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奥様は聖女様――契約妻になったらどういう訳か聖女にされました  作者: 赤城ハルナ
【第二章】奥様聖女ノアの旦那様職場見学

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18/21

奥様聖女ノア、世紀の発見

 今回の発掘現場は南西部の海岸近くなんだそうだ。

 前回はパーティーに連れ回されただけだった。今度こそ発掘調査をするのよ!


 念のためスタンガンとライトセーバーを持って行こう。呼べば出せるけど、あまり出すとゴミになるだけだから。なるべく使い回しする。なぜならわたしはエコ人間だから。


『ボッシュート!』


 クッ、隠れイケメン悪人ヅラに没収された。

 いつでも出せるから構わないけど。


 発掘日前日はまたパーティー。うんざり。


 それよりも、新たな事実が発覚した。

 ヴァシリウス・ホワイトは変態でロリコン!





 発掘日初日は全体会議だから、わたしはお呼びじゃない。


 仕方ないので侍女と護衛とでパターゴルフ。

 でも、こんな外出用ドレスでは身動きできないわ。この世界の女性は不便だね。


 ぱっこーん!


「ゴルフは得意なんだ、実家の近くにゴルフ場があったから」

「奥様、素晴らしいお手前でございます。ところで、テリア家にゴルフ場がありましたっけ?」

「ええと、テリア家の前のことね」

「「?」」


 翌日やっと発掘調査がはじまった、待ってました!


「侯爵様、前回陶器が発見された場所を中心に発掘いたします」

 そう言ったのは、髭面の考古学博士だった。

「うむ」

「わたしも発掘したい」

「ノアは見学だ。あそこに奥様用見学席があるから座っているといい」

「ええ~っ……」


 せっかく発掘に来たのに、ぼーっとしているだけなんて。調査したい。化石を発見したい。

 コッソリ持って来たガーデニング用の小型シャベルで地面をつついてみよう。


「わたしも掘るんだ~、楽しい」

「パトロンの奥様はそんなことはしない」

「どこに化石があるのか分かればいいのよね? それなら、地中レーダー探査器召喚!」


 わたしは地下を探る地中レーダーを呼んだ。

 モニター付きの芝刈り機のようなものが現れた。海外製品だと使い方が分からないかも。


「おおっ、侯爵様の奥様は魔法使いでございますか?」

「聖女だ」

「ええと、聖……女……様??」


 作業員たちが何か噂してるけれど、まぁいいわ。


「地中解析開始!」

 わたしは地中レーダー探査器を動か……せなかった。その前にマニュアルを読まなくてはならなかった(注:マニュアル付でした)。





 わたしは宿泊先のコテージでマニュアルを読みまくった。

(日本製だったわ、助かった)


「もう寝るぞ、ノア」

「先に寝てれば」

「な、何だその言い方は!」

「わたしは忙しいの、明日、地中レーダー探査器を動かさなくちゃならないの」

「あの芝刈り機か」

「お休み〜」


「ハァ〜、俺が椅子になってやるよ」

「ついでに肩叩いてくれると嬉しいな〜」

「ハイハイ、奥様聖女様。ところでその解説書は……超古代語?」

「わたしが元いた国の言語で~す」

「まさか、ノアは寺院が召喚した超古代人だったのか?」

「そんなわけないでしょ。たまたま首都の寺院に転がっていただけだからね」

「……あとでその解説書を見せるように」

 旦那様がうしろからわたしを羽交い絞めにした。


「何だかあったか~い」

「だろ?」

「ヴァシリウスあったか~い」


 いつの間にか旦那様に包まれてウトウトしていた。





 ブイーン……!


「ここ! ここに何かある!」


 わたしはレーダーが指す場所を旦那様に告げた。


「ファーガソン、ここを掘れ」

「しかし侯爵様、奥様のような素人の方にそんな事が分かるのでしょうか?」

「ファーガソン、俺の妻は聖女だ。奥様が何かあるというのなら、あるんだ」

「聖女……様? かしこまりました、侯爵様」


(やった、化石発見のチャンス! わたしは発掘王になる!)


 わたしは小型シャベルを持ち出して地面をつついた。


「わ~い、発掘、発掘!」

「待て、ノア。貴族の奥様がそのように土を掘るものではない。ましてや君は聖女なんだ。可愛らしい手が汚れたらどうするんだ」

「あ、そうなんですか?」

「せっかくのワンピースドレスが汚れるじゃないか。それに日傘をささないと日焼けするよ。奥方たちとコテージでティータイムでもしていなさい。護衛、奥様をコテージへお連れしろ」

「はいっ!」


 ――あの人たち、話が合わないから面倒なのよね。


「侯爵様、何か光る物がありました!」

「どれどれ?」

 それは細長いクリスタルの瓶だった。

「文字がある? 超古代文字?」

「とりあえず、コテージへ持って行きましょう」


 作業員が掘り当てた瓶はどことなく見覚えがあった。


「見せて下さい」


 ナナメに縞模様が入った、緑色の細長い瓶。書いてある文字は……『ミリンダ』?

 こ、これは! 昭和レトロ、幻のミリンダの瓶? どうしてこんな物が?


「何か知っているのか、ノア。これは超古代文字だろう?」

「ええ〜っとですねぇ……『ミリンダ』と書いてあるような?」

「読めるのか!?」

「ま、まぁね……」

「すごいぞ、ノア!」

「超古代文字ってどういうことです?」

「それは……いいだろう、コテージに戻ったら説明しよう」


 まさか、ここにいた人類は、乃彩が生きていたころの人類――日本人?

 オーパーツ?

 パラレルワールド?


 ――そういえば、わたしが転移させられたレイクカフェには、昭和レトロ雑貨が飾られていた。


「大昔にはすでに精巧なガラス瓶があったということだ。世紀の大発見だ、さっそく雑誌『ヌー』で特集を組むぞ!」


(……ミリンダも転移してきたのかな? 特異点を探さなくちゃ。そしたら元いた世界に帰れるかも、大学を卒業できるかも!)


 わたしの心は揺れ動く。





 そんなこともあって、発掘調査は結構楽しかったんだけど……そのうち飽きてきました。一か所でちまちま作業するのは性に合わないのよね。

 せっかく海岸へ来たんだから散歩しようかな。アンゲル国の海岸の地形でも観察しよう。海なし県に住んでいたから、海は久しぶりだしね。


「護衛さん、わたし海岸を散歩したい」

「かしこまりました、奥様」

 わたしは現場から離れ、散歩道を歩き出した。


 久しぶりの海。

 何年ぶりかな?

 海を見ると興奮するのよね〜。

 走り出したくなっちゃうの。


 波が岩に打ち付ける音がする。

 そこは崖の上だった。


 す、すごい断崖絶壁! 東尋坊とうじんぼうよりも険しい!

 足がすくむ〜。


「その先へ行ってはいけません、奥様!」

「えっ? 崖はもっと先だけど?」

「この先は危険地帯なのです、白い岩は足場が悪いので!」


 そこは石ころだらけで不安定だったのである。


 あっ、すべる、履いている靴はヒール!


 ズルルルルッ……!


「奥様!!」


 しまったぁ、落ちる落ちる落ちるぅぅぅ〜、

 ――落ちた――


「オール電化最大!」(※ノアはこう叫ぶと移転=瞬間移動できるのである!)


 行き先を決めずわたしは瞬間移動した。

☞ノアが移転した先は……。

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