生きるため
「色々と聞きたいことがあるんだけど…」
とりあえず状況の説明を求める。分からないことが多過ぎだ。
エリゴールの存在自体もそうだが、「魔の頂点に君臨」だとか、とにかく情報が少なすぎる。
『簡潔に言うと、貴方が召喚し、契約をしたのがあの魔神よ。よくもまぁあんな強力な個体を喚べたものね…。最上位個体なのよ、ソロモンの悪魔って。』
ちなみに、ただの人間が使役できる代物ではないからね、とフォルンは少し呆れながら言う。
エリゴール…ソロモン72柱の序列15の魔神、未来を予見し、50の軍を持つ地獄の公爵。
ネットでかじった知識だが、あまり有名ではない悪魔だ…悪魔なのだ。しかも元の世界でも存在する名である。同一の存在かは不明だが、こちらの世界と何か関わりがあるのだろうか…
そもそもなぜそのような存在がただのサラリーマンに忠誠を誓っているのだ。謎は深まるばかりである。
《外はまだ戦闘中のようです。【魔王】の気配もあります。…ご命令を、我が主よ。》
「【魔王】ですと…!」
アグリーが震えている。
先の戦闘で生き残ったのは緑人族は、アグリー含め俺を護衛していた3人と、負傷した数名の戦士だけだった。
【魔王】、異世界から喚ばれた強い力を持つ者。
土人族の隊長が言っていた【グレイル】が恐らく【魔王】なのだろう。
この場はエリゴールのお陰で切り抜くことができたが、地上をどうにかしないと緑人族と運命を共にするだろう。
死にたくない。1度死の恐怖を体験したからこそ芽生える、現実味を帯びた恐怖。
…元の世界と比べて、生命が軽い。
これが戦争…。
生きたい。こんなところで死にたくない。
死にたくなければ戦うしかない。
俺は拳を握りしめる。
そして、エリゴールに、視線を向ける
エリゴールの表情は分からないが、俺がどうしたいのか理解しているのだろう。紅い眼光が揺らめいている。
「力を貸してくれ。」
《仰せのままに。これより、我が主の剣となりましょう。 》
黒の騎士は胸の前に剣を構える。恐らく忠誠の証だろう。
「アグリー、外まで案内を頼めるか?」
「はい。ご案内致します。」
歩きだそうとしたら、バランスを崩してよろめく。
直ぐに体勢を直したが、少しふらつく。
「そうだ…腕ないんだった。」
先の戦闘で左腕を失っていた事を思い出す。
切断面は何故か綺麗に塞がれていた。
『ああ、ワタシが治したわ。』
そんなことできるのかよ…。そもそもアンタ何もんだよ?
『今は知る必要はないわ、いずれ解るわよ。』
やんわり断られたが、答える気はあるみたいだ。
まあ今更何が来ようと驚かないけど。
左腕を失ったことで平衡感覚が優れないが、再び歩き出す。
生き延びるために。
ただそれだけを考えて進んでいた。
ーー
ーーーーッ
ーーーーーー!
…ステータス………更新…
〔【召喚魔】が閲覧可能になりました〕
〔スキル【憑依】を獲得しました〕
無機質な声が脳内に響いた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回もお楽しみにしていただければ幸いです。




