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氷の王女様の正体は皇太子様への恋に限界化した乙女でした  作者: みかん
第二章

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王都視察の日


アリアが自分の恋心を自覚してから後日。


「王都の視察でしょうか?」

朝の謁見の間で、アリアは珍しく聞き返した。


国王は玉座に腰掛けたまま頷く。

「そうだ。レオ皇子は半年間この国へ滞在する。王都を知ってもらう意味でも必要なことだろう」

至極もっともな理由だった。


「以前も伝えたが、案内役はお前が務めなさい」

その一言で、アリアの思考が止まるが返事はしっかりする。


「はい」


「婚約者なのだから当然だろう」


当然。

その言葉が最近やたら重い。

アリアはなんとか表情を保った。


「承知いたしました」


だが、、、後ろに控えていたルエナは知っている。


アリアの内心が今、盛大に悲鳴を上げていることを…!!


---


そして当日。

王都の中央広場。

雪は止んでいたが、吐く息は白い。


アリアはレオの隣を歩いていた。

正確には、歩いてはいる状態。

ただし距離は少し離れている。


「アリア王女」

「なんでしょう」

「寒くありませんか」

「問題ありません」


即答。

会話終了。


レオは少しだけ困ったように笑った。

ここ数日ずっとこうだ。

アリアは丁寧だ。

礼儀正しい。


しかし、妙に距離がある。

前回の件も含め、嫌われているとまでは思わない。

けれど壁を感じる。


そんなことを考えているとは知らず、アリアは必死だった。


(無理無理無理無理……)


二人で王都を歩く。

それだけで心臓がうるさい。

しかも今日はたくさんの人目もある。

婚約者同士として見られている。


それを意識すると余計に落ち着かない。


「こちらが中央市場です」

なんとか説明を続ける。


王女として、案内役として。

一つ一つ、丁寧に。

すると市場の人々も二人に気づき始めた。


「王女様だ」

「隣はこないだから来てる皇子か?」

「随分若いな」


小さなざわめきが広がる。

その時だった。

市場の端から、小さな泣き声が聞こえた。


「お母さーん!」


五歳ほどの男の子だった。

人混みに押され、親とはぐれたらしい。

涙目で辺りを見回している。


だが周囲の大人たちは忙しく、なかなか誰も声をかけない。

アリアが足を止める。


その横で、レオは迷うことなくしゃがみ込んだ。


「どうしたんだ?」

子どもと目線を合わせる。

声も優しい。

男の子はぐすぐす泣きながら事情を説明した。

レオは最後まで聞き終えると、ぽん、と頭を撫でる。


「大丈夫だ」

不思議と安心させる声だった。


「一緒に探そう」

男の子がこくりと頷く。


その様子を見ながら、アリアは少し驚いていた。

皇子が自ら動くのか。

騎士に任せてもよかったはずだ。

だがレオは当然のように手を引き、人混みの中へ入っていく。


やがて十分ほどして。


「あっ!」

遠くから女性の声が響いた。

母親だった。


泣きながら駆け寄り、息子を強く抱きしめる。

周囲から安堵の声が漏れた。


「ありがとうございました!」


何度も頭を下げる母親へ。

レオは穏やかに微笑む。


「無事で何よりです」


それだけだった。

恩着せがましさもなく、誇る様子もない。

まるで当たり前のことをしただけのように。


その光景を見ていた市場の人々の空気が少し変わった。


「優しい方なんだな」

「噂と違うじゃないか」

「敵国の皇子だと思っていたが……」


そんな声が聞こえてくる。

アリアもまた、黙ってレオを見つめていた。


すると。

「アリア王女?」

レオがこちらを見る。


金色の瞳と目が合う。


「……なんでしょう」


「先程から見つめられている気がするのですが」とニコニコした眼差しで言ってきた。


「見ていません」と反射的に返してしまった。


レオは一瞬きょとんとした後、ふっと笑った。

まるで、全てお見通しだと言わんばかりに。


その笑顔を見た瞬間。

アリアの心臓は再び大きく跳ねる。

(だから、その笑顔は反則なのよ……)


もちろん、そんな本音を口にできるはずもなかった。


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