二月、君と約束する
世間はバレンタインムード一色。街中ではバレンタインソングが流れていたり、甘い匂いがしてきたり。
学校でも女の子たちは楽しげに、なんのお菓子作ろうかなって話してるけど、男の子たちはソワソワしてる。
当然私の彼氏もソワソワだ。
「大丈夫だよ、ちゃんと蓮にあげるから」
「すっげぇ嬉しいけど食べんのもったいない」
「やめてよ冷凍保存とかしないでね」
「あ分かっちゃった?」
「もーう、これから毎年あげるんだから」
「……最近帆乃花が俺よりイケメンになってきてつらい…」
そんな困ったような目を向けられても…せっかくなら美味しいうちに食べてほしいし。
「はーい、そこイチャイチャしなーい。…ほのちゃん、あたし達は友チョコ交換しようね♡」
「もちろん!」
「何作ろっかなー今年」
「チョコ、スコーン、クッキー、マフィン、ガトーショコラとか…いっぱいありすぎて迷っちゃうね」
「…えこれ俺聞いて良いやつ?」
「いいよ〜今味見するわけじゃないし」
放課後残って蓮と一緒に帰るために時間を潰してたら、奈々が塾まで時間が空いてるらしくおしゃべり相手になってくれていた。そしたらあっという間に時間が経ってちょうど蓮がクラスに迎えに来たところだ。
廊下に目をやると誰かが通りすぎるのが見えた。
「あ、夏沢」
「ほんとだ夏沢くん」
「え、夏沢くんだ………いや流れで言っちゃったけどあたし知らなかったわ」
私たちが呼びかけたのが聞こえたのか、目が合ったので教室に入ってきてくれる。
「夏沢くんお久しぶりです。その節はどうもアリガトウゴザイマシタ」
椅子に座ったまま夏沢くんにお辞儀をする。
「いえいえ、無事付き合えたみたいで良かったです。…蓮がのろけすぎてそろそろ口にきゅうり突っ込みたくなってきたけど」
蓮はきゅうり嫌いなんだ…新発見。ケンカした時のために脳内にメモっておこう。
奈々の方に顔を向けて彼を紹介する。
「こちら夏沢くん。下の名前は…存じ上げないけど、私たちの隣のクラスで、蓮の友だち。私の誤解をといてくれて、後押ししてくれた、恋のキューピッド」
「どうもーキューピッドです。下の名前はテンシです」
「あははっ、ほんとは?」
「え、テンシ。天に志すって書いて、天志」
「まじですか」
名前から既に恋の天使だったんだ…。
「菊池奈々です、帆乃花の友だちです。好きな四字熟語は焼肉定食、好きな言葉は、明日の自分は24時間後の私、です。よろしくお願いします」
「すげえ、俺仲良くなれそう」
夏沢くんが肩を揺らしてくっくっくと笑っている。
この2人、なんか良い感じかも。
***
話し込みすぎて、すっかり遅くなってしまった。蓮と2人、肩を並べて帰る。
すると、前からすれ違う、セーラー服を着た女の子が、びっくりした顔でこちらを見ている。その子も学校帰りみたいだ。
「蓮…?」
「あ、杏」
杏って、蓮のお姉さんだ。挨拶しないと。
「あ…蓮くんとお付き合いさせて頂いてます、加瀬帆乃花です。こんばんは」
「こんばんは!!!!やだ、めっちゃ可愛い。なんでこんな可愛い子がクソレンの彼女なの!??あぁでもわたし妹欲しかったからすごく嬉しい、蓮絶対アホなことしないでよ、わたし帆乃花ちゃんの味方だから、泣かしたらぶっ殺すからね」
…蓮が杏さんを恐れる理由がちょっと分かったかも…でもお付き合いを反対される訳じゃなくてむしろ喜んで(?)くれてるみたいで良かった。
「じゃあわたし先に家帰ってるから、ちゃんと帆乃花ちゃん送っていきなさいよ」
「分かってる」
杏さんは私にバイバーイと手を振って、逆方向に歩いていった。
「…なんかごめん、うるさい姉ちゃんで」
「全然。元気で楽しそう」
「俺も今度帆乃花の家族に挨拶させてね、約束」
「…うん」
家族に紹介するのって照れくさくなっちゃいそう。蓮も今こんな気持ちなのかな。
***
ちなみに、バレンタインはカップケーキをあげた。
その場で一口食べさせたので、もったいなくて全く食べてない、なんてことはない…はず。




