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召喚士に目覚めました  作者: まっきー
魔王と魔物
6/14

理不尽


目の前に突如現れた異質な【それ】にその場にいる全員が注目し、警戒した。


「………」


黒い人型が次第に形を形成して行く。

まるで、水の中に落としたインクを無理やり纏めようとしているかの様に不定形を極めている。

しかし確実にカタチが完成しつつある。


あまりにも無防備な【それ】を途中で斬りかかる者は居なかった。本能が危険を知らせている。これは危険である、と。



そして、一つのものが完成した。

身長2メートルはありそうな【それ】 はまるで中世の騎士を彷彿とさせる姿をしている。

しかしその鎧は、まるで光を寄せ付けないほど黒く、見続けていると吸い込まれてしまいそうで恐怖が襲ってきそうだ。

左の腰に携えているのは形状からしてレイピアのようだ。こちらも鎧と同じくひたすらに黒く、禍々しい。

その者の顔貌は全体を覆い尽くす兜により分からないが、二つの紅い眼が輝いている。


この場にいるすべてが、この存在は危険だと認識した。


暗黒の騎士は一歩後ろに下がり俺に片膝をついて、平伏した。



俺は【それ】 の正体が何者なのか理解していた。


さっきから頭の中に【それ】の情報が流れ込んでいるから理解してしまう。


「…エリゴール」


俺は【それ】の名を呼ぶ。

二つの紅い眼がこちらを捉える。


《ご命令を、我が主よ。》


外見の禍々しさとは裏腹に、中性的なとても透き通る声をしていた。


「勝て。」


《仰せのままに。》


喜んでいるのか、紅い眼が強く光る。

スッ、と立ち上がると、視線を俺から、武器を構えたまま硬直してしまった土人族へと移す。


「うっ…うわあああああ!!」


1人の土人族が目が合ってしまったようだ。反狂乱になり、目の前の騎士へと突撃した。

そして手に持つ巨大な斧を力任せに振りかざしたのだ。

ブォォンと風を荒々しく切り裂く音とともに振りかざした一撃には、さっきまで緑人族を蹂躙していた威力の比にならない程の破壊力を秘めているであろう。



その一撃が、構えもせずただ直立している騎士を両断しようと迫る。

他の土人族も、初めは恐怖に煽られ無謀な突撃を図った兵士に動揺と不安の念を抱いていたが、今やもう倒したものだというかのように笑みをこぼしている。


「くらええええ!!!」



スッ



ドサァ



静寂が広がる。

洞窟内に響きわたるであろう衝撃音が想像と違う。


彼らは、目の前の光景に再び硬直した。


突撃した兵士の身体が、腰から綺麗にまっぷたつになって地面に転がっていた。


一体何が起きた…?

騎士は、先ほどと変わらない様子でこちらを見ている。

その左手から大量の血液が滴っているのを除いて。


騎士は左手を手刀のように構え、右から左へと水平に振ったのだ。ただそれだけだ。


《つまらないな。》


だがその速さ故に誰も気づくことはできなかったのだろう。だから突撃した兵士が突然まっぷたつになったように見えたのだ。


…まてよ、なんで俺には見えるの…?



紅い眼光が鈍く光る。すると、鎧にべっとりついた兵士の返り血が内側へと取り込まれていく。


「なんだ…こいつは…」


土人族の隊長が呟く。


《貴様等に選択肢を与えよう。我が主の軍門に下るか、この場で死を望むか、さぁ選べ。 》


冷酷で美しい声が響きわたる。


なんかとんでもないことを言い出したので、我に返る。


「ドユコト…」


『まあまあ、落ち着いて。』


と、フォルンがいつの間にか居た。居た、というよりは脳内会話なのだが。


『召喚が思ったより消耗激しくてねえ。ワタシのマナも少し持っていかれたよ、あの騎士に。』


「あいつ…何者だよ…。」


なんであんなやばそうなの喚んじゃったんだよ。明らかにチート級の化物だよ。


『あの騎士…あれはエリゴール。ソロモン72柱の魔神よ。』


うそだろ…ほんとに悪魔召喚しちゃったよ…。

しかもソロモンの悪魔と言えば元いた世界でも聞いたことがあるワードだ。

なにか関係があるのだろうか?


『ドワーフ達、動くみたいだわ。』


「黙れ!我らは既に、【グレイル】様に忠誠を誓った!貴様等はここで滅ぼす!」


土人族は闘志の炎をその眼に宿す。諦めることなど許されない。彼らは戦士なのだから。


《愚かだ。だがその心意気良し。》


エリゴールは静かにレイピアを抜き、構えた。

その動作はとても精錬されており、非常に美しい。


《来い。》


兵士達が特攻する。エリゴールは最小の動作でそれをかわし、レイピアで急所を一撃で突く。

2人…3人…淡々と倒していくその姿は、とてもじゃないが戦闘とは呼べなかった。


殺戮。

辺りは鉄の匂いだけが残った。


ほんの2、3分で30人近くいた土人族の兵士達は、壊滅したのだ。




エリゴールは俺の方へ向かってきた。

鎧に付着した血を取り込みながら。


《命令に従い、勝利して参りました。》


と、跪く。

なんか褒めてもらいたそうにしている。



……やりすぎだろ。






俺TUEEって書いといて主人公何もしてないね()


最後までお読みいただきありがとうございます。

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