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氷の王女様の正体は皇太子様への恋に限界化した乙女でした  作者: みかん
第二章

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自覚??


その夜。


アリアは、自室でぼんやりと窓の外を見つめていた。

あいかわらず、雪が降っている。

静かな夜だった。


なのに、自分の胸の内だけが妙に騒がしい。


「……」


脳裏に浮かぶのは、今日の出来事ばかりだった。

吹雪の中、荷車を持ち上げていたレオ。

困っていた親子へ自然に手を差し伸べる姿。


雪まみれになりながらも、まるで当然のように人を助ける姿。

今まで耳にしていた“冷酷な皇子”という噂とは、まるで違っていた。


そして、、

ルエナから聞かされた、あの時の反応も忘れられない。

レオが少し驚いたような顔だったと。


どくん、と胸が鳴る。


「……っ」

アリアは慌てて胸元を押さえた。


おかしい。

最近ずっとこうだ。何かの病気にでもかかったのか。


レオのことを考えるだけで落ち着かない。

目が合うと心臓が跳ねる。

声を聞くと意識してしまう。


しかも、今日は彼が無事に戻ってきたことに安心している自分までいた。


(どうして……)


わからない。


わからないけれど、この感情には覚えがあった。

アリアははっとしたように顔を上げると、寝台脇に積まれていたいつもの本へ手を伸ばした。


『運命の糸』


最近ずっと読んでいる恋愛小説。


ぱらぱらとページを捲る。

そして、ある一文で指が止まった。


『気づけばその人のことばかり考えてしまう』


どくん。


『無事でいてほしいと願ってしまう』


どくん。


『目が合うだけで胸が高鳴る』


「…………」


アリアは静かに本を閉じた。


沈黙。


数秒。


そして。


「……ルエナ」


「はい」


すぐ近くから返事が返ってくる。

夜の支度をしていたルエナが、不思議そうにこちらを見た。


アリアは恐ろしく真面目な顔をしていた。


「……わたくし、多分」


「はい」


「レオ皇子のことを考えると、胸が苦しいの」


「はい」


「声を聞くと落ち着かないし、目が合うと駄目で、無事か気になってしまって……」


「はい」


「これ、本によると」

アリアはそこで一度言葉を止める。

そして、ものすごく深刻そうな顔で告げた。


「——恋らしいのだけれど」

「今さらですか!?」

ルエナの盛大なツッコミが部屋に響いた。


アリアがびくっと肩を揺らす。


「や、やっぱりそうなの……!?」


「むしろ今まで気づいてなかったんですか!?」


「だって経験がないもの!!」


アリアは半ば涙目だった。

「こんなに落ち着かなくなるなんて知らなかったのよ……!」


ルエナは思わず額を押さえる。

ここまで恋愛耐性がないとは。


だが、アリアは本気で混乱しているらしい。


「本には、“好きな相手には優しくしたくなる”って書いてあったわ……」


「はい」


「なのにわたくし、レオ皇子に冷たくしてしまっているのだけれど……」


「国王様のお教えもございますし……、

それに、あまりにも意識しすぎておられるゆえでしょう」


「……なるほど」


アリアは真剣に頷いた。

ルエナの見解に納得してしまった。


「どうしましょう……」


ぽつり、と。

珍しく弱々しい声が零れる。


「半年後には、婚約自体なくなるかもしれないのに」


その言葉に、ルエナは少しだけ目を細めた。

先程までの慌てぶりとは違う。


今のアリアの声は、どこか不安そうだった。

アリアはぎゅっと『運命の糸』を抱きしめる。

今日知ったばかりだった。


自分がレオ・アストレアに恋をしていることを。

そして同時に知ってしまった。


恋とは、幸せなだけの感情ではないのだと。

胸が温かくなるほど嬉しいのに。

同じくらい、不安で苦しい。


——半年後。


もしこの婚約がなくなってしまったら。

その時、自分はどうなるのだろう。


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