか少し顔を赤らめた委員長は、どこかためらいがちに話し始める。
「せっかく二万円もあるのですから……奮発してどこかへ遊びに行きませんか?」
「どこかって?」
「それは……これはデート企画なのですから。その……カップルが向かうような場所ですよ。オシャレなショップとか映画館とか水族館とか遊園地とか」
「う〜ん。候補が多すぎる上にあやふやだから童貞なの俺にはよくわかんねーや。委員長は行きたいとこある?」
「う、宇治春くんが決めてください!私は宇治春くんが決めてくれた場所なら人間離れした格闘家集う地下闘技場でも、グリーンディのカビで死者が溢れているローマでもどこにでもついていきますから!!」
「……」
この子も大概病んでるよな〜。
家庭環境はあまり良くなかったらしいし。
しかしデートスポットか。
俺には難易度が高すぎる課題だ。
なにしろ場所と考えてまっさきに思いついたのが、高田馬場ミカドと自衛隊朝霞駐屯地だ。
どちらもデートスポットには一ミリも適していない。
ここら辺のデートスポットというと……。
「じゃあ近いし「サイレント成増ニュートランスレーション零番館ラクーンタワー」でも行くか」
「……へ?」
「名前がクド過ぎて分かりづらいけどお化け屋敷だよ」
「…………(よよよよよよよりにもよってそんなところだなんて〜。宇治春くんは何でこうも私の弱点を的確に突いてくるのですか。何故私の一番苦手なお化けを引き合いに出してくるんですか〜)」
「何ぶつぶつ言っているんだ委員長。行かないのか?」
「エエ、リョウカイ。…………シャサツシマス」
「射殺すんなよ!?」
委員長ごちょっとラリってるけどまあたまにあることだから放っておこう。
いざなんかやたら名前がクドいお化け屋敷へ!




