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氷の王女様の正体は皇太子様への恋に限界化した乙女でした  作者: みかん
第三章

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18/22

嫉妬


歓迎舞踏会は続いていた。

レオが反対派貴族の質問を見事に切り返したことで、会場の空気は少し変わっていた。


先ほどまで様子を窺っていた者たちも、今では興味深そうにレオへ視線を向けている。


そして——

当然ながら。若い令嬢たちも。


「レオ皇子殿下」


「先ほどのお話、とても感銘を受けましたわ」


「ぜひレオ皇子の帝国のお話も聞かせていただきたいです」


気付けば数人の令嬢たちがレオを囲んでいた。

皆、美しく着飾っている。


レオはいつも通り穏やかに応じていた。


「ありがとうございます」

「アストレアにも美しい場所は多くありますよ」


優しい笑顔。

柔らかな声。

誰に対しても丁寧な態度。

令嬢たちはうっとりしている。


そして少し離れた場所では。


「……」


アリアが無言になっていた。


「アリア様?」ルエナが呼ぶ。


返事がない。


「アリア様?」


「聞こえているわ」

聞こえてはいたらしい。


だが視線はずっと同じ方向だった。

もちろん、レオの方。


「楽しそうね」

ぽつり。


「はい?」

ルエナは聞き返した。


「だから」

アリアはワイングラスへ視線を落とす。


「楽しそうだと思っただけよ」


「誰がですか?」


「レオ皇子が」

ルエナはすぐ理解した。



一方その頃。


「皇子殿下は婚約者である王女殿下をどう思われているのですか?」

令嬢の一人が大胆な質問をした。


周囲も興味津々だ。

レオは少しだけ考える。


「尊敬しており、とても聡明な方です」

そう答えた。


令嬢たちは少し残念そうな顔をした。

もっと嫌な話を期待していたのだろうか。


その会話の一部は。

しっかりアリアにも聞こえていた。


尊敬


その言葉が引っ掛かる。

婚約者なのだから当然なのかもしれない。

それなのに、なぜだろうか。


胸の奥が少しだけもやもやした。


「……」


アリアは視線を逸らした。


何もおかしくない。

婚約は国同士のためのものだ。


レオが誰と話そうと自由だし、令嬢たちに囲まれようと関係ない。

関係ないはずなのに。

面白くなかった。


「アリア様」

隣でルエナがにこにこしている。


「なにかしら」

「嫉妬ですか?」

「違うわ」


「ではなぜレオ皇子を何度も見ているんですか?」


「見ていないわ」

「見ていました」

「見ていない」

「見ていました」


「……」

黙るアリア。


これは完全に嫉妬であるとルエナは確信した。

アリア本人だけが気付いていない。


その時だった。


「アリア王女」

聞き慣れた声で呼ばれた。


振り返ると、そこにはレオが立っていた。

いつの間に令嬢たちの輪を抜けてきたのだろう。


「少しお時間をいただいても?」

アリアは瞬きをする。


「わたくしに?」

「婚約者ですから」

さらりと言われた。


どくん、また心臓が跳ねる。

少し前まで胸の中にあった、あのもやもやが、嘘みたいに消えている。


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