第十七景「上書きできない痕」
第三幕「熱に滲む夏」
※本景にはR15相当の表現が含まれています。
第十七景「上書きできない痕」
未来の首筋に、悠吾の歯形が残った。
そこに、悠吾はどこかで小さな興奮を覚えた。
未来に残した自分の痕。
それを、目を細めて見ていた。
そのまま、顔の位置を下げて、悠吾は未来の素肌に唇を這わす。
そして、何度も音を立ててキスを落とす。
「ん…あ…」
未来の声が上がる。
悠吾はその都度顔を見て、続ける。
未来はキスが落ちる度に、声を上げて身体を震わせる。
扇情的な姿に、悠吾は自身が昂るのが分かる。
未来の火照る身体を、優しく撫でていく。
「あっ!」
未来の声が大きくなった。
声を出したことを今更恥じるように、未来は口を両手で押さえる。
悠吾はその手を取って、指先に口づける。
それから、悠吾は未来の反応を確かめるように触れていく。
「…あ、あまみや、さん」
我慢ができなくなった未来が、揺れる瞳をこちらに向けて言う。
「ずるいな…こんな時に、名前を呼ぶなんて」
余裕の無さそうな声で悠吾は、笑った。
「それじゃあ、どうしたって、優しくするしか…ないじゃないか」
「……ごめんなさ——」
そう言う未来の唇を、悠吾は自身の唇で塞ぐ。
それから、未来を見下ろして悠吾は言う。
「辛かったら、言ってくれ。止められる自信は、無いけど……」
未来は黙って小さく頷いた。
それを合図に、二人は深く身体を重ねた。
-☂️-
悠吾が動く度に、未来の長い髪が、肩から滑り落ちる。
「あっ…ん…あまみや、さん」
名前を呼ぶその声が、甘くて。でも、苦くて。
悠吾は、もう一度その名前ごと唇で塞いだ。
それでも未来の声は、動きに合わせて漏れてくる。
悠吾の息が早くなるのを感じる。
未来の喘ぐ声もそれに合わせて高くなっていく。
エアコンの音が低く室内で響く。
部屋の空気は冷えているのに、二人を纏う熱だけは冷めなかった。
-☂️-
どちらとも言えない吐息が、部屋で交わる。
悠吾の汗が、頬を伝い、顎から落ちる。
汗は未来の白い身体に滴る。
未来は、涙で溢れそうな目で、悠吾を見上げていた。
黒い瞳が、苦しそうに自分を見下ろしている。
それでも、未来はしがみつくしかなかった。
両手を伸ばし、悠吾の背中に回すと、自ら引き寄せた。
「あまみや、さん。あまみやさん」
未来は繰り返し悠吾の名前を呼んだ。
過去を追い出したくて。今に縋りつきたくて。
身体に彼の重みを感じながら、未来は泣いていた。
-☂️-
悠吾の荒い吐息が漏れる。
自分の手が彼女を乱している。
思わず悠吾は小さく笑った。
なのに、何故か悠吾は満たされなかった。
そんな自分が、おかしくも、腹立たしくも感じる。
そんな気持ちを、悠吾は未来にぶつけるしかなかった。
雨はずっと降り続けていた。
二人の感情を覆い隠すように、ただただ、音を立てて降り続けていた。




