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氷の王女様の正体は皇太子様への恋に限界化した乙女でした  作者: みかん
第三章

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初ダンス


レオに促され、アリアは大広間の中央へ視線を向ける。

ちょうど楽団の演奏が切り替わったところだった。

優雅な旋律が流れ始める。


すると周囲の貴族たちも気付き始めた。


「あれは……」

「王女殿下と皇子殿下?」

ざわり、と空気が揺れる。


歓迎舞踏会。

そして婚約者同士。

当然と言えば当然だ。


だが今まで二人が公の場で踊ったことは一度もない。

だからこそ、皆が見ていた。


レオはアリアの前で立ち止まる。

そして優雅に一礼した。


「一曲、お付き合いいただけますか」

まるで物語の王子様のようだった。


その姿を見た瞬間、アリアの脳裏にまた浮かぶ。

『運命の糸』の挿絵。

主人公の皇子がヒロインへ手を差し伸べる場面。


(これは、、似ているわ!!!嬉泣)


いえ、本人の方が格好良い気がする。

そこまで考えていたアリアは、慌てて思考を振り払った。

一体何を考えているのだ。


「アリア王女?」

レオが不思議そうに首を傾げる。


「何もござません、失礼しました」

アリアはそっと手を差し出す。


「喜んで」

その返事に、レオは小さく微笑んだ。


二人が踊り始めた瞬間。

大広間の視線が一斉に集まった。

アリアは慣れている。

王女として注目されることなど日常だ。


でも今日はいつもと違った。

近い、とにかく近い。

ダンスなのだから当然なのだが、今までこんなに近くでレオの顔見たことない。

声も近いし、香りまで漂ってくる。

とにかく、外面の平然を保ち、無事にダンスを終えた。


「お上手ですね」

レオが言った。


「幼い頃から習っておりますので」

「それでも見事です」

また自然に褒める。


この人は本当に危険だ。

アリアは平静を装ったまま答える。


「レオ皇子こそ、とてもお上手ですね」

アリアが口を開いた。


「ありがとうございます」


「舞踏会にも慣れていらっしゃるのですね」

何気ない一言だった。


だがレオは少し考えるように目を伏せる。

「とんでもない。慣れていません」


「そうなのですか?」


レオは苦笑しながら話す。


「ええ、どちらかと言えば、軍を率いている時間の方が長いので」

それは少し意外だった。


アリアの中では、レオは何でも完璧にこなす人物という印象だったからだ。


「ですが」

そこでレオは小さく微笑む。


「今日ほど緊張したことはありません」


アリアの思考が止まった。


「今日は王女殿下との初めてのダンスですから」


アリアの心臓が大きく鳴る。

そんなの反則だ。


「そうですか」

そう返すのがやっとでもうこれ以上、ここにいるとバレそうだと感じるアリア。


(無理でしょう……)


今すぐルエナを呼びたい。

だが、呼んだところでどうにもならないことくらい分かっている。

できることなら代わってほしい。

だが残念ながら、王女の代役は存在しない。


会場の反対側では。

ヴァルディア侯爵が静かにその様子を眺めていた。


仲睦まじく踊る二人。

周囲から見れば、とてもお似合いだった。


だからこそ。

侯爵は小さく目を細める。


「これは思ったより厄介ですな」


レオは有能で、民の評判も上がり始めている。

そして何より。

アリア王女の視線が、少しずつ変わり始めているように見える。

老侯爵は静かにグラスを傾けた。


「さて」


その目が細くなる。


「こちらも急がねばなりませんかな」



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