一月、君を信じる
「つっつっつ、付き合い始めたの!??」
「うん。色々相談乗ってくれてありがとね」
「ええー!おめでとう!!!でも次蓮がほのちゃんを泣かせたら、あたしが許さん」
「頼もしい」
年が明けて、新しい一年が始まった。奈々に付き合い始めた報告をすると、目が飛び出そうなくらい驚いてた。いまだに私もちょっと信じられない。
「え〜いいねえ。冬休みどっか行ったの?」
「あ、一緒に初詣は行ったよ」
「はー、ラブラブですこと」
自分がラブラブカップルって言われる立場になるなんて、去年の私が知ったらどう思うんだろう。ふふっと笑みが溢れる。そんな私を見て、奈々が言う。
「うん、なんかほのちゃん雰囲気柔らかくなったし、前より喜怒哀楽もはっきりしてるし、恋の力って偉大だね」
ニマニマと目尻を下げている。うう、恥ずかしい。そんな顔で見られたら私もにやけちゃう。
***
ちゃんとしたデートしよう、ということで休日に蓮と待ち合わせをして出掛けることになった。
前日からストレッチもしてパックもして最高のビジュアルの私で行けるように努力する。
自信を持って臨めるようにしたのに、蓮の姿を見たらカッコ良過ぎて、目眩がしそう。この人に敵う日なんて一生こない気がする。
「わぁ〜水族館なんて何年ぶりだろ」
「俺も小学生以来来てないかも」
「家族ではあんま来ないよね」
「わ、すごい綺麗な色の魚」
「ペンギンかわい」
2人で薄暗い水族館の中を歩く。な、なんか距離が近い。肩が触れてて腕も少し当たる。これがいわゆる“コイビトノキョリカン”というものですか。
「…この後どうする?ちょうど昼の時間だよな。何食べたい?」
「…お寿司」
「やめなさい」
お寿司は却下されたので、近くのカフェに行ってパスタを食べることになった。食事を待つ間、いろんな話をする。
「そういえば、蓮はお姉さんに手下みたいに扱われてるって聞いた」
「夏沢か…。うんそう。姉ちゃん、杏って言うんだけど、年が近いせいか小さい時から俺のこと子分みたいに思ってて。しかも杏には従わないと、十倍返しされるからすっげぇ怖い」
「あははっ。弟の蓮、確かに可愛かったかも」
「そんなからかうなって。…帆乃花は?兄弟いる?」
「私は8歳上のお姉ちゃんがいる。歳が離れてるから仲は良い方かなぁ。私が学校遅刻しそうになったら、会社行く車で学校に送ってくれる」
「なにそれ羨ましい。ってか帆乃花が今まで遅刻したことないのってそれが理由か」
「あバレた」
こんな他愛もない話をしていると、あっという間に時間が過ぎていってしまう。
***
「そういえば学校のやつからなんか言われたりしてない?付き合い始めたことで。俺、一部にはいまだに噂信じられてるから」
私たちは付き合ってることを隠してはいない。聞かれたら答えるスタンスでいこうね、と話し合ったらなぜか始業式の次の日にはもうみんな知ってた。情報網こわ。なんだったんだあの話し合い。
「あー、なんか言われたよ。他クラスの女の子達に
『蓮くんって、チャラいけど大丈夫ぅ?たくさんの元カノのお古でしょお』って言われたから、目を伏しがちに斜め下の方見ながら、
『今は私にぞっこんなので…』って言った」
「やめてください。…いや合ってるけど…っ」
────「大丈夫だよ、どんなウソが出回ったって。信じてるから」
たとえば、私を見つめる目が優しいとか。私と話すときだけちょっと声のトーンがゆったりするとか。人混みの中でもすぐ見つけてくれて、私を辿る視線。
そんな些細なことでも、私のことが好きなんだって実感させてくれる。
手放しにこうやって信じられる人がいることが、すごく幸せ。




