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氷の王女様の正体は皇太子様への恋に限界化した乙女でした  作者: みかん
第二章

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9/17

再会の日


レオ・アストレアが正式に王城へ到着する日。

朝、以前レオが来た以来ぶりのルヴェリア王国の王城は早くから慌ただしかった。


使用人たちが廊下を行き交い、騎士たちも普段以上に緊張感を漂わせている。


敵国の第一皇子。

未来の王配候補。

半年間、王城へ滞在する重要人物。


警戒も歓迎も、どちらも必要だった。

そしてその中心にいるはずのアリアは——


「……ルエナ」


「はい」


「逃げては駄目かしら」


「駄目です」

即答だった。

アリアは鏡台へ突っ伏した。


「まだ何も始まっていないのだけれど、既に心臓が苦しいわ……」


「自業自得ですね」


「冷たくない?」


「そんなことございません」

ルエナは慣れた手つきで、アリアの銀髪を整えていく。

今日のアリアは、淡い青銀色のドレスを纏っていた。


雪を思わせる繊細な刺繍。

色白のアリアによく似合っていた。


「……変ではないかしら」


「またですか、それ」


「だって……半年も滞在するのよ?」

アリアは不安げに鏡を見る。


半年。

その言葉を思い出すたび、胸が妙にざわついた。


婚約者。

けれど、まだ完全に決まった関係ではない。

この半年で、すべてが変わる可能性だってある。


レオが、“やはりルヴェリアの王女など必要ない”と判断するかもしれない。

逆に、こちら側が婚約を白紙にする可能性もある。


そう考えるたび、なぜか胸の奥が少し痛んだ。


「アリア様」


ルエナがふと、優しく声をかける。


「そんな顔をしなくても大丈夫ですよ」


「……どんな顔をしているの、わたくし」


「捨てられた子犬みたいな顔です」


「そんな顔はしていないわ」


「してます」


アリアはむっとする。

だがその時。

遠くから、城門が開く重々しい音が響いた。


続いて聞こえる、騎士たちの声。


「……来たようですね」


ルエナが窓の外を見る。


アリアの心臓が、どくん、と大きく跳ねた。

この症状は、、まさかね。


「……」


落ち着きなさい。

深呼吸。

いつものように。


感情を見せず、完璧に振る舞うの。


そう言い聞かせながら、アリアは静かに立ち上がる。


背筋を伸ばし、表情を整える。


——けれど。

階段を下り、王城の正門へ向かう間も。


心臓だけは、まるで落ち着く気配がなかった。

やがて、大きな扉が開かれる。

白銀の雪景色の中。


黒馬に乗った青年が、ゆっくりと王城へ入ってきた。


漆黒の髪。

冬空の下でも際立つ金色の瞳。


長い厚手のマントのようなコートを纏ったその姿は、まるで物語から抜け出してきた王子そのものだった。


馬を降りたレオは、真っ直ぐアリアを見つめると——

ふわりと、穏やかに微笑んだ。


「本日からよろしくお願いいたします、アリア王女」

「——っ」


どくん。

たったそれだけで、アリアの心臓がまた大きく跳ねる。


(やっぱり無理だわ……)

一ヶ月ぶりの彼の微笑みを見るだけで胸が騒ぐ。


これから半年。

本当に平静でいられるのだろうか。


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