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召喚士に目覚めました  作者: まっきー
魔王と魔物
12/14

二つの月と騎士

前回から感覚があいてしまいすみません。。。



【食屍鬼王】は瓦礫のなかから出てくると、あたり一面に悪霊を出現させた。数え切れないほど現れたそれは、今にも飛び掛ろうと蠢いている。


だがこれら全てを相手にしてもきっとバルバトスの敵ではないだろう。

そう思っていたら、なにやら【食屍鬼王】の動きが怪しい。

聞き取れないが、何かをつぶやいているようだ。すると、【食屍鬼王】から発せられていた嫌な気配が強くなる。



⦅グオオオオオオオ!!!⦆



どす黒いマナが溢れる。

すると悪霊がまるで重力に吸い寄せられたかのように【食屍鬼王】の体内に吸い込まれてゆく。


「あいつ、周りの悪霊を取り込んで自分の力にしているわ。…ちょっと手ごわそうね。」

バルバトスは焦った様子もなく言ったが、


「たぶん、私じゃあ勝てないわ。」


と続けて言う。

このままではまずい。エリゴールもバルバトスも勝てない相手に俺がどうこうできる訳が無い。



不意に、脳裏にさっきの白いワンピースの女がよぎった。

フォルン…。俺は彼女の素性をしらない。だが、あの女の事を記憶のどこかて覚えているような気がする。


この異世界に転移して話しかけてきた姿のない女。同一人物なのは恐らく間違い無いのだろう。


俺に力を与えてくれて、自分のマナと別の何かが混ざり合い、新しい力になっている。気配を感じ取れない。まさか消えてしまったのか…?


分からないことが多過ぎる。なぜ俺にしか認識できなかったのか、どうしてそこまで俺を助けてくれたのか、俺はどうすればいい?教えてくれ。








〔スキル[神格補助]を起動しますか? Yes/No〕


思考の海に沈んでいると機械的な声が頭の中に響いた。

神格補助?たしかにスキル欄に表示されてたな。

まさか…。おれはそんなことを思いながら少し期待しながらYesを選んだ。





『貴方、まだ倒してないの?』


驚いた。もう何回驚かされるんだろう。

頭の中に呆れたような声が響いた。

フォルンだ。


居なくなったわけではなくて少し安心した。



『どうやら、貴方にマナを与えた影響で同化したみたい。今の私は、あくまで貴方の[スキル]でしかないみたいだわ。』



俺の常識を超えた考察を話している。

これが終わったら詳しく教えてもらおう。




そんなことをしているうちに【食屍鬼王】は全ての悪霊を、体内に取り込んだようだ。

さっきまでとは比べ物にならないオーラを感じる。

ドーピングなんてレベルじゃない。

体中の筋肉は膨れ上がり、浮き出た血管が、どくん、どくん、と脈打っている。

まさに化け物。これを倒さねばならないのか…。


『まだ使ってないスキルがあるでしょう。』


フォルンが言う。

たしかに、ある。

使い方がわからないのもが多くて、何に手をつけて良いのかわからないのだ。


『なるほど。そしたら、ワタシはまさに絶妙なタイミングで現れたわけね。』


なにか良い考えでもあるのだろうか。


『ワタシは今、[神格補助]のスキルを依代としているわ。だからスキル進化もキャンセルしちゃったんだけど…それはあとでどうにかするから安心してね。』


フォルン曰く、神格補助と言うスキルはその名の通り神格を身に宿し、その恩恵を受けると言うぶっ壊れスキルらしい。肉体を保てる範囲でなら神の力を顕現することができるという。



『ワタシの力は…まあ、ナビゲーターみたいなものだとでも思ってくれて良いわ。まずはスキルの効果でも見てみたら?』



【食屍鬼王】はまだその場から動かない。まだ体の制御に時間がかかるみたいだ。



まずは、言われたとおりに自身のステータスを確認する。





名取 史朗 〔人族〕

[称号] 転移者 魔王

[職業]召喚士 Lv MAX

[スキル] 召喚 使役 覇気 全耐性 並行思考 神格補助 魔神化 超再生

[召喚魔] エリゴール バルバトス

[???]ギフト


〔[ギフト]を開封しますか? Yes/No〕


いろいろ気になることがあるが、今は後回しによう…。

それに[ギフト]は開くべきなのだろうか?


『今はまだいいわ。それより[魔神化]を確認してみなさい。』


フォルンに従い[魔神化]を確認する



〔[魔神化]……条件を満たした召喚魔の力を自身に顕現する〕



つ、強そう。名前からして厨二臭かったが内容もなかなかだった。



〔エリゴールが条件を満たしています。魔神化を実行しますか?Yes/No〕



エリゴールに目を向ける。


未だ呪いに蝕まれているとは思えないほど凛々しい姿をしている。しかし、もう一刻の猶予もない。


すると、エリゴールの紅い眼が強く光る。まだ戦える。そう言っているような気がした。



「…力を貸してくれるか?」



《私の全てを捧げましょう。我が主、シロウ様》



俺はエリゴールを信じ、Yesを選んだ。



すると、エリゴールの足元に魔法陣が浮き上がった。その魔法陣からエリゴールの全身を覆うほどの黒い霧が吹き出して、収縮し、姿を消した。



エリゴールが姿を消したタイミングで、俺の身にも変化が起こる。


体の至る所から、さっきエリゴールを包んだ黒い霧が吹き出る。

その黒い霧は俺の体を覆うように張りつくと、その形状を変えてゆく。



突然、脳裏に見覚えのない光景が浮かぶ。

美しい黒色の長髪の女がいる。玉座にて主に忠誠を誓う。しかし友に、主に、国に裏切られ命を奪われそうになる。辛うじて助かるがその心はやがて闇へ染まる。血、血、血、血。激しい雨の中女は無数の騎士に取り囲まれ、戦っていた。いや、戦うというよりは、女が一方的に切り伏せているのだ。

殺戮を重ねるその姿には最早騎士の気高さなど無い。ただ憎しみのままに力をふるう。


「なんでっ!なんでっ!どうしてなの!!!」

そんな悲痛の声は虚しく空に消えてゆく。

繰り返される殺戮、殺戮、殺戮。

やがて積み上げられた死体の山に1人立っていた。

雨と血と泥にまみれ、曇天の空を見上げる。

いつになればこの気持ちは晴れるのだろう。

そんな魔物となった女に一人の男が声をかける。


「ーーーーーーーー。」


プツン。






ここでその光景が終わってしまった。

あれはもしかしてエリゴールの記憶…?



『うまく行ったみたいね。』



気がつくと俺の体は漆黒の鎧に包まれていた。


エリゴールの鎧に似ている。


俺の体格に合わせてサイズや細かな作りは変わっているが間違いない。

さらに、どうやら俺のマナとエリゴールのマナが混ざっているようだ。凄まじく強大なマナを感じる。


これが魔神化か。




そこには光すら吸い込んでしまいそうなほど黒く、美しい鎧を纏った騎士が立っていた。



ステータスを確認する。




名取 史朗 〔人族〕 【魔神化】

[称号] 転移者 魔王

[職業]召喚士 Lv MAX [DP ???]

[スキル] 召喚 使役 覇気 全耐性 並行思考 神格補助 魔神化 超再生

[魔神スキル] 剣聖 神速 黒化 浮遊 魔血 悪魔生成 【武器生成】【魔命付与】

[召喚魔] エリゴール バルバトス

[???]ギフト


どうやらエリゴールのスキルがそのまま使用できるようだ。加えて【武器生成】【魔命付与】は新しいスキルか。

実践で使ってみないと効果が分からないのは少し厳しいな…。


『[平行思考]を使って見なさい。ふたつの意思を動かせるわ。』

そんな便利スキルだったのか。それなら戦いながら思考することも可能だ。

ならもうひとつの自分にスキル解明を任せるとしよう。




⦅グオオオオオオオオ!!!!⦆



【食屍鬼王】は間もなく全ての悪霊を取り込み攻撃を仕掛けてくるだろう。



『こっちから先に仕掛けるチャンスね。やってしまいましょう。』



俺はフォルンの提案に賛成し、両手を地面につき、マナを放出した。そこから両手を真上に上げた。

すると、バチバチと音を立てながら、地面がまるで磁石に吸い寄せられた砂鉄のように引き上がってゆく。

それを材質変更。形状安定させ、2本の刀を作り上げた。

自分の腕ほどの長さがあるそれは、まるで小太刀のような作りである。


俺はその小太刀を構え【食屍鬼王】へと突っ込む。

神速スキルで一息つく間に【食屍鬼王】の眼前まで迫る。

不意を突かれた【食屍鬼王】はとっさに後退しようとする。その隙を逃す訳が無い。



ズバッ!




俺は勢いに身を任せ、【食屍鬼王】の左腕を吹き飛ばした。

悪霊を取り込み、人間の胴よりも太くなった腕は、なんの抵抗もなく切断され、赤黒い血液をまき散らしながらドスンと大きな音を立て地面に落ちた。



…うん、この刀しっくりくる。



⦅グワアアアアアア!!!⦆



憎しみに染まった、叫び声が鼓膜から脳を揺さぶる。



⦅コロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!⦆



【食屍鬼王】は落ちた左腕の元に駆け寄り、俺から距離を置く。

そして、自分の腕を喰らい始めた。


バリッゴリッゴリッガリッボキッ


するとみるみる傷が癒え始め、やがて止血した。


喰らうことで回復もできるのか。早く決着をつけないと、長引きそうだ。



【食屍鬼王】が凄まじい速さで突撃を仕掛けてきた。

恐ろしい形状をした腕はまだひとつ残っている。その先には恐ろしい爪が伸びている。

それが今にも体を引き裂こうと迫っていた。



俺は2本の小太刀で受けようとした。しかし、相手は寸前で右足の蹴り上げを挟み、小太刀の構えを崩した。

がら空きになってしまった胴めがけて再び鉤爪が襲いかかる。


ズシャアア!!!


なんとか状態を逸らし、致命傷は免れるが、漆黒の鎧には4本の深い爪痕が残され、そこからは血がとくん…とくん…と流れている。

加えて呪いが付与されたようだ。魂が何かに削られていくのを感じる。



これで決着をつけるか…。


俺は意識を集中する。マナに形を与えるイメージ。

想像するのは対になる悪魔。

スキル[悪魔生成]だ。


さっき[平行思考]によってスキルについては多方理解することができた。


[悪魔生成]とはその名の通り悪魔を作り上げるという凶悪なスキルだ。

召喚と少し違うのは、マナの消費量が少なく、大量に喚べるが個体の強さがあまり期待できないという点である。

あり方は少し違うが[召喚]の下位互換という解釈が近そうだな。

しかし、このスキルによって生成された悪魔は唯一【成長】することができるらしい。名前を与えることで強くなるのだとか。

今回は生成数を2体に絞り、マナもかなり送り込んだからそれなりに強個体が現れると予想する。



しばらくすると闇の中から2体の悪魔が姿を現した。悪魔の生成に成功したようだ。

この2体の悪魔はどちらも同じ姿をしていて、恐竜人間にトゲが生えたような攻撃的な姿をした悪魔だった。

俺はそれぞれに、【緋月】【蒼月】と言う名を与えた。

そして直ぐに[魔命付与]を発動した。


このスキルは、命ないモノに、悪魔の命をエンチャントすることができるスキルだ。例え死体であろうと、鎧であろうと、対象に命が無ければエンチャントは可能だ。

俺は、先程生成した2本の小太刀にエンチャントをした。



『さっきの2体、名前もらった影響で魔法を覚えたみたいだわ。』


よし、うまくいったみたいだ。



光り輝く2本の小太刀の柄の部分が、緋月をエンチャントした刀はエンジ色に、蒼月をエンチャントした刀は紺色になった。


改めて刀を握り構える。

先程と違い、魔力を感じる。しかも次第に大きくなっているのがわかる。



俺は敵を睨みつける。

【食屍鬼王】は刀を非常に警戒しているようで、さっきのようにすぐ仕掛けようとしてこない。


ならばこれで終わりにしてあげよう。

ごめんなさい。ホントのホントに次で決着です…!


最後までお読みいただきありがとうございます。

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