第101話 似た者同士
「かーっかっか! そんな恋愛色欲まみれの願望が叶うかよ!」
マキナは騎士団タオルが出た宝箱を見てお腹を抱えて大笑いしていた。
そんなマキナに対し、ソーマは心の中で物欲まみれのおまえが言っても説得力が無いぞと突っ込みを入れる。
一方耳まで真っ赤に染めたフィオナは口を真一文字に結んで震えている。よほど悔しいのか恥ずかしいのかなのだろう。
泣き出しても困るぞとソーマはフォローを入れる。
「まあ装備品とかのレアアイテムって滅多に出ないらしいし、まだ開ける機会もあるから次に期待しよう」
ソーマの優しい気遣いに結局フィオナは皆に背を向けてしまった。目を拭っている辺り、泣いてしまったのだろう。
ダンジョンに入ってから、フィオナはソーマとマキナに嫉妬していた。
第一層でかけっこ競争をしたり、ソーマがマキナにピッタリの状態異常付与の宝玉を宝箱から出したり、ダンジョン内で仲良さそうに話す二人の絆を見せつけられたりと、とても悔しい想いをしていた。
そして宝箱を初めて開けるフィオナは、心の底からお揃いのアクセサリーが出ると信じていた。
それがただのタオルという裏切られた形で出たのが悔しかったし、自分のソーマへの想いが宝箱に伝わらなかったのも悔しかった。
そこにソーマからの優しい慰めの言葉をかけられ、フィオナは涙を堪えることが出来なかった。
「けっ、何も泣くこたねぇだろ。結局弱虫ちゃんかよ」
「お前も魔神神殿でレアアイテム出なさ過ぎてわりと本気で拗ねてたぞ?」
「あ? そうだっけか?」
本気で覚えていないのかケロッとしているマキナを見て、こういう性格は羨ましいなと呆れるソーマである。
ちなみに王は宝箱から出たタオルを見て、こういうのも良いなと何やら国政においてどう使えるか真剣に考えているようだ。
「さて、次は第五層だけど魔神神殿だとボス戦があったから、一応休憩がてらみんなの装備とMPを確認してから行きますか」
いつまでもフィオナを待っているわけにもいかないので、ソーマは場の空気を切り替える意味でも次に向けての話を進める。
丸眼鏡が気を利かせてお茶とお菓子を準備し始めたので、ソーマもかまどとテーブル、椅子を作ってお湯を沸かしてやった。
「お! いいな、ちょうど寒いと思ってたんだ! 気が利くぜ丸眼鏡ッち!」
マキナが温かいお茶に喜ぶと、たしかに寒いなとソーマは灯篭の要領で暖かい火の塊をテーブルの上に作り、暖を取れるようにした。
フィオナもいつまでも泣いているのを恥じらい、笑顔で椅子について丸眼鏡にお礼を言っていた。
こうしてしばらく休憩しながら装備やアイテムを確認した五人は、第五層へと転移した。
第五層は第三層のように長大な空間に水面だけのエリアであったが、異なる部分として水面の真ん中に向かって通路があり、エリア中央には丸い闘技場のような陸地があった。
「あそこまで進んだらボス戦って感じかな?」
「うむ、今のところは水中に一匹も魔物はおらんから、そう考えるのが妥当かの」
「よっしゃ、とりあえず行ってみようぜ!」
ここまでほとんど丸眼鏡とソーマで攻略しているせいか、マキナは早く戦いたいぜとワクワクしている。
「よし、じゃあボス戦と見て、まずは五人での初戦といこうか。作戦通り動いてあとで修正箇所があれば反省しよう」
ソーマの言葉に四人も気を引き締め、中央の陸地へと足を踏み入れた。
闘技場のような所まで来るとそこまでの通路は崩れ落ち、その後は不気味なほど静まり返った空間に包まれた。
ソーマと丸眼鏡は水中、空中共に探知を張り巡らせて最大限の警戒をする。
すると突如、水中の中で渦が巻き起こった後に大きな魔物が現れた。
丸眼鏡はムフフの眼を用いてその全貌を把握すると即座に全員に伝える。
「前方水深50メートルほどにサメ型の大きな魔物が出現じゃ。闘技場の足場は塔のように底から伸びておるから壊されることはないと思うが警戒は怠らぬよう」
その言葉を合図に全員が身体強化を使い、王は覇王の豪闘気を纏って武器を構えた。
フィオナは次々に歌を紡ぎ、バフをかけていく。ちょうど最後の英雄神の歌を歌い終わった直後、サメの魔物は数十メートル先で水中から闘技場目掛けて飛んできた。
さすがに大海竜ほどの大きさではないが、それでも10メートルはあろう巨大な体躯が闘技場に叩きつけられたかと思うとそのまま滑っていく。
初撃ということもあって五人はそれぞれ大きく跳躍して敵の攻撃を躱すと、王は斬撃波、ソーマとマキナは斬空剣を放って様子を見た。
「おい! 剣撃は通りそうだけど、こいつもでか過ぎてどんだけ効いてんのかわっかんねぇぜ!」
「うーん、これはまた丸眼鏡先生の出番かな。丸眼鏡、次も同じ攻撃なら闘技場の表面に小さな鉄の針を沢山作って身体中引き裂いてくれ。上手く闘技場の上で止まってくれれば、今度は上から俺と丸眼鏡で穿通礫錐で地面に串刺しにするから、最後はマキナの灼熱天柱で!」
「了解じゃ」
方針を決めた後、着地した五人は二撃目に備える。
再度飛び出すサメの魔物、五人は気持ち早めに跳躍すると丸眼鏡は闘技場の表面を鉄で覆うとそこから無数の針を生やした特大の剣山を作り出す。
そこに向かって巨大ザメが着地をすると、自らの速度と重さによって身体が引き裂かれて悲痛の咆哮を上げた。
さらに丸眼鏡は刺さった部分の針を上に伸ばしていく。
見事闘技場の中心で動きを止めた巨大ザメに対し、ソーマと丸眼鏡はそれぞれ穿通礫錐を放った。巨大ザメの背に金属製のドリルが深々と突き刺さりながら血飛沫の竜巻を二つ巻き上げると、どちらか片方が心臓を穿ったのか巨大ザメは金切り声のような叫びを上げた後、青い粒子となって消えていった。
五人が再度着地する時には燦々たる血の跡も嘘のように消えている。
灼熱天柱をぶちかます予定だったマキナは非常に面白くなさそうな顔で文句をこぼした。
「はっ、もうソーマと丸眼鏡ッちだけでダンジョンクリアしちまうんじゃねぇのかよ」
わりと本気のトーンで愚痴をこぼすマキナに、フィオナがニコニコとした笑顔で答えた。
「あら、無事ボスを倒せたのにそこまで拗ねることもないんじゃありませんの? 子供みたいですわね」
「あぁあん? さっきまでメソメソ泣いてたてめぇに言われたかねぇよ、クソ弱虫が」
「んのぉおおおお!! わたくしはモブキャラゆえ!! どうかケンカはやめてくだされぇぇええ!!」
女子三人の様子にこめかみに指を当てながら俯くソーマに、王は小さくそなたも苦労しておるのだなと同情の意を寄せていた。
ソーマも王にこっそりと、マキナとフィオナってちょっと似てるよねと愚痴をこぼし、王もそれに同意してソーマを慰める。
ソーマは、次もしパーティに入れるなら男にしようと静かに決意を固めたのであった。
ボスを倒すより三人をなだめることに難儀したソーマはようやく転移レリーフ前の宝箱までやってきた。
次は王の開ける番なので、四人は見守ることにする。
「ふむ、私は海龍神様に祈るとしよう。海龍神様、どうか私に貴方を祀る祠を復活させる為に必要な物をお授け下さい」
王の言葉に、さすがは王だなと敬意を持つ四人。
そして開けた宝箱にはなんと……。
ライル王国騎士団のロゴが入ったタオルが入っていた。
ソーマはそれを見て思ったのである。年末のご挨拶で貰うタオルは大抵余るんだよなと。
「ふむ、海龍神様は私の実力は十分だと判断したのか、労いのタオルを下さったようだ」
そしてめちゃくちゃポジティブに捉えている王に、四人は結構天然なところがあるんだなと苦笑いで嬉しそうな王に、良かったですねと返事をしていた。
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