↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rainy Tokyo☂️-レイニートウキョウ-  作者: 冬瀬澪
第一幕「雨の東京で」
3/25

第二景「缶コーヒーの温もり」

第一幕「雨の東京で」

第二景「缶コーヒーの温もり」



悠吾は、今日もオフィスの自席から、窓の外を見ていた。

薄暗い雲が、重そうに垂れ込めている。


今年の梅雨は長くなりそうだと、予報士が言ってたっけ。


隣の席に視線を移す。

まだ、彼女の姿は見えない。


綺麗に整えられたデスクの上を見て、その横顔を思い出していた。


「おはようございます」


声が聞こえた。

ただの挨拶のはずなのに、はっきりと悠吾の中に残った。


未来がオフィスの入口をくぐり、そのまま真っ直ぐに自分の隣のデスクに向かう。


「おはようございます、雨宮さん。今日もよろしくお願いします」


未来は丁寧にお辞儀をする。


「あ、おはよう……」


悠吾はつられて頭を下げた。



-☂️-



「大空さん、今日やってもらうことなんだけど……」


悠吾は隣の未来に声をかけた。


「はい、なんですか?」


未来の瞳が、悠吾に真っ直ぐに向けられる。


「……昨日のミーティング内容を、芹沢さんのところに送ってほしいんだ」


悠吾はPCを片手で操作する。

少しだけいつもより動きがぎこちなくなった。


「書式は以前のデータがあるから、それ通りに作ってもらえれば……」


言いながら、未来のPCの画面にチャットのログやデータを表示する。


「わかりました。やってみます」



-☂️-



「大空さん、さっき送ってもらったデータなんだけど」


芹沢志保せりざわしほが未来のところにやってきて、出力された用紙を見せる。


「この書式、もう使ってない古いやつなのよ」


志保は用紙のマーカーのされた箇所を指さす。


「新しい書式に直して、もう一回出してくれる?」


「も、申し訳ありません」


未来は立ち上がって頭を下げる。


「ちゃんと、先輩にきちんと聞かなきゃ」


そう言って、今度は悠吾を見てくる。


「あんたもあんたよ。最初にきちんと教えたの?しっかりしてよね」



-☂️-



廊下の自販機で、悠吾は缶コーヒーを一つ買った。

缶を片手にもって、少しの間考えて、もう一度ボタンを押す。


一つ多い缶コーヒーを、少しだけ隠すように持つ。


自席に戻ると、未来はまだ俯きがちだった。

悠吾に気付くと、顔を上げてこちらを見た。


「……すみませんでした。私、どのデータが最新のものか判断つかなくて」


「いや、俺の指示も曖昧だったよ。すまない」


「でも、ちゃんと聞くべきでした……」


また、未来は俯いてしまった。


悠吾は未来のデスクに缶コーヒーを一つ置いた。


「……飲む?」


未来は、置かれた缶を両手に取って、少しきょとんとしていた。


挿絵(By みてみん)


「……もしかして、コーヒー駄目だった?」


「あ、その、実は……」


「あー…いや、こっちこそ、聞きもしないで勝手に……」


悠吾は慌てて缶に手を伸ばそうとする。


けれど、未来はその缶をもったまま、くすっと笑った。


「……何か、可笑しかった?」


悠吾は少し戸惑いながら聞いた。


「……いえ、すみません。…雨宮さんって、優しいんですね」


そう言って、未来はこちらを見て微笑んだ。


悠吾は、何故か視線を外して、窓の外を見た。

気のせいか、オフィス内が少しいつもより暑く感じる。


手の中の缶コーヒーを、悠吾はすぐに飲めずにいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。