犯罪係数700オーバー。執行対象です
「み、見ないで!見ないでー!」
こっちだって好きでおばさんのコスプレ見てるわけじゃねーんだけどなぁ……
失礼に値するであろう心の声を必死で抑えて俺は大家さんに優しく語りかける。
「俺の国語力が試されているのかもしれませんが、どうして大家さんは幼女になって俺を監禁しつつ同級生の殺害未遂にまで踏み切ったのですか?」
改めて文字に起こしてみると嫌でも意味がわからない。この文面だけで犯罪係数は七百を軽く超すだろう。
「だって好きなんだもん。愛よ愛!!」
便利な言葉だな……愛って。
どんなやべーことも美しく見えるように……見えねーよボゲ。
俺と真冬の納得はおろか理解のりの字すら感じられない雰囲気に大家さんは耐えられなかったのか、弁明を続ける。
「仕方のないことなの!!私は握力が高まると強人類としての最盛期――私の場合は小学校六年生にまで体が若返るの。そうするともう自分が抑えられない。欲望のまま、幼女のまま任務遂行だけのために行動してしまう。悲しきラブマシーンなの……」
なんだそれ、やべーやつじゃねーか。
「だから宇治原くん……結婚して。私が間違いを犯し、人を殺めてしまう前に。心まで幼女に支配される前に……そして何より、アラサーの壁を超える前にっ!!」
やはり人間は弱いな……
思わず神とも弁護士とも取れる言葉が浮かんでくる辺り、俺もそろそろ限界なのかもしれない。
だからこの一方的に求愛される関係を断ち切ろうと勇気を出す。
「大家さん……あの」
「宇治春くん……いえぴっぴくん。いいよ」
唇をすぼめる。
はっきり言って醜い。
黙っていれば美人なのにキスをせがむその表情は、必死すぎて何というか豚肉の切れ端という言葉がしっくりくる。
そして俺まだ何も言ってないのになんで準備万端です!な感じだ。つーか言い直すな。
それにどんどん迫って――
近い近い近い!!!!
「ごめんねぴっぴくん。淫らな大家さんはブレーキがきかない!!」
「大家さん俺はあなたのぴっぴくんではありませんし、ぴっぴくんになるつもりもありません!!」
「どうして!私は今年の東部時間で8月29日午前2時14分までに式を挙げないといけないの!!」
「なんで審判の日に式挙げないといけないんですか!!」
「それはその日付のその時間に私が地球に誕生したというわけでそこでゴールインしないと二十ううぅううううゔ歳になってしまうからよおおおおおお!!ぅっ!!逃げてぴっぴくんヤツが来る!!」
なんか忙しい人だな……
針抜いた時のキルアの兄貴かよと思うくらいエグい変形の仕方をして大家さんの体は幼女のそれになる。
「服……ボロボロにされて。ふぇえ〜ん秋子よごされちゃったよぉ〜。しかもにんちしてくれないよぉ〜」
これを言っているのが実年齢二十ううぅううううゔ歳かと思うと百年の恋も冷める思いだ。元より恋しないが。
「こんなに辛いなら、苦しいのなら、愛など……愛など!!愛などいるっ!!」
結局欲しいのかよ。
秋子(大家さん)は縦笛を振り下ろし襲い来る。
真ゴリラシステムでどうにかしようとした俺であったが。
「そこまでにしてもらおうかしら?」
真冬が立ちふさがる。
武道の受け身のごとくリコーダーを手の腹で受け、明子の動きを止める。
ちょっと無理してると分かるのは少し涙目なのとプルプルしてる様から瞭然だ。
「なによおばさん!秋子の邪魔しないで!!」
「おばさんはあなたでしょう!」
「てめえは秋子を怒らさせた……」
秋子の沸点はかなり低い。
更年期が高いのだろうか。
対して真冬は冷静なままで話す。
「押し付けがましいよ!押さえつけるのは良くないってわたしは全身の筋肉と引き換えに学んだわ。力を持つ強人類がその力を振るうのは自分ではなく誰かのためなの!」
「こざかしいわ!!小娘!!なぜ秋子の邪魔をする!!ぴっぴくんを渡すのだ!!」
年齢設定しっかりしてくれ秋子さん。
幼女なんだからおばさんなんだかよくわかなくなってくるんだよ。
あと路上付近で握力を出すな。
強い握力の影響で無駄に風圧と光が生まれて最終決戦みたいになってるから。
「……強いな小娘。だがぴっぴくんを渡せば成増の三分の一を与えるぞ?秋子の実家は金持ちだからな」
「物には釣られないわ。わたしの実家も金持ちだし」
「くっ……ならば力ずくで奪うまで!!死ねぃ!!」
「わたしは死ねない!なぜならわたしもこの人に愛を感じているから!!あなたのような自分勝手なおばさんには渡さない!!わたしの愛はあなたに負けない!!」
……真冬さんなんか今さらっと凄いこと言わなかった?




