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奥様は聖女様――契約妻になったらどういう訳か聖女にされました  作者: 赤城ハルナ
【第二章】奥様聖女ノアの旦那様職場見学

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14/21

隠れイケメン悪人ヅラ

ヴァシリウスによって理由わけの分からない『聖女(?)』にさせられたノア、激おこです。(注意:中世ではなく近代的世界です、産業革命中です)

 今日もホワイト屋敷で叫ぶ。


サンダー! サンダー!】

サンダー! サンダー!】





 ――いつの間にか聖女にされていたわたし。


【頭のおかしい札束ビンタ変態クソ旦那ついでにセクハラ男】によって。


『聖女』って何?


 奥様部屋は旦那様に連れ去られたとき、籠城を解かれた。

 使用人がなだれ込んで、開けはなたれたままの扉を大理石像でロックしたのだ。

 その際何人か犠牲者が出たらしい。


 わたしは観念して電気牧柵を外し、秘密をバラしました。盛大に。


 画像の流れる特大ブラ◯ア、眩しいLEDシャンデリア、お湯の湧く電気ケトル、室温を調節するエアコン、どこからか流れる音楽、お湯の出る蛇口、自動洗浄トイレ、自動掃除機に洗濯機……。

 初めて奥様部屋を見たときのみんなの反応ときたら!


 ホワイト屋敷もオール電化になり、使用人さんたちに感謝された結果、奥様部屋を占拠された。そこは娯楽部屋になったのだ。


「奥様、聖女様、このお屋敷とても便利です!」


 そしてわたしは旦那様の隣部屋へ移動させられたのである、強制的に。


 ――わたしは『聖女』。


 という名の電気工事屋。

 ただしコードレス。

 電気? どこからくるのやら?





「約束の高級チョコレートだ。リンデンのリンドー」

「ややこしい名前だね」

「食べてごらん。ご令嬢方はこれが好きらしいから(チームヴァシリウス調べ)」


『高級(そうな箱に入っている)チョコレート』が三つぶあった。


「わたし、丸いのが好きなんだ、トリュフ的な」

「そんなチョコレートはない」

「あ、そうですか」


 もぐもぐもぐ。


「コーヒーください」

 チョコレートとコーヒー。これ、デフォね。


 う~ん、期待した味とちょっと違う。でもこの世界ではあまり食べられなかったから、まぁいいか。


「おいしかった〜ありがとう」

「どういたしまして、奥様。ところでこれを毎日なのか?」

「そだよ。これを食べるとわたしのパワーがアップするの」

「パワーアップ(嫌な予感しかしない)……」


 ヨシ、旦那様の二つ名から『札束ビンタ』を取ってやろう。


 ――しかし。


 眼鏡を取ったセクハラ旦那様が隠れイケメンだったとは!

 屋敷の廊下にある代々領主の肖像画を見たら、みんなイケメン悪人ヅラだった。





「今日はノア待望の『寺院でアフタヌーンティー(ついでにバチアタリ)』の日だ」

「わ〜い、何が出るのかな〜」

「フフフ、ごらん」

「わ〜、ラズベリーケーキにマカロンにキャラメルタルト! あっ、キュウリサンドとスコーンは要りません」

「嫌いなのか?」

「それはおやつじゃなくてランチです」

「ランチ? ま、まぁ、頂こうじゃないか」


 おいし〜。


 ヨシ、旦那様の二つ名から『クソ』を取ってやろう。





 二回目の契約更新からわたしの生活が劇的に変わった。


 寺院では白い聖女服をシスターに無理矢理着せられて、オジサン司祭たちと祈祷。

 何をお祈りすればいいのか知らないし。


「聖女様のお好きな言葉で結構でございます」

南無阿弥陀仏なむあみだぶつ……」

「聖女様、それは超古代語では?」

『聖女寺院』の司祭に言われた。

「超古代語?」

「はい。おそらくそれは太古の言葉かと」

「???」


 なんだかな~。


 そのあと旦那様と食堂で朝食。

 茶髪巻き毛青色LED丸眼鏡アラサー、ついでに頭がオカシイ人と毎朝顔を合わせるのだ。

 変態だから距離をとらないと。

 ついでに丸眼鏡を外しなさい。


「眼鏡を取らないんですか?」

「ド近眼だから、眼鏡を取るとノアが見えない」


 わたしは見えなくてもいいです、それよりもイケメン顔を拝ませて。


「ノア、遠くに座りすぎだ。奥様の定位置はココ、ココ!」

『ココ!』と言って、自分の太ももを指さす。


 やっぱり変態だ~!


「奥様じゃなくて契約妻、お飾りの妻!」

「アレは単なる覚書だ、何の効力もない。ノアはれっきとした俺の妻だ、ノア・ホワイト・オブ・アルバスだ」

「違う!」

「違わない!」

「今度あんなことしたら許さない!」

「あ、あれは……コほん! 本当の夫婦になろうと……それなら、これからゆっくり分かり合おうではないか」


 セクハラしておいて何を分かり合うというのか。


「まずはココから」

 旦那様は自分の太ももにわたしを乗せようとする。


 アレコレ忙しくなったので、『ワイルドなウィッチショップ』へ行くことが困難になってしまった。いきなり首都へ移動するわけにいかないものね。そろそろお店をベテランに託そうかな。


 のんびり映画を観たいなぁ。

 最近はどんな映画があるんだろう。


 そうです、わたしは異世界に来てしまったけれど、なぜか元の世界の配信を楽しめるので、現在の様子が分かる……はずなのだ……けれど、ドラマもアニメもニュースもあのときのまま更新されていないのよね。

 わたしがこの世界に来た時点からアチラの時間が進んでいないのか、それとも……。


 聖女騒動で忙しかったので久しぶりにテリア家に帰ったら、テレンスちゃんはすっかり大人になっていた。もう十八歳。

 男爵家を出てから三年経ったからね。

 黒髪碧眼のテレンスちゃんは、白人系だけど薄顔でかわゆいのだ。


 この世界へ転移してからすでに五年。長いようで、短いようで……。


 大学を卒業したら、地図会社や旅行会社で働いているはずだったんだけど……あのときお姉ちゃんに牛乳を買って来てって言われて……暑かったから買い物前にカフェに寄ってランチを注文して……。


 奇妙な事態に巻き込まれて、頭のおかしい変態契約旦那様に襲われたら、隠れイケメンだった←イマココ。





 そもそも、なぜわたしが聖女に認定されたのか。中世でもない産業革命世界の『聖女』とは?


 旦那様が分捕った国の補助金で建てた寺院、名付けて『聖女寺院』は早速オール電化にしましたよ、気付かれない程度に壁の片隅にエアコンを取り付けて。コンクリート造りの寺院は暖房が入ってないから寒いのよ。

 ついでにグレゴリオ聖歌を配信で流したら、『神の歌だ!』と、聖職者たちが感動していた。『聖女パワーです』と言えば何でも通るから。


 寺院が信仰している宗教?

 知りません、興味ありません。


 毎朝一緒に朝食をとるようになってから、【頭のおかしい変態旦那ついでにセクハラ男】とも会話をするようになった。何と、旦那様はいつの間にか侯爵様になっていて、しかも、国立大学考古学研究室のパトロンだったのだ!


 頭がイカれてるんじゃなくて、発掘屋だった!

 ……ちょっと興味があります……すっごく興味があります。


 測量やりましょうか? この世界はアナログ三角測量ですか?


「それ早く言ってよ~、わたしも発掘に行きたい」

「発掘に行きたかったら俺の言うことを聞きなさい」

「何を聞くんですか?」

「ノアの定位置はココ!」


 ということで、わたしは今日も旦那様の太ももに座る。

☞次回、とうとうノアは念願の発掘現場へ。しかし……。

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