騎士VS悪食
今回は少しグロテスクなシーンがあります。
苦手な方はご注意ください。
エリゴールは苦戦を虐げられていた。
剣の技量、身体能力の高さにおいて【食屍鬼王】とは比べるまでもない程の差がある。
ただ相性が悪い。
エリゴールの得意とする戦い方は近接戦闘に持ち込み、一体ずつ撃破していくスタイルだ。
範囲攻撃も使えるが、騎士であるエリゴールは好んで使わない。
さらにスキル非常に優秀なスキルも備わり、単騎としての戦闘力はピカイチである。
[剣聖]のスキルは【武器】と認識したものであればなんでも使いこなすことができる。また、その形状ですら自在に変えることができる。
[魔血]は身につけている装備に血液を吸わせ、その分だけ耐久を上げるという、いかにも悪魔らしい手法のスキルである。
ほとんどの敵はこの二つのスキルを前に蹂躙される。
そんな攻防ともに優れたエリゴールが押されている理由は簡単であった。
エリゴールを近づけさせないのだ。
エリゴールが何度か接近を試みているが、【食屍鬼王】の周囲を取り巻いている禍々しいオーラが実体となり邪魔をする。
その正体は、グレイルの餌となった仲間たち。
食屍鬼の怨念だ。
500年かけて蓄積されたエネルギーが嵐のように吹き荒れる。
エリゴールの魂を喰らおうと無数の攻撃が押し寄せる。
それをかわし、追いついた一体の悪霊に強力な突きを放つ。
悪霊は顔を歪ませ消えていく。
入れ替わるように5体の悪霊が大口をあけ迫る。
それを左前方へ駆け抜け悪霊が一直線に並んだ瞬間を[剣聖]スキルでレイピアを伸ばし一突きする。
これではキリがない。
エリゴールにとって強敵ではないが、無限に湧くかのような敵の数に足止めを食らっている。
すると地上から悲鳴が聞こえた。
「「「うわああああああ?!」」」
悪霊どもを屠りながら声のした方を見る。
「なぜです…!グレイル様!!」
「お助けください!」
「逃げろ…逃げろおおおお!!!」
【食屍鬼王】は土人族を喰らっていた。
鋭い鉤爪で土人族の鎧ごとその強靭な肉体ごと引き裂き、骨ごと噛み砕く。
少しずつ、少しずつ【食屍鬼王】の魔力が強くなっていく。
「助けてく…」グシャアアア
ゴリッゴリッ
《500年で随分と悪食になったものだな、反吐が出る。》
⦅オマエモ喰ッテヤル⦆
【食屍鬼王】が[神速]を発動し、エリゴールに迫る。
同じく[神速]で超加速したエリゴールが迎え撃つ。
ドゴオオオオッッッ
激しくぶつかり合うが、エリゴールはそれが悪手だったと悟った。
途端に無数の悪霊が飛び出しエリゴールに食らいついた。
鎧を貫通し、肉体が悪霊の餌食となる。
エリゴールは一瞬体制を崩す。鉤爪がその隙を逃すはずはなかった。
エリゴールのレイピアを弾き、無防備になった胴体を切り裂く。
何とか後方へ回避したため致命傷にはならなかったが
漆黒の鎧は縦に四本の傷をつけ、そこからドクドクと血が流れ落ちていた。
見た目ほど深い傷ではない。[再生]スキルで鎧ごと元通りになる。
それよりも最初の悪霊どもに喰われた事が厄介だ。
呪いだ。魂を貪る呪いだ。
[全耐性]スキルは表面の異常を無効化する強力なスキルだが、その範囲は魂までには及ばない。
⦅喰ッテヤッタ!喰ッテヤッタゾ!!⦆
【食屍鬼王】が歓喜で醜悪な顔を更に歪ませる。
持って1分。エリゴールの予想は的確であった。
本来ならば一瞬で喰い殺されてしまうものを、魔族の上位である魔人の力と己の精神力で耐えている。
だがそう長くはもたない。
次の一撃で倒さねば全滅する。
…[黒化]を使うしかない。
[黒化]…その身を闇に堕とす事スキル。マナが尽きる限り、力が増幅し続ける強力なスキル。しかし、自画を失い、破壊だけの感情しか残らない狂戦士となる。
エリゴールは自身の決めた戦い方に反するため、使わない。
しかし、ここでこだわり主を失うことは絶対にさせない。
もう二度と【主】を失うわけにはいかない。
紅い眼の輝きが消える。同時に全身から黒い霧が吹き出す。
もウ…二度ト………失ワナ…
カッ!!!
背後から強い光を浴びせられた。
途端に闇に堕ちる寸前で[黒化]が解除される。
青く、白い光の正体は凄まじい量のマナだった。
【食屍鬼王】もあまりの輝きに目を細める。
「エリゴール…下がれ。」
《はっ。》
命令した声の持ち主の元へ瞬時に移動する。
「あとは任せろ。」
エリゴールは本心を悟られないよう冷静を装い跪く。
そのうちには歓喜と安心、そして疑問が確信にかわる瞬間だった。
やはり、生きておられたのですね。【王よ】。
エリゴールのスキル解説回みたいになったなぁ…
そしてあまり活躍できなかった。。
次話やっと主人公が戦います。
最後までお読みいただきありがとうございます。




