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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第4章 獣人国編
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第102話 丸眼鏡、活躍する


 ソーマ達は第六層へと転移していた。

 第六層は第一層のような螺旋階段になっている。第一層との違いはさらに気温が下がり、ところどころ凍結しているようなあとが見られるくらいだ。


「うーん、あんまりゆっくりして水が放出されてもイヤだから、とりあえず降りますか」

「さみーし身体動かしてねぇとたまんねぇな!」

「マキナは炎熱嵐を纏えば暖かいんじゃない?」


 ソーマの提案になるほどと炎熱嵐を纏ったマキナは「うひょーあったけぇ!」とはしゃぎながら階段を駆け下り始めた。皆もそれに続いて疾走する。

 途中真っ白な狼型の魔物などもいたが、ソーマ達の速度に追いつけないうえ先陣を切ってるマキナがどんどん魔法で蹴散らしていくので、マキナ以外の四人は走っているだけで経験値が入る仕様となっていた。

 あっさりと終着点に辿り着き、転移レリーフ前の宝箱をソーマは祈りの言葉を唱和して開けた。

 中からはまた、絹の袋が出てきた。


「おまえそれ好きだよなー」

「別にこれ狙ってるわけじゃないんだけどな……さて、次はどんな効果でしょうか、ココネ博士」


 ソーマは絹の袋から出てきた青と翠の宝玉を丸眼鏡に手渡すと、丸眼鏡は瞳を揺らめかせて鑑定を始めた。


「ふむ、魔神神殿の時に出たものと同じく大精霊の宝玉じゃの。属性は見ての通り水と風じゃな」

「お、じゃあこれは丸眼鏡の杖に付けといてよ。これで丸眼鏡は全属性強化されたわけだ」

「ありがたいの、これがあればソーマ殿から教えてもらった必殺技も使えそうじゃ」


 マキナは必殺技ってなんだ!? と興味を示しているが、まだ内緒とのことで、フィオナに関してはソーマがマキナや丸眼鏡に宝玉を渡しているのに自分の分が無いのにショックを受けている様子であった。

 実際のところ、フィオナに関しては宝玉を装着出来る穴が装備に空いてないので、渡したくても渡せないのが現状だ。

 現在宝玉はマキナが火、ソーマが風、丸眼鏡が水風地と付けており、状態異常付与の毒と麻痺に関してはマキナのホルスターバッグに入れられている。

  

「それにしても自身が開けた宝箱から出たレアアイテムを惜しげもなくパーティメンバーに配るとは、リーダーの鑑(かがみ)だな」

「いや、ヴァンがいなければ俺がメインアタッカーだし、魔法効果を高めるアイテムは魔法が得意な仲間が持っていた方がパーティ全体としては都合が良いからね」

「そういうところをリーダーの鑑と言っておるのだ」


 なるほど、と王の言葉に納得するソーマ。

 直後、遥か頭上で轟音が鳴り響く。


「あ、ちょっとゆっくりしすぎたね、水が放出されたみたいだからまずは転移しよう」


 ソーマの言葉に四人も続き、第七層へと転移した。



 第七層からはさらに気温が下がり、壁や天井、それに床が氷に覆われるエリアとなっていた。

 相変わらず長大な空間で、今回は第2層のような立体迷路だが、流れるプールのようなものではなくガラスのように透明な氷で出来た立体迷路になっている。


「これよく見ねぇと壁があるって分かんねぇからぶつかっちまうな」

「それに白狼のような魔物も迷路の中を歩いてるみたいですわね」


 かなり透明度の高い魔法の氷のような壁は、一見すると壁があるように見えなかった。

 普通のパーティでは自分たちがどこを通って、今どの辺りにいるのかも分からなくなってしまいそうな迷路である。


「ってことで……ココネ博士よろしくお願いします」

「もうやっておるのじゃ……モブキャラどころかダンジョン攻略の要になっておるゆえ、ちと居心地が悪いのぅ……」


 丸眼鏡は何を今更な愚痴をこぼしながらお茶のセットを用意し始めたので、ソーマも土魔法でテーブルと椅子を作って湯を沸かした。

 フィオナも丸眼鏡には探知に出来るだけ専念してもらうためか、ソーマの沸かしたお湯でお茶を淹れている。

 かなりややこしい迷路なのか、丸眼鏡はムフフの本を出して地図を書き始めていた。

 丸眼鏡以外の四人はティータイムの後、時折会話しながら各々魔法の習熟度を上げたり、剣の稽古をしたりして迷路の解析を待った。


 結局二時間半ほど掛かって無事迷路の解析は終わったようだ。

 かなり集中したのかぐったりしている丸眼鏡を気遣い、ソーマは少し休んでから行こうと提案した。

 リラックス効果のあるお茶を飲み終わった丸眼鏡は眠そうにしていたので、ソーマは即席で一人用の土魔法住居を作ってそこに暖炉を作り、弱い火球で暖かくしてからベッドを作ってやった。最上級クオリティのダンジョン内仮眠室と言ったところか。


 30分ほどして丸眼鏡はスッキリした顔で戻ってきた。


「すまぬの、おかげで頭が冴えてきたようじゃ」

「探知しながら地図作るのは結構脳に負担が掛かるからね、それじゃあ行こうか」


 撤収を済ませた5人は丸眼鏡を先頭に進み、1時間弱で迷路を攻略した。

 第七層の宝箱はマキナが開け、そこからはまた騎士団タオルが出てきた。

 当然マキナは憤慨し、フィオナはそんな物欲まみれじゃ出ませんよと先ほどの仕返しをしていた。

 それにしてもなんでこんなにタオルが出るんだと四人は不思議に思っていたが、王は配りたい人が結構いるらしく喜んでいたので、騎士団タオルが出たら全て王に渡すことで一致した。

 五人はそのまま第八層へと進む。


 第八層は第三層のようにプールのようなエリアだったが、ところどころでランダムに渦が発生し、泳いで渡るには相当厳しさが増しているようであった。


「なるほど、第一層から第五層までがワンクールになってて、それ以降は応用で難易度が上がっていく仕様か。にしても誰が作ったのか分からないけど、簡単にクリア出来過ぎて何だか作り手が可哀想になってくるな」


 泳いで渡るには厳しいだろうが、元々水面に道を作っていくソーマ達にとっては難易度は全く変わらなかった。

 水面から飛び出してくる魔物も強くはなっているのだろうが、ソーマ達の相手ではなく、経験値稼ぎだと言わんばかりにマキナとフィオナが競って倒していた。相変わらず目は笑っていないが。


 無事転移レリーフ前までたどり着き、宝箱前へ五人は集う。次は丸眼鏡の番である。


「あ、そういえば丸眼鏡MPって大丈夫?」

「うむ、今で半分切ったくらいかのぅ。探知でかなり使ってしまったからの」

「なるほどね、MP回復促進の効果があるアイテムとかあれば良いんだけどな」

「またソーマ殿は欲するアイテムのレア度が高いのぅ……では、女神様、MP回復促進効果のあるアイテムをお授け下さい」


 丸眼鏡が祈りの言葉を唱えて宝箱を開けると、なんとそこには……。


「お徳用五個セット」といった感じでバスケットに入ったMP回復薬が入っていた。

 それを見てソーマは、タオルといいこのダンジョンの主は天丼ネタが好きなんだなと確信した。



 第九層もやはり第四層と同じく頭上に細い通路のあるエリアだった。途中通路が途切れてジャンプしなければいけないようなところがあったりワイバーンの数が増えていたりしているが、そもそも通路も通らずワイバーンも関係ないソーマ達にとっては難易度は全く変わらなかった。

 あっという間に第九層の転移レリーフ前まで辿り着いた5人、宝箱を開けるのはフィオナである。


「フィオナ、さっきちょっと説明が悪かったけど今までの傾向としては自分が欲しいものってより、パーティ全体に必要なもの、今自分がダンジョン攻略に必要なものを願うと出やすかったよ。まあ出やすいって言ってもレアアイテムだから相当確率は低いと思うけど」

「わ、分かりました! ではソーマ様、今ダンジョンの攻略に必要なものってなんですか?」


 うーん、とソーマは俯いて考え込む。

 現状ここまで丸眼鏡のおかげで全く困っていないので、せいぜいちょっと寒いくらいだが、それも火属性魔法で暖を取れるので大した問題ではない。


「そうだね、宝玉は出て損はないかな。しいて言うならフィオナが宝玉持てないから、宝玉をはめ込めるような装備が出ると良いなとは思うけど」

「分かりました! じゃ、じゃあもしその装備が出たら、次ソーマ様が宝玉を手に入れたら私に下さいね! えへへ」

「そうだね、属性が合えばそうしよう。あとホントに滅多に出ないからね」


 フィオナは精いっぱい世界樹に祈りを捧げると、緊張した面持ちで宝箱を開けた。

 そこには、小さな赤いポケットと輪が付いた緑の腰巻が入っていた。

 色使いや配色はデザイン性が高く、キメの細かな革の肌目から品質の良さが伺える。


「あら、思っていたものと違いますけど装備品みたいですわね。ココネさん、見てもらって良いですか?」

「うむ……飛竜種の革のようじゃの、この手の面積の小さな防具の割には防御力は高く80もある上、魔法耐性も少しありそうじゃ」 


 フィオナは早速腰に巻いてみる。

 緑色のフォレストドラゴンの革鎧と色・デザインの相性も良い。


「そういえば丸眼鏡、フィオナが元々持ってた世界樹の杖って長さを変えても効果は変わらないのか?」

「うむ、極端に短くせず杖としての形をしていれば変わらんのう」


 ソーマは早速ムフフの袋から預かってもらっていた世界樹の杖を出し、戦闘の邪魔にならない長さに切り詰めると、フィオナの腰巻の横にある輪にその杖を通した。


「あ、これだと邪魔にならずに魔法を使う時だけ杖を使えます!」

「そうだね、世界樹の杖の効果もかなり良いものだったから、使わないのは勿体無いなと思ったけどこれで活かせるね」


 フィオナは嬉しそうに加工してもらった世界樹の杖を、何度も持っては仕舞いを繰り返して使い方を身体に馴染ませていた。


「さて、次は第一〇層だね。多分ボスがいるだろうから丸眼鏡のMP回復を待つのも兼ねて休憩してから行こうか」


 ソーマはティーセットを作ると、第一〇層に向けて英気を養った。



いつもお読み頂きありがとうございます。

昨日、更新してから初の一日1万PVオーバー、そして日間ランキング120位で過去最高更新しました!

評価、ブクマ本当にありがとうございます!

そしていつもお読み頂いている方々、本当にありがとうございます!

楽しんで頂けたら嬉しいです!

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