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氷の王女様の正体は皇太子様への恋に限界化した乙女でした  作者: みかん
第四章

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21/22

襲撃


歓迎舞踏会から三日が過ぎた。

レオは王都郊外にある騎士団訓練場を訪れていた。


ルヴェリア王国の騎士たちがどのように鍛錬を行っているのか、自ら見学を希望したのだ。

一緒に同行しているのはアルヴィン。


訓練場を見渡しながらアルヴィンが言う。

「本当に熱心ですね。普通なら、こうした視察は形式的なものになりがちですが」


レオは小さく笑いながら言う。

「気になるのです」


「何がですか?」


「国を守る者たちを知ることは、その国を知ることでもありますから」

アルヴィンは少しだけ目を見開きなるほどと答えた。


訓練場では模擬戦が行われていた。

剣戟の音。

飛び交う掛け声。

雪を踏みしめる音。

騎士たちの動きを見つめるレオの表情は真剣そのものだった。


「どう思われますか?」

騎士団長が尋ねる。


レオは少し考えた後、答えた。


「非常に練度が高いですね」


騎士団長が嬉しそうに笑う。


だが次の言葉で表情が変わった。


「ただ」


「ただ?」


「第三隊と第五隊の連携に僅かな隙があります」

その場が静まり返った。


レオは淡々と続ける。

「先程の模擬戦でも、左側面が二度空いていました」


騎士団長が思わずアルヴィンを見る。

アルヴィンも驚いていた。

確かにその通りだった。


だが普通は一度見ただけで気付けない。


「さすがですな」

騎士団長が苦笑する。


レオは首を振った。

「職業病のようなものです」


その返答に周囲から小さな笑いが漏れた。

視察を終える頃には、日も傾き始めていた。


帰り道。

雪の残る森道を馬車が進んでいた。

馬車の中にはレオとアルヴィン。

護衛騎士たちが周囲を固めている。


「本日はありがとうございました」

アルヴィンが言う。


「こちらこそ。とても有意義な時間でした」

レオも微笑む。

穏やかな空気だった。


その時。


ふと、レオの視線が窓の外へ向いた。


「止まってください」

今までになく低い声だった。


アルヴィンが顔を上げる。

「どうかしましたか?」


返事はない。

レオは窓の外を見つめている。

金色の瞳が細められた。


次の瞬間。


ヒュン―――!!

鋭い風切り音。


ドガァン!!

馬車の扉へ一本の矢が突き刺さった。

木片が飛び散り、馬が嘶いた。

馬車が大きく揺れる。


「敵襲!!」

護衛騎士が叫ぶ。


一瞬で緊張が走った。

騎士たちが剣を抜く。

周囲を警戒する声が飛び交う。


アルヴィンも反射的に腰の剣へ手を掛けた。


その隣で、レオだけが異様なほど落ち着いていた。


「レオ皇子、馬車から出ないでください!」

護衛騎士が叫ぶ。


しかし、レオは既に馬車の扉へ手を掛けていた。


「レオ皇子!?」

アルヴィンが思わず声を上げる。


だがレオは振り返らず、静かに外へ出る。

冷たい風が吹き付けた。

雪の積もる森。

騎士たちが周囲を警戒している。


その中で、レオは真っ直ぐある方向を見ていた。


「右前方」と一言。


アルヴィンが目を凝らすが、何も見えない。


「二人」

その言葉に護衛騎士たちが息を呑んだ。


どこだ。


そう思った瞬間。

森の奥で枝が揺れる。


「っ!」


本当にいた。

黒い軍服を纏った人影が二つ。


レオは雪を蹴ってその影の方へ走り出す。


「レオ皇子!!」

制止の声を置き去りにして、黒髪の皇子は一直線に森へ駆け出す。

その速度にアルヴィンの目が見開かれた。

想像以上の速さだった。


「護衛は私が率いる、追うぞ!」

アルヴィンも剣を抜く。

騎士たちが一斉に駆け出した。


雪を巻き上げながら、逃げる刺客。

追う皇子、そして騎士たち。


静かな森は一瞬で戦場へ変わった。


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