時空の三連星 第2章 第3話
《時空の三連星》
第2章
第3話:思念体の覚醒、喜びの闘争へ
ここで、世界の裏側に隠された、
ひとつの絶対的な理を明かさねばならない。
現世の人間である正妃・シズの体内に宿る、アオイとハル。
この二人の本体(肉体)は、
今この瞬間も、それぞれが元いた固有の時空に存在している。
彼女たちは、各々の時空において、
現世とは異なる境遇の「肉体」という名の殻を持ち、
そこでの人生をそれぞれに謳歌しているのだ。
アオイはアオイの、ハルはハルの時空で、今も生きている。
――「パラレルワールド(並行世界)ですが何か?」と、
世界の境界線をあざ笑うかのように。
ただ、ハルに関して言えば、現世における三歳からの孤独、
そして自室での異様な解析の日々があったため、
他の時空での自分が「本当に人生を謳歌できているか」については、
いささか微妙な、揺らぎの中にあったのだが。
いずれにせよ、今この世界(現世)に顕現している彼女たちは、
シズの幼少期のあのあまりにも強烈な「祈りと執念」によって
引き寄せられ、幽体分離の形で時空を渡ってきた、
極限まで純化された『思念体』に他ならなかった。
◇
自室の結界の中で、ハルとアオイの魂が火花を散らす。
それは、現世の肉体の檻を置き去りにした、
精神の最奥における狂気的な鍛錬だった。
アオイが課す凄絶な高負荷を、
ハルはその怪物じみた解析能力で瞬時に分解し、己の力へと変えていく。
その驚異的な成長速度は、教える側であるアオイの魂をも震わせ、
アオイ自身の精神能力をさらなる高みへと押し上げる、
至高の「レベル上げ」の連鎖を生み出していた。
そして、二人の思念が一点の曇りもなく完全に融合を果たした、
その瞬間のことだった。
パキィン、と、精神世界の虚空硝子が割れるような音が響く。
二人の思念が、ただの「幽体」という枠を遥かに超越した、
次元の壁を物理的に突破し得る異能――『思念動体』へと、
完全な昇華を遂げたのだ。
思念動体となった二人の意識は、時空の隙間を一瞬で駆け抜け、
現世の人間である長姉、シズの最奥へと、
吸い寄せられるように帰還し、完全なる融合を果たした。
◇
「――よく戻りました、私の可愛い妹たち」
シズの精神領域の玉座で、正妃は優しく二人を抱擁する。
シズの生身の肉体を媒介とし、アオイという完璧な従者の武闘、
そしてハルという怪物のごとき解析結界の頭脳。
三つの星が、一つの肉体の中に揃った。
これこそが、時空を超えて結集した無敵の陣形――《時空の三連星》。
すべての戦力は整った。
あとは、唯一無二の主であり、
この現世において医師として潜伏している王、駿との、
胸が引き裂かれるほどの切望と執念の再会を果たすのみ。
その先に待つのは、王の元へと集う姉妹たちの、
歓喜に満ちた運命の激突。
時空そのものを揺るがす「喜びの闘争」への秒読みは、
もう誰にも止めることはできない。
(第4話へ続く)




