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Rainy Tokyo☂️-レイニートウキョウ-  作者: 冬瀬澪
第三幕「熱に滲む夏」
17/25

第十六景「雨の訪問」

※本景にはR15相当の表現が含まれています。


第三幕「熱に滲む夏」

第十六景「雨の訪問」



悠吾は自室のベッドに座っていた。


窓の外は強い雨が降っている。

ガラスを叩く音が、部屋に反響する。

窓の向こうの街の光が、歪んで揺らいでいた。


スマホの画面を点けてみる。

相変わらずメッセージに既読は付かない。


こんな夜だからか、それとも未来に会いたいと思った矢先に挫かれたからか、悠吾は妙に落ち着かなかった。


ピンポーン。玄関のチャイムがなる。


壁の時計を見ると22時を過ぎていた。


こんな時間に?宅配なんて頼んでたっけ?

そう思いつつ、玄関に向かう。


「はい——」


扉を開けると、目の前には未来が立っていた。


「お、大空さん!?」


急な来訪で、しかもその様相に悠吾はぎくりとした。

傘を持っているはずなのに、彼女の全身はずぶ濡れだった。


俯いていた未来が、ゆっくりと顔を上げる。


未来の瞳が濡れていた。

顔は雨に濡れたのだろう。

けれど、今にもその瞳から涙が溢れそうなことぐらい、悠吾にも分かった。


「雨宮さん!」


そう言って、未来は突然悠吾の胸に飛び込んできた。

未来の持っていた傘が、コトンと音を立てて足元に落ちた。


悠吾はあまりの事に声が出なかった。


挿絵(By みてみん)


未来の肩は震えていて、悠吾の胸の中で瞳は固く閉じていた。

空いた両腕の所在を探している内に、未来は続けた。


「私、怖いんです。このままだと、私——」


怖い?何が?

悠吾は言ってることを呑み込めなかった。


「雨宮さん。私を——抱いて…下さい」


悠吾の手が宙で止まった。



-☂️-



シャワーのコックをひねると、排水溝に渦を巻いて湯水が吸い込まれていくのが見える。


悠吾は、しばらくその様子を見ていた。


バスルームの壁に手をついて、首を横に振る。


シャワーを終えてバスタオルを纏う。

ベッドルームに向かうと、未来が先にベッドの端に座っていた。


白く透き通るような素肌に、同じようにバスタオルを一枚だけ纏って。


部屋の隅には、未来の濡れたブラウスとスカートが干され、雫がぽつぽつと垂れていた。


悠吾は、そのまま未来の隣に座った。


「……寒く、ないか」


未来は無言で頷いた。

そして、ゆっくりとこちらを見てくる。


淡い瞳が、自分を見上げてくる。

未来の手が、膝に置かれた自分の手の上に重なる。


悠吾はそっと未来の肩に手をやると、そのままベッドに仰向けに寝かせた。


まさか、こんな形で、彼女を抱くことになるなんて。


自分の眼鏡を片手で外しながら、そんなことを思った。

どこか自分がここにいないような、不思議な心地だった。


彼女の纏っていたバスタオルをそっと捲る。

白い素肌が、顕になる。


ひんやりとした空気で、未来はわずかに身体を震わせた。


未来が少しだけ顔を背ける。

その首筋に、わずかに紅い痕があるのを見つけた。


悠吾は思い出した。あの時の、資料室での出来事。


堪えるように、唇を噛んだ。


未来も、悠吾の視線に気づいてはっとする。


未来の震える唇が開く。


「……雨宮さん、お願い。私に、あの人を、忘れさせて……」


そう瞳を濡らして、未来は手を伸ばしながら懇願してくる。


——くそ!


悠吾は未来の首筋の紅い痕に、食らいついた。


傷つかないように。でも、軽く歯を立てて。


「——あ!」


未来の小さな悲鳴が上がる。


紅い痕を覆うように、未来の素肌に悠吾の歯形が残る。



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