真ゴリラシステム
スタイリッシュ・ゴリラ・グリップ・ストレングス・システム――通称真ゴリラシステム。
戦闘状況下で発生するあらゆるデータを即時演算し、得られた膨大な予測値を背後に発生した青いマウンテンゴリラのヴィジョンへ直接フィードバックする俺の異能である。
これにより人間の反応速度では対処しきれない攻撃や、死角からの一撃を青いマウンテンゴリラが自動で対処してくれる。
余計なことを考えず、自由に動くことができるのがメリットだ。ゴリラはある程度手動で動かすことも出来、その場合は半自動状態となるが、宿主の危機を察すると即座に迎撃状態となり完全なる防衛を実現する。
「ウホホホホホホホホホ!!」
「ワタシのボウガンをスベテウケキッタだと!?」
「ウホっ!!」
「おおおお゛!!」
成増のアーチャーが放つ握力の弾丸は全て背後の青いゴリラによる真ゴリラシステムによって迎撃され、俺自身は成増のアーチャー本体へと攻撃を向ける。
よろけた成増のアーチャーは困惑する。
「バカな!?ヒルマノカードショップではコノヨウナチカラはミラレナカッタ!ニンゲン!!イッタイナニをシタ!!」
「何をだって?それはこっちの台詞だ!お前は自分が何をしたかわかってるのか。どれだけの横暴を重ねたか、どれだけのマッチョを泣かせたか――そこに罪を感じたことはないのか!?」
「ツミ?罪ダト!」
成増のアーチャーは高笑いする。
「チカラあるモノがチカラナキモノをシタガエテナニガワルイ!握力至上主義コソが成増のホウよ!ソシテワタシコソが!成増最強の強人類!!」
辺りがにわかに震える。
地震では無い。成増のアーチャーの握力が高まってそうさせているのだろう。
恐らくはここで決着がつく!
「オオオオオ!!」
成増のアーチャーはボウガンを前方に構え突進する。
真正面からの小細工のない攻撃。
握力の強さと筋肉だけを頼りに生き、己の握力に絶対の自信を持つ強人類でなければやろうともしない芸当だ。
ならば
俺のとる行動はただ一つ。
こちらもまた全ての握力を持って迎え撃つ。
真ゴリラシステムを解除し、拳に全ての握力を溜める。
筋肉のボウガンとゴリラの握力がぶつかり合い辺りはマグニチュード8.5だ!
そして――
「バ、バカな!」
ボウガンは真っ二つに折れ、成増のアーチャーは崩れ去る。
「チ、力が!力がヌケオチテイク!コレは!?ドウイウコトダ!」
成増のアーチャーの上腕二頭筋を始めとした筋肉が爆発し、見るからに体が細くなっていく。
「先ほどの一撃でお前の身体中の筋組織を破壊した。今のお前に、残されるのは未来永劫六歳女児程度の筋肉だろう」
「ワ、ワタシの筋肉が!!コノ美しく強大な筋力が失われていく!?」
筋肉の劣化は著しい。
口調がカタコトではなかなっているのがその証拠だ。
「お、おのれ……この恨み……絶対に、忘れ、な」
成増のアーチャーはやがて倒れ、そこに残ったのはもう質量が三分の一程度になってしまった敗者の姿だった。
敗北の間際、地面にひらひらと落ちたのはよしたかのブルーアイズホワイトドラゴンだ。
「なんで負けたか。明日までに考えておいてください」
俺は人生で一度は言ってみたかったキメ台詞をキメると、俺はよしたかのブルーアイズホワイトドラゴンを回収してアグラヴェイン卿に肩を貸すと、成増宮殿を後にする。
「良いのか……あの程度の仕打ちで。いずれやつは復讐にかられ、ガラハッド卿の命を奪いに来るであろうぞ?」
アグラヴェイン卿の忠告に俺は首を振るだけだ。
「だが筋肉は失われた。やつのプライドはあの筋肉で成り立っていたみたいだからな。それが失われた今もうやつに悪事を働くような気概は残ってないだろ。それに六歳女児程度の握力じゃ……女児向けの音ゲーひとつこなすのにも困難だ」
「それもそうか……だが別の覚悟はしているのであろうな?」
「覚悟?」
俺は問い返す。
「成増のアーチャーを討ったということは名実ともにガラハッド卿が成増最強ということ。それはやがて成増全土に、隣接する和光市にまで響き渡る。そうなれば新たなる戦いの日々が訪れるのは……マガジンの鉄則」
悪いな。
俺はジャンプ派なんだ。
「そんなことは後で考えればいい。それよりも見ろ。夜明けだ」
明らかに時間の経過がおかしいような気がしなくもなかったが、外に出ると朝日が登ろうとしていた。
あまりに強大な握力と握力の衝突で時間が吹き飛ばされたのかもしれない。
「美しい景色であるな。恐らくは世界で一番……」
「ああ、俺たちが守った街だ」
「ふっ……貴公とこのような眺めをつくりだせるとは、悪くない」
ああ、俺も同じ気分だ。清々しい。
お前の俺に対する二人称がなんかブレまくってるのも気にならない。こいつの厨二設定はいつだってガバガバだ。
「さて、帰りますか。俺たちの街へ」
そうして俺たちは夜明けの中、成増の街へと消えていった。




