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奥様は聖女様――契約妻になったらどういう訳か聖女にされました  作者: 赤城ハルナ
【第二章】奥様聖女ノアの旦那様職場見学

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奥様聖女ノア逃亡

ノア逃亡回です。

 身体を丸くしたたまま目を上げると、そこはわたしのお気に入りがいっぱいつまった部屋だった。


 テリア家でのわたしの部屋。

 幼くして亡くなった、お義母様の娘さんがいた部屋。そこがわたしの部屋。


「わぁ~、わたしの大好きなお花やお菓子でいっぱい!!」


 そのとき元気な足音がした。


「あっ、ノアお義姉様が引っかった!」


 ――その声は。


「テレンスちゃん!!」


「お帰りなさい。ノアがいつ帰ってきてもいいように、お部屋にはあなたの好きなものばかり集めたのよ」

「お義母様!」

「最近ノアと会えなくて寂しかったの。また一緒に首都でカフェ巡りしましょう」


(ここはノアホイホイ部屋か!)


「ノア姉様、もうどこへも行かないで!」


 この世界に来たら、可愛い弟ができたんだ。

 いつの間にか大人の男になっていたんだね。

 テレンスちゃん……お義母様……何だかゴメンね。最近テリア家に帰ってなかった。


「僕は……借金のためにあんな奴に売られた姉様が……心配で心配で」

「テレンスちゃん、仕方ないよ。侯爵家のお陰でテリア家が助かったんだし」

「分かってる……」

「お嫁さんになる人を大切にしてね。テリア家をよろしくね。わたしもときどき帰って来るし」

「……あいつは姉様を大切にしているの?」

「一応? 発掘現場へ連れてい行ってくれるし、欲しいものは買ってくれるし、そ、それに、人間椅子になって……」

「人間椅子?」

「え、えと、その話はなかったことに」


「二年間だけという契約は切れたのよね? でも、テリア家に帰らなかったということは、ちゃんとした夫婦になったの? それなら、子供はまだなのかしら?」

「子、子供?」

「……やっぱり。あなたたち、本当の夫婦ではないのね?」

「ええと……」


 それはわたしが拒んでいるからであって……だって、二十歳から十五歳にされたわたしは未だバージンだし、いきなり襲われたことは結構トラウマだったんだから!


 ハァ……どうしようかなぁ。流されてこの五年間過ごしてきたけれど……何もかも中途半端だったから、いったん実家に帰りたい。このままズルズルとヴァシリウスの妻でいるのもどうかと思う。


 特異点さえ見つかれば……。





 寺院の祈祷もせず、ホワイト家へも帰らず、テリア家でダラダラ羽を伸ばして二日過ぎたころ、大型馬車が近付く音がした。テリア家のエントランスが蜂をつついたように騒がしくなった。


「伝令が来た、ノアはここにいるのか!?」

「はっ、侯爵様! はい、義娘は屋敷にいます……いきなり帰って来たので、出張先の侯爵様にお知らせしたのですが……義娘が何かしでかしてしまいましたか?」

「しでかしたなんてものではない、到底許せない!」

「ど、どうか、穏便にお願いします、侯爵様。ノアにはちゃんと言って聞かせますので……」


 義父と……旦那様!?

 えぇっ、もう来ちゃったの?

 わたしの優雅でお気楽な里帰りはおしまい?


「ノア、テリア家にはいつでも帰っておいで。ただし、侯爵様にひと言断りを入れてからからにしなさい」

「分かりました、お義父様」

「それに、ノアは国を守る聖女になったのだから、日々のお勤めはかかせないだろう?」

「……」


 聖女にさせられたんだけど。


「帰るぞ、ノア!」

「ヴァシリウス、もしかしてさらいに来たの、拉致らちしに来たの、それとも?」

「俺を何だと思ってるんだ、迎えに来たに決まってるだろう。俺に断りなく帰省なんて許せるか!」

「あ〜、これは死にそうになったから不可抗力というか……」

「……心配したんだぞ……海岸でいなくなるから……あれからずっと捜索して……」

「そうだったの?」

「当たり前だろう!」


 そういえば、旦那様の目の下にクマが。丸眼鏡でよく分からないけれど。


「えへへ……じゃ、お願いを聞いてくれたらホワイト屋敷に戻ろうかな〜、どうしようかな〜」

「何だ、言ってみなさい」


「眼鏡を取って」


 そういえば、わたしが瞬間移動できることは、ホワイト屋敷にも寺院にも言ってなかった。


 まぁ、いいか。

☞次回からの二回は第二章のクライマックスです。オール電化の秘密と第三回契約更新です。ホワイト屋敷周辺がえらいことになります。乙女小説にあるまじき内容です、たぶん(R18ではありません、R15です)。

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