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【第二章開始】奥様は聖女様――契約妻になったらどういう訳か聖女にされました  作者: 赤城ハルナ/アサマ
【第一章】契約妻になったら外界が阿鼻叫喚になりました

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ヴァシリウス、毒親と嘘つきを断罪からの第一回目契約更新

ノアに会えないまま、訳の分からない面倒事を押し付けられるヴァシリウスですが、ノアは知りません。

 疑問だらけの新婚生活。


 こんなはずではなかった……可愛らしい幼な妻とキャピキャピしたかった……あんな恥ずかしいこと、こんな恥ずかしいことを毎夜したかったのに。

 俺はますます気に食わない学者『セオドリック』潰しに専念した。


(もう少しだ、もう少しでコイツは這い上がれなくなる、チームヴァシリウスが先回りしてコイツの研究をぶっ潰してやる、ワッハッハハ。モテるイケメン爆発しろ!)


 ある日絶叫が響き渡ったかと思ったら、毒親と嘘つきが奥様部屋の前で倒れていた。

 うえッ、二人とも焦げ臭いぞ。


「何があったんだ?」


「あ……ヴァシー、この扉が……わたくしを……殺そうとして……」

「助けてヴァシー……リリィ、とおっても苦しいのぉ……」

 苦しそうにうめく二人のドレスが焼け焦げている。髪の毛もチリチリだ。


 クククッ、無様だな。俺の幼な妻に接近しようとした罰だ。俺なんか死にそうになったんだぞ。


「見苦しいな、二人とも。用もないのに妻の部屋に入ろうとするからだ!」

「だ、だって、一度もわたくしに挨拶しないなんて、嫁とは言えないでしょう!」

「そうよ、あんなのただの子供だったじゃない! 何なのよアレ、女じゃないでしょ、少年!?」

「アレじゃない、俺の妻だ! 余計なことをするな、奥様部屋に近付くな、本気で死ぬぞ、殺されるぞ、これは脅しじゃないんだぞ!」

「な、なによ!」

「母親に向かって何という言い方ですの、ヴァシー!」

「うるさいっ、二人とも消えろ!」


(せっかく理想体型の可愛い娘と結婚できたんだ、毒親と嘘つきリリィに邪魔されてたまるか! しかし……このままだと誰かが死ぬ未来しか見えない……)


 奥様部屋の扉に触れた使用人が何人か倒れた。年配の使用人はもう少しで逝くところだった。


 執事のアンガスは接近禁止令を出した。





 ある夜、夜空まで上がる眩しい光が屋敷から上がった。あれだけの明るさは奥様部屋からとしか思えない。ホワイト家の屋敷ではいつの間にか奥様部屋の怪奇現象と悪魔憑きが当たり前になっていた。


(何だったんだろう?)


 連日のフィールドワークで疲れていた俺は、そのまま寝入った。奇妙な現象があったとしてもいつものことだから、最近では誰も気にしないのだ。


 ところが翌日、王室調査団がゾロゾロとわが家にやって来た。

 王室調査団だよ? 国の公式調査団だよ? 何かマズイことでも?


(帳簿は……有能な家令がちゃんと付けてるよな?)


「何か用か?」

「伯爵様の屋敷に聖女様はいらっしゃいませんか?」


 ぷっ、聖女だと。コイツら正気か?


「いないよ」

「少々調べてもよろしいでしょうか?」

「なんで?」

「真夜中に、この屋敷から、神々しくも聖なる光が発せられたのです!」

「そんな事は知らないし、聖女なんていないよ」


(光なら毎夜出ているけどな)


 そのとき食堂から走って来る複数の足音がした。

「はい、それはわたしでぇ~す!」

 どこから聞いたのか、未だに屋敷に居座るバツイチ娘が調査団の前に現れた。その後ろには縁切りしたい毒親も。


「あなたが聖女様ですか?」

「そうで〜す、です!」

 さすがは嘘つきリリィ。どこからそんな自信が出るんだろう。


 だが待てよ?

 嘘がバレればこの女は調査団から非難されるだろうし、そうなったら屋敷にはいられないだろう。


「では、あなたが聖女かどうか調べますので、お近くの寺院へいらしてください」

「ガッテン!」

「リリィ、あなたが聖女なの? だとしたら素晴らしいことだわ!」

 ふん、お花畑な毒親とリリィめ。とことん愚かな奴らだ。こんな女が俺の母親とは。


 ――俺の屋敷に聖女がいるとしたら、たぶんアレだ、契約妻で幼な妻のノア。


(面倒だから調査団には黙っておくか……)


 二日後、調査団の質問と身体検査を受けたバツイチ娘の嘘がバレ、俺と毒親が首都の王室調査室に呼ばれた。

 もはや伝説でしかない『聖女』になって、コイツはどうするつもりだったんだ。


「王室調査団の報告書です。リリィ嬢に聖女である兆候はまったくありませんでした」と、調査団長がリリィを被告席に座らせながら言った。

「そ、そんな! わたし、本当に聖女なのに……」


 だから、なぜ自分をそうだと思う? 詐欺師すぎて怖いぞ、この娘。


「あなたは王室調査団に虚偽の申告をしたのだから、大人しく罪をつぐないなさい。一週間の身柄拘束を言い渡されている」

「そ、そんなつもりじゃなかったの……」

「ヴァシー、どうしてそんな意地悪するの? リリィが可哀想でしょう? 何とかならないの?」

「母上、そういう訳にはいきません。リリィは王室調査団、つまり国に嘘をついたんですよ、騙したんですよ。俺が当主である限り俺の指示に従ってください」

「身柄拘束なんて……わたし……」

「拘束が解けたら再婚先を紹介しよう」

「ヴァシー!」

「そんな……わたくしはヴァシーをそんな冷たい人間に育てた覚えはありません!」


「うるさい、二人とも屋敷から出て行け!」


 二人を黙らせ、その後噓つきリリィは強制的にアルバス領内の引退地主ジジィの後妻にあてがい、屋敷を追放した。

 毒親は領地外の別荘に侍女と一緒に閉じ込めた。


 断罪は終わった。

 俺は晴れて自由だ!!

 あぁ、何とすがすがしいんだ、天にも昇る気持ちだ。


 思ったよりも早く二人を追い出すことができた。契約妻の影響力は偉大だ。

 問題は、二度しか会った事がない俺の契約妻――幼な妻――をどうするかだが。


(今のところお互い自由に生活できそうだし……自由は大切だ、何しろ俺には五芒星ごぼうせいに誓って遺跡発掘で天下を取るという大事な使命があるからな。心配は尽きないが……)





 契約期間は二年間だった。できればこのまましらばっくれて継続したい。新しく契約を結ぶのなら、二年間という項目だけは削らなければならない。

『書類上の形式的な夫婦』『子供は不要』も止めだ止め!

 社交は……まずは妻を奥様部屋から出さなければ。


・契約は年一回の更新、更新日は結婚記念日


 これだけでいいか。


 二年目の結婚記念日の夜、俺は光の漏れる扉の前で呼びかけた。


「契約更新……」

「了解!」

 アチラも契約更新に乗り気なようだ。


 もう契約も必要ないかな。毒親も嘘つきリリィもいなくなったから、当初の目的は達成された。あとはノアとちゃんとした夫婦になればいい。

 しかし契約更新をしなければ幼な妻に会うことができないという、切実な問題が。


 この扉が開くのは契約更新日だけなのだから。


 いい加減俺の妻が何をしているのか知ったほうがいいかもしれない。閉ざされた部屋といい、謎の発光現象といい、服や食事の拒否といい、謎が多すぎる。しかも、これまで妻は伯爵家の金を使ったことがないのだ。

 妻へのお小遣いはたまる一方だ。


 決めた。


 次の契約日までに、俺は幼な妻を奥様部屋から引きずり出す!

 どんな姑息な手段を用いてでも!!!!!

☞ショートショートでは何が『断罪』だったのか不明確だったので、ひとつのエピソードにまとめました。噓つきリリィはノアのライバルにさえなれませんでした。

☞次回、ノアに対するヴァシリウスの逆襲がはじまります。最後に勝つのはノアか? ヴァシリウスか? 二人が何の勝負をしているのか、作者も困惑しています。

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