20話 学校へ行こう
1月30日
小学校からの呼び出しがあった。
ヤツには電話するように一応言っておく。
その日は平常勤務なので、仕事終わりに寄せて貰う様に連絡帳に書いておいた。
1人で学校へ向かう。
先生を探して職員室へ行くのだが、あまり良い気分では無い。いくつになっても、職員室は苦手だ。決して、悪い事等していないのに、この感覚には馴染めない。
先生を見つけ、別室での話となった。
「わざわざすいません」
「いえいえ、こちらこそ」
子供の様子が聞きたかったのだ。
離婚告知から、何かしでかしていないか心配になっていた。もしかしたら、とんでもない事をしでかしてはいないだろうか?不安が過る。
「息子の様子はどうですか?離婚の告知をしたので、少し心配していたんです」
「いつもと変わらずです。学校で対応出来る事は、なるべくこちらでやっております」
はぁ、この言い方だと、何かしでかしたなぁ。
でも、とりあえず報告する程ではないようだ。
「で、今日は何のご用件でしょうか?」
「えーと、イチ君は転校するのが決定しております?」
「はい。今年の3月末には」
「そうですか。後で、管理職から説明があります。今会議で外せないので、暫くお待ちを」
「そうですか」
「それで、あれからどうでしょうか?」
学校の先生には、以前息子が虐待をヤツから受けているのを説明していた。それをまた今日も少し話をする。
「市役所の子供支援室はご利用されましたか?」
「はい。でも、離婚調停になった事を告げると、門前払いでしたね。何を言っても受け付けてくれませんでした。転校とか聞いても、それは離婚調停か弁護士へと言われれば、もう言う事は無いです」
「まぁ、それは仕方無いですね」
市役所も役所仕事だ。
転校や引っ越しを聞いても、弁護士へ聞いてくれは無いと思ったが、まぁ、あちらにも言い分はある。
「お母さんは、子供を怒鳴ったりしますか?」
「いや、怒鳴る程では無いです。手も出しません」
「そうですか。ネグレクトをご存知ありますか?」
「ネグレクト?」
「はい。家庭環境が酷い状態で、サイレント虐待とも言います。ゴミやちらかっている状態も虐待ですね」
「そうですか。それは良い事を聞きました」
「私は子供が出来ませんでした。だから、イチ君がとても可哀想で可哀想で」
この先生はとても良い先生だと思った。
子供の事を親身になって聞いてくれるし、成る程なぁと思う。こういう先生が沢山居れば、学校は幸せな所になるのに。
「これを見て下さい!」
「これは?」
「音楽の教科書です!これにドレミが書いてありますよね?この年でこんな事が出来るのは、とても素晴らしい才能の持ち主なんだと思います」
「ほぅ。これは凄いですね!」
教科書をいつくか捲る。
そのどれにもドレミが記入されていた。教えて出来るモノでは無い。イチにはこんな才能があったのか。音楽の練習もさせてないのに、絶対音感が備わっているのだろうか?
そういえば、カナとひらがなも特に教えてはいない。
なのに、磁石のボードで練習していたのを思い出す。ヤツのせいでイチが勉強嫌いになってしまうのは仕方無い事だ。幼い頃から4、5時間も強制的に座らされ、書き取りさせられればそうなるだろう。
だが、イチはそれでも勉強は好きだと言う。
僕は涙が出てきた。死ねば良いのに。もう7200回は思っただろう。
「では、管理職を呼んで来ます」
「はい」
すると、副教頭が現れる。
管理職とは、どうやら副教頭以上の事を言うらしい。
「今日はお忙しい所ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ」
「では、転校の話をさせて頂きます」
学校の転校とは
市役所で転出届を出して、それを学校へ持って来る。
そして、転校先の学校へ連絡するのだ。転出届の有効期間は2週間で、それをメドに転校する日に持って行けば有効となるそうだ。
娘も小学校へ入学となる。
だが、転校の手続きは不要との事だ。何故なら、入学していないからである。入学側の学校へ事前に連絡するだけで良い。
「分かりました」
「副教頭先生。何とかなりませんか?」
「市役所に言っても、同じ事を言われれますね」
「お役に立てず申し訳ないです」
「いえいえ、ここに来たのは無駄ではありません。必ず何処かで役に立ちます。来た事に意味があります」
「そういえば、お母さんから電話がありました」
「私が電話が取れませんでしたので、副教頭が対応したのですが、15時15分頃だったと思います」
「再度電話はありましたか?」
「いえ、それっきりです」
「そうですか。今日はありがとうございます」
「いえ、こちらこそ」
僕はヤツには思う事は無い。
親権を剥奪する事は不正な行為だからだ。フェアにいく。だから、ヤツに教えた。返事もしないがな。
下らない事で、ヤツは全く幼稚園の事を言ってこない。
これは法律に反する。それが分かっていないのだから、手に追えない。
親権は半分は持つ事になる。それを邪魔する行為は許される事では決して無い。いかなる理由でも、それを邪魔する事は、出来ないのだ。
僕の態度が悪いから、幼稚園の行事を教えない。
下らない。グズ以下だ。グズに謝れ。僕はそう思う。
そして、また思うのだ。死ねば良いのにと。




