初めての召喚
「なんということだ!!」
アグリーが声を荒げて音のする方へ視線を向けた。
「もう土人族に見つかったか…!」
「くそう…ここまで追いついてきやがった…」
「さっきの爆発は…防壁を…?」
戦士たちがざわついている。こんなボロボロなのはもしかして土人族…ドワーフにやられたのか…?
とういうか既に戦争に巻き込まれてるよね?
もう後戻り出来なさそうだよね…。
「シロウ様、ご指示を!」
アグリーが訳のわからないことを言っている。
てかなんで名前知ってるんだよ。
「いや、指示って言っても…」
と、わたわたしているうちに、洞窟の奥の通路から複数人の足音が響いてきた。
「なに、もう気づかれたのか!」
間もなく、30名近くの小柄な兵士が現れた。
「ここが召喚の間で合っていたようだな。…召喚前には間に合わなかったか。だがまあ良い、まとめて皆殺しにしてくれよう!」
先頭にいる一回りガタイのいい兵士が手に持っている真っ黒な斧を構え、そう言うと周りも下衆な笑みをして武器を構えた。
あの黒い斧の兵士が、恐らくこの隊の隊長なのだろう。
とか考えている内に、戦闘が始まっていた。
力は同じ程度のようだが人数で押し負けている。
土人族が30名近くに対して、こちらは20名ほどだ。
このままでは負けは確実だ。
まるでリアルなゲームCGでも見ているかのような気分だ。
敵意が自分にも向けられていなければの話だが。
明らかに俺を狙っているのがわかる。分かるのだが体がいうことをきかない。
アグリーと他に2名の緑人族が護衛のように周りを囲ってくれている。
「シロウ様だけは何としてでもお守りするぞ!」
こんな状況でも守ってくれるのか。さっき知り合ったばかりの人間のことを。
ゴリッ
ドスッ
1人、2人と緑人族が血を吹き出し倒れた。
こちらの武器が棍棒やらの片手で扱えるモノに対して、土人族の武器は斧やハンマーなど、両手武器だ。
明らかに一撃の重さが違うだろう。
今しがた倒れた2人も、1人は頭を潰され、もう1人は胴体をほぼ切断されて殺された。
更に2人の緑人族が土人族の無慈悲な一撃により動かなくなった。
目の前に迫る死を少しずつ理解してきたのだろうか。じんわり汗ばんでいる。
「わしらが血路を開きます!その隙にお逃げください!」
アグリーが叫ぶが、それは難しそうだ。
この洞窟。【召喚の間】と呼ばれるここは、出入り口が1つしかないのだ。
つまり、先ほど土人族が来た道を走り抜けなければならない。
死の恐怖が襲ってくる。
ヒュン
不意に何かが顔の左を通り抜けていった。
なんだ?思わず左後方を見る。
5メートルほど奥の壁に大きな黒い斧が刺さっていた。
あれってさっきの隊長が持っていたような…?
その斧からは血が滴っていた。その血液を辿っていくと、
そこには俺の左腕が転がっていた。
認識してから、遅れて激しい痛みが左肩を襲う。
熱い!熱い!痛い!痛い!熱い!熱い!熱い!熱い!痛い!痛い!痛い!熱い!熱い!痛い!痛い!痛い!熱い!
綺麗に左肩から先を吹き飛ばされていたのだ。
「くそっ、外したか…!」
斧を投擲した持ち主、あの隊長が数メートル先でぺっと唾を吐く。
「し…シロウ様!!!」
アグリーが慌てて駆け寄る。
「敵の転移者は瀕死だぞ!この期をのがすな!!」
土人族が勢いを増して迫ってくる。
緑人族は半数を切った。
意識が遠のく…。
このまま…寝てしまおうかな…。
『ー。』
あぁ…痛みも…無くなった…。
『ーーッ。』
…つかれ…たわ……。
『ーさい!』
…なんだ?声?
『起きなさい!!』
ッ!!!
びっくりして目を開ける。その光景に驚愕した。
静寂な世界。すべてがモノクロで生き物は活動することは許されない。
「ここは…」
『内側の世界よ。』
どこからか女性の声が聞こえてきた。
辺りを見回すがどこにもそれらしき人物はいない。
『あ〜探したって無意味よ。姿はないから。』
「何がどうなってるんだ?…あんた誰だよ?ここは一体なんだよ…」
『ちょっと質問多すぎない…?少しは落ち着きなさいよ。って自己紹介はしなきゃだよね。ワタシはフォルン、よろしくねん。』
フォルン…?どっかで聞いた言葉だな…
『本当は気づかれないように助けるつもりだったのに…貴方、ワタシの結晶大量に取り込んだでしょ。お陰様でこんなに力が戻ってきたわ。』
ま、いいけどね。と話す謎の声に完全にペースを持っていかれているが、このフォルンという女、もしかしてさっきアグリーが持っていた(取り込んじゃった)、フォルンの石と関係があるのか。そんなこと話してるし。
『とりあえずは、この状況をどうにかしましょう。』
「どうにかってどうやって…」
『戦うのよ。大丈夫、ワタシがサポートするから安心して蹂躙しなさい!』
「ちゃんと説明して!!」
『じゃあ、いくわよ〜!!』
「まって…!」
世界に色が戻ってくる。
時間が、正しい方向へ再び進み出した。
『まずはスキルをイメージしなさい。そうね…【召喚】でもしてみましょうか。呼び出すイメージをしてみなさい。』
頭の中に声が響く。びっくりした。
『スキルをイメージしたらそれに体内のマナをつけていくのよ。』
訳わからない。
とりあえず、言われた通りに【召喚】を考えてみる。
魔法陣とかから出てくるようなものは有名だよな。後は御札とか、ボール投げたら出てくるモンスターも。
魔法陣がかっこいいよね、うん、そうしよう。
頭の中に1つの魔法陣を想像する。
そこから【なにか】を呼び出すイメージ。
『使うマナと技量にもよるけど、ある程度は想像したものに近い魔物が出てくるわ。』
分かり易いけどやりにくいなぁ。
う~ん、ここはやっぱり悪魔とかかっこいいよね。
悪魔を使役する魔王。右手が疼きそうな響きだな。
『よし、じゃあ喚ぶわよ!』
フォルンの言葉と同時に体内からごっそり《なにか》を抜き取られた。ひどい倦怠感に襲われる。
『これは…!!』
倒れそうな体をなんとか保ち、目を開ける。
俺は驚愕した。
目の前の空間に亀裂が入っているのだ。そこからこちらを覗いている気配を感じる。
禍々しい。どす黒い気配を纏った【それ】 は亀裂から姿を現した。
真っ黒な人の形をした【なにか】が目の前にいた。
ついにバトルです




