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十一月、君と向き合う

 

「えーと、『おりの中に入っているもの。さて、あなたは動物以外で何を想像しますか?』だって。なんだと思う?」

「ええ?奈々いきなりどうしたの。……己の欲望、とか?」

「これは心理テストみたいなやつー」

「ていうか檻の中って寒そう。それより今私が寒い」

「それ今のほのちゃんの感情入っちゃってるって。もう十一月だもんねぇ。えっと結果は、『檻の中にあなたがイメージしたものは今あなたが抑圧されているものです。』…ほのちゃん、欲望を押さえつけてるんだね…」

「ソノトオリデス」


 そっか、もう十一月か。奈々の投下した爆弾(not物理)で、文化祭で蓮と仲良さげだったあの女の子は彼女じゃないのかも疑惑が生まれた。


 でも、腕組んでるの見てたよ!って本人には言いにくいし、彼女だよってその決定的な一言を言われたら、それこそ本当に蓮と話せなくなってしまう気がして、どうしても聞けない。ううん、聞きたくない、の方が正しいかも。



「寒いからロッカーからマフラー取ってくる。膝にかけたい」

「いってら〜」


 廊下に出ると教室より空気が冷たくてぶるっと体が震える。寒い寒い。体を縮こまらせて下を見ていたせいで、前から歩いてる男子に気が付かなくてぶつかってしまった。


「わ!」

「わっ、ごめんなさい」

「大丈夫大丈夫、俺もちゃんと前見て歩いてなかったし。って…ホノカチャン?」


 あれ知り合いかな。そう思って顔をじっと見る。あ、


「な…ふふふんくん!あいや違って」


 すんでのところで出てこなかった。頑張れ私の脳みそ。そんなに容量はいっぱいじゃないはず。思い出せ思い出せ。ファミレスにいた、えーと、


「夏沢くん!だ!」

「正解です…一回、なふふふんくんって言わなかった?」

「それは空耳だと思う。私記憶力良い方だし」

「俺名乗ったことないから名前知らなくても当然だよ笑」

「あ、そうだったっけ…私てっきり自己紹介したとばっかり思ってた」

「記憶力とは」


「いやー、ホノカチャンが見かけによらずこんな面白い子だとは思わなかったわ、さすが蓮のオキニ」

「え、なにそれ」

「え?見るからにそうじゃん。気づいてなかったの?」

「全く、これっぽっちも、1ミリも」


「ええ〜?好きな子でもなきゃ、わざわざバイト終わりまで待って家まで送らないって」


「……で、でも蓮彼女いるでしょ?」

「彼女?いないはずだよ。…あ、ひょっとしてなんか見た?」

「…うん。女の子と腕組んでるとこをちょっと」

「それって文化祭で?」

「よく分かったね。うん、そう。お化け屋敷の中で見ちゃった」

「あー、そういうことかぁ。うんうん。いや、ホノカチャンは悪くない。うん。悪いのはあのバカ蓮だ」


 夏沢くんは1人でうんうん頷いて、何か納得してるみたいだけど私は全然理解できてない。ちょっと待って私をおいていかないで。



「その女子、多分蓮の姉ちゃん」



「…え?」

「蓮の姉ちゃん── あんさんは、俺らの一歳年上で近くにある女子校に通ってる。こないだ文化祭に遊びに来てて、嫌がる蓮をむりやりお化け屋敷に付き合わせてた。蓮は歳が近いせいで、小さい時から杏さんのおもち…遊び相手にされてたから頭が上がらないんだよ」


 うそ…。

 まだ信じられない私に夏沢くんが追い討ちをかけてくる。



「……その時も腕を組んでたっていうよりかは女の子側が腕を絡めて、蓮はどっちかっていうと引き摺られてる感じじゃなかった?蓮の口調もどっちかっていうと冷たい感じで」



 確かに、そうだったかも。逆にそれが付き合いの長さを感じさせられて、悲しかったんだけど…



「ちゃんと蓮と話した方がいいと思うよ、あいつ、ホノカチャンが最近そっけなくてなんかしちゃったかもって、落ち込んでたから」



 そう言って、夏沢くんは歩き出していった。



 ────ちゃんと話さないと。蓮に、謝らなきゃ。




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