ふくろう
ホー、ホー。
ふくろうが鳴いている。
鬱蒼とした夜の森は闇が深く、一本だけある歩道の先に見える柔らかな印象を与えるロココ建築の建物こそが成増宮殿である。
ホー、ホー、ほっちゃん、ホおおおおんテッドマンショーんんんー!!
ふくろうが発狂して飛び去る。
木の葉がガサガサと揺れる中、俺たち二人はゴゴゴ、と擬音が立ちそうな雰囲気で歩いていく。
「ククク……臨戦態勢の我らの握力にふくろうは耐えられなかったようであるな」
「ああ、これだけの握力を放って歩いていれば当然だな。ヤツも気がついているようだぜ」
宮殿からは呼応するように強大な握力が感じられる。
成増のアーチャーの放つ邪悪な握力だ。
「この先にヤツが……」
「覚悟は出来ているであろうな?」
「残当」
ついに宮殿の入り口に到着だ。
赤く刺々しい装飾が施された扉を開け放つ。
「きゃー!助けてかれぴっぴぃ〜!!」
幼女の悲鳴である。
宮殿の入り口は謁見室に直結しており、そこでは縄で縛られた幼女が弄ばれているという地獄の光景が広がっていた。
「コンナヨフケにアクリョクをカクシモシナイデアラワレルブレイモノはダレカトオモエバ……キサマ、ヒルマのゴリラか」
「ひ〜ん!」
成増のアーチャーは玉座に腰掛けながら、手にしたボウガンで無抵抗の幼女をただただ意味もなくつつき続ける。
蛮行。
人間にあるまじき非道な行為に、俺は胃のあたりから怒りがこみ上げる。
「てめえ!よしたかのブルーアイズホワイトドラゴンをパクっただけじゃなく、幼女を!こんないたいけな幼女にまで蛮行を働くなんて……許せねえ。てめえには人の心がねえのか!」
「ココロ、ダト?」
成増のアーチャーは玉座から立ち上がると、高笑いしながら幼女をコロコロと転がす。
「危ない!」
俺は幼女をキャッチすると、縄をほどきホコリを払ってやる。
幼女は黄色い帽子に水色のスモッグで赤色の可愛らしい肩掛けカバンを下げたどこに出しても恥ずかしくない典型的な幼女だった。
「大丈夫か?幼女?」
俺が優しく声をかけると、
「か、か、かっこかっこよすご。かれぴ……かれぴっぴ?!」
動揺しているのだろう。
意味不明な単語しか発せないでいる。
「ここは危険だ。すぐに逃げるんだ。ここを出てまっすぐ行ったらバス停がある。成増駅行きに乗ってポリスメンに助けを呼ぶんだぞ!」
そうして俺は幼女に二百五十円を渡す。
成増駅までの運賃だ。
幼女は目を丸くする。俺の完璧なアフターケアに驚いているのだろうか。
「わっちゃねーむ?」
「織田宇治春。強人類さ」
幼女のカタコトの英語に俺はかっこよく答える。
すると幼女は深々とお辞儀をすると最後に言った。
「このご恩忘れはしません。たとえこの身が滅びようとも。地獄に魂を囚われようとも忘れはしません。あなた様の名前も……」
なんかめちゃくちゃ重い台詞を残して消えた。
こええ、数年後に背後から刺されそうな予感。
「ココロなど、トルニタラナイモノよ!コノヨハアクリョク!チカラがセカイをシハイスル!トミーフェブラリーもソウウタッテイタ!!」
「ガラハッド卿!油断するでないぞ!」
しまった成増のアーチャーをすっかりそっちのけにしていた。
「ワガアクリョクのダンガン!クラウがヨイ!アンシンシロ!シニイタルホドデハナイ」
成増のアーチャーはボウガンを構える。
「来るぞ!」
戦いが始まる!




