↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rainy Tokyo☂️-レイニートウキョウ-  作者: 冬瀬澪
第三幕「熱に滲む夏」
19/25

第十八景「明けの明星」

第三幕「熱に滲む夏」

第十八景「明けの明星」



カーテンの隙間から白い光が筋のように漏れ、悠吾の閉じた瞼にかかる。


どこかひんやりした空気が、素肌の肩を撫でる。


悠吾はベッドの中で、ゆっくりと目を開ける。

すると、目の前には白い肩の稜線と、長く艷やかな黒髪があった。


意識がまだはっきりしていないのに、悠吾はその瞬間昨日の情事を思い出した。


息を呑む。


彼女はまだ、静かな寝息を立てている。

布団に包まれながら、その白い肩がゆっくりと上下していた。


悠吾は、寝ている後ろ姿の彼女を見つめていた。


—……雨宮さん、お願い—


懇願するように伸ばしてきた手。淡い瞳。


でも、あれは、自分を見ている瞳じゃなかった。


「……ん」


小さな声と共に、未来が少しだけ身じろぐ。

長い横髪が肩を滑っていく。


彼女の首筋が、露わになる。


そこには、自分が残した痕と、消えないあの人の紅い痕。


その痕を苦々しく見つめ、奥歯を噛み締めた。


悠吾はそっと、未来の肩に手をやる。

ほんの少し湿って、冷えた肩。


振り向かせようと、わずかに手に力を入れるが、その手をゆっくり離す。


代わりに、悠吾はその白い肩に小さく口づけを落とした。


「う、ん……」


未来の睫毛が震えるように開く。


半分開いた目で、ゆっくりとこちらを見てくる。


「……あま、みやさん?」


悠吾は小さく笑って言った。


「おはよう。大空さん……」



-☂️-



早朝の太陽が空を明るくする。

ほんの少し視線を移動すると、薄青い空にまだ星が見えていた。


悠吾はその星を、目を細めて見ていた。


木々の葉からは昨晩の雨の雫が垂れていて、それらはキラキラと光を反射していた。

空気が少しだけ清々しい。


悠吾は玄関先で、腕を組みながらそんな事を感じていた。


「……それじゃあ、雨宮さん、ここで失礼します」


目の前の未来が、白いブラウスとタイトスカートの姿で丁寧にお辞儀をした。


一晩で乾いたとは言え、服は少しだけ皺になっていた。


「本当に、送らなくて大丈夫?」


「はい、大丈夫です」


「……」


「……」


二人の間にしばらく沈黙が落ちた。


「雨宮さん…あの……」


未来の視線が少しずつ落ちていく。


悠吾は、口の端を緩めながら、そっと未来の頭に手を乗せる。

ほんの少しだけ優しく撫でる。


はっとして未来は顔を上げる。その瞳が淡く揺れていた。


挿絵(By みてみん)


「それじゃあ、また会社で……」


「……はい」


小さくお辞儀をして、未来はその場を後にした。


悠吾は片手を上げて、未来を送り出す。


未来は廊下の突き当りで、もう一度お辞儀をする。


マンションの玄関を出て去っていく未来の姿を、悠吾は上の廊下から最後まで見ていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。