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雪を蹴り上げながら、レオは森の奥へ駆ける。
刺客との距離は徐々に縮まっていた。
後方ではアルヴィンたちも追っている。
(速い)
アルヴィンは驚いていた。
まるで獲物を追う獣のような速度で雪道を駆けていく。
普通なら足を取られる地面だ。
だがレオには一切関係なさそうだ。
「これまでとは。戦場では容赦ないと聞いたがさすがだ」
「皇子というよりも軍人だな」
と誰かがひそひそ話していた。
その通りだった。
前方にいる刺客の一人が振り返る。
そしてレオに向けて短剣を一直線に投げた。
喉元を狙った一撃。
キィン!
レオが腰の剣を抜いた瞬間には、短剣は弾き飛ばされていた。
後ろからではその素早い動きが見えなかった。
騎士たちが息を呑む。
レオが自分たちの敵ならばとても恐ろしいと感じた。
刺客も動揺し、足が僅かに鈍る。
その隙に、レオが一気に距離を詰めを押し倒した。
さらに体勢を崩された男は、そのまま雪の上へ叩きつけられる。
「ぐっ……!」
レオの剣先が喉元へ向く。
完全に制圧された。
しかし、もう一人の刺客が動いた。
仲間を見捨てるように方向を変え、森の奥へ逃げる。
レオが追おうとした瞬間。
別方向からアルヴィンが飛び出した。
「そちらは任せてください!」
雪を蹴るように走るアルヴィン。
若き侯爵もまた、王国屈指の剣士だった。
逃げる刺客との距離が縮まる。
あと少しで、捕らえられる。
そう思った瞬間だった。
ヒュッとまた嫌な風切り音。
アルヴィンの顔色が変わる。
「伏せろ!!」
刺客が振り返るが遅かった。
一本の矢が、正確に刺客の胸を貫いた。
「なっ……!?」
騎士たちが凍りつく。
刺客は二、三歩よろめき、そのまま雪の上へ崩れ落ちた。
即死だった。
アルヴィンは即座に周囲を警戒する。
木々の上、森の奥、雪の斜面。
誰もいない。
射手の姿はどこにもなかった。
遅れて到着したレオも足を止める。
雪の上に倒れた刺客。
胸に突き立つ矢。
その矢を見て、レオの目が細められた。
「……口封じか」
その言葉を聞いたアルヴィンが顔を上げる。
「やはり背後に誰か?」
レオは頷いた。
「生きて捕らえられれば、何か聞き出せたはずだ」
それを許さなかった者がいる。
後方から騎士の声が響く。
「レオ皇子が捕らえた、こちらも捕らえました!」
レオが制圧したもう一人の刺客だった。
縄で拘束されている。
刺客は笑っていた。
「何がおかしい」
アルヴィンが問う。
すると男は血の混じった笑みを浮かべながら話す。
「お前たちは何も知らない、俺を捕まえても無駄さ」
「……」
森に静寂が落ちる。
「どういう意味だ」
アルヴィンが詰め寄るが、男は答えない。
ただ不気味に笑うだけだった。
レオはその様子を見つめる。
今回の襲撃と口封じ。
さらに、この男の言葉。
単なる賊ではない。
きっと誰かが裏で動いている。
それだけは確かだった。




