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十月、君を待つ

 文化祭の一件以来、私はうまく蓮の目を見て会話することができなくなった。それでも変わらず蓮は話しかけてくれるけど、ついつい心に鎧を纏って顔を強張らせてしまう。


 にこやかに話しかけられるたびに、私に笑顔を向けてくれるたびに、勘違いしかけて浮き足立つ心を、グッと奥に押しやる。彼女いるくせになぁ…。まだ痛い。



 ────ドキドキするな、ばか。



 ***


「最近、なんかあった?」

 学校からの帰り道、奈々が心配そうに私に問いかける。


「え…どうして?私、様子変?」

「んーなんか最近表情がかたいっていうか…最初は気のせいかなーって思ったんだけど、やっぱ違うなって」


 すごいな、奈々は…気づいちゃうんだ。


「あ、言いづらかったら無理に聞き出すつもりはないから!ただ、悩んでるならいつでも話聞くよって言いたくて」


 言葉の端々から私を思いやる気持ちを感じられて、まるでふかふかのブランケットに優しく包み込まれたような気分がして胸があったかくなる。


「じゃあ…聞いて、くれる?」

「うん。…あそこの公園ちょっと寄ろっか」


 2人で公園のベンチに腰掛ける。平日の夕方は休日にたくさんいるような小さい子や家族連れはいなくて、なんだかいつもと同じ公園なのに、ちょっと違く感じる。そのおかげで、私たちが異質じゃないように感じさせてくれる。


 ゆっくり深呼吸する。

 よし。



「あのね、私…  」



 ***



「そっか、そうだったんだ…蓮のこと、好きだったんだね」


「うん。………私、わたし…すごく、好きだったの」



 言葉にした途端、私の両目からぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。



「あれ?おかしいなぁ、もう泣くつもりなんてなかったんだけど……なんでかなぁ。止まんないや…」


「もう、無理に誤魔化さなくていいよ。この際今まで思ってたこと全部ぶちまけちゃって!」



 初めて会った時から好きだった。

 笑顔が可愛いって言ってくれたこと。

 心の弱い部分を見せてくれたこと。

 髪型が似合ってるって言ってくれた。

 私の好きなミルクティーもくれて。

 家まで送ってくれたこと。

 食べたい果物のアイスの味も一緒。

 他の人と違って目立つから好きになれなかった髪の色も、キレイだって。



「なんだ私…めっちゃ好きじゃん」



 思わずふふっと声が漏れて笑っちゃう。呆れちゃうし、そんな自分がおかしくてもっと笑えてくる。

 横を見ると、私よりも号泣してる子が1人。


「ううううわーーーーん」

「奈々もなんでそんな泣いてんのぉ…」

「そんなに人を好きになれるなんて、すっ、すごく素敵だしっ…ほのちゃんが大好きだったのが伝わってきてぇ、あたしまで泣けてきたぁっ…」

「もー、奈々まで泣いたら余計私も止まらないからさぁ…」



 一緒に泣いてくれる友達がいて、たくさん泣けて。


 心の傷が塞がるのも、そう時間はかからないかも。


 2人して泣いたせいで目が真っ赤だ。帰ったら目の周り冷やさないと。うーん、明日腫れちゃうかな。

 帰ろっか、とベンチから立ち上がった私と奈々。

 すると奈々が急に動きを止めて、私の顔をじっと見る。



「…っていうか、あたし思ったんだけど、その女の子ほんとに彼女なのかな」




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