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奥様は聖女様――契約妻になったらどういう訳か聖女にされました  作者: 赤城ハルナ
【第二章】奥様聖女ノアの旦那様職場見学

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13/21

ホワイト屋敷 執事の挨拶

 私はアルバス領主ホワイト屋敷の執事アンガス・ヤングと申します。

 半ズボンは履きませんよ?


 僭越せんえつながら、私が、これまでホワイト家で起きた(ご主人様がやらかした)出来事を説明したいと思います。


 ご主人様は二十代半ばにして、先代当主様――お父上――亡きあと伯爵家を継いだのでございますが、領地や社交――生産物の管理やら地代やら諸々の裁判、議会など――そっちのけで趣味に勤しんでおりました。

 そのため家令がどんなに苦労していることか。


 領地の経営を担うのは先代からの家令でございまして、アルバス領の地主の倅で、ロースクールを首席で卒業した大変優秀な人物なのでございます。


 ご主人様といえば、国立大学考古学学科をそこそこの成績で卒業し、その後考古学研究室に居座り、ああだこうだと自説を主張しまくっては学会から遠巻きにされるというお方なのでございます。





 可愛らしい奥様との甘い馴れ初めでございますか? これには深い理由がありまして。


 そもそも心優しくも何も考えていなかった先代様が、知人である子爵家のバツイチ娘を居候させたことが発端になりまして、アレコレあったのでございます。


 そのバツイチ娘――リリィ嬢――は、十六歳で結婚後一年ほどで離縁され、実家に戻ることを拒否されたため、先代様が二十歳まで保護するという形でホワイト屋敷に来たのでございます。

 その娘が大層嘘つきでございまして、ご主人様の母上をだまくらかして伯爵家に取り入っていたのでございます。


 その目的は、屋敷を追い出される二十歳までにご主人様と再婚し、伯爵夫人に収まって贅沢をするということだったらしいのですが……。

 しかしわれらがご主人様はきわめて理知的かつ理性的かつ合理的な方、そんな稚拙なだまくらかしはスル~です、さすがです。


 ところがいつまで経ってもしつこくまとわりつくリリィ嬢に業を煮やしたご主人様。適当な女性を二年間契約で妻とすることにした結果、今の奥様――ノア・テリア男爵令嬢を迎えることになったのでございます。


 今考えてみますと、何という自己中で無慈悲な契約をノア嬢に強いたのでございましょう!

 何回ご主人様を殴り倒して引きずり、門にさらしたくなったことか!


 二人だけの結婚式のあとホワイト屋敷に現れたウェディングドレス姿のノア嬢は、それはそれは子供のように初々しく可愛らしくていらっしゃいまして、使用人みながペットにしたいと思ったのでございます。


 あ、二年間という契約でしょうか?

 ヘタレご主人様によると、奥様を見たとたん、即・消滅したようでございますよ。


 リリィ嬢を追い出すためだけの契約結婚だったのですが、奥様を一目見ただけでズキューンしてしまったご主人様(笑)、契約のことはもはやどうでもよくなってしまったようなのです。

 何というヘタレでございましょうか。


『いいか、これからはノアがこの屋敷の女主人だ。ノアの指示に従うように』

『『『かしこまりました!』』』


 しかし、そうはならなかったのでございます。


 奥様はそれっきり部屋にこもりきりになり、三年間一度も姿を現すことはありませんでした。

 しかも、奥様部屋に侵入しようとしたご主人様を雷撃で撃退するという、ざまあをやらかしたのでございます。

 二年間だけの妻という鬼畜契約を強要なさったご主人様に、お怒りだったからでしょう。


 ご気分を害され、奥様部屋にこもった奥様に対し、ご主人様は何回か夜這いをしかけ、その度に雷撃され、殺されそうになりました。

 鬼畜契約に対する復讐かと存じます。


 にもかかわらずメロメロなご主人様は全てを許し、それはそれは奥様を溺愛しているのでございます。


『俺は発掘王になる!』

『お励み下さいませ』


『今宵こそノアを抱く!』

『お励み下さいませ』


『ノアが可愛すぎて心臓が持たない!』

『……おは……』


 さて、そんなホワイト屋敷でございましたが、寺院本部の命により奥様が『聖女』に認定されたのでございます!

 しかも、アルバス領主は伯爵から侯爵へ陞爵しょうしゃく、屋敷の隣には『聖女寺院』が建立されたのでした!


 これには使用人一同ビックラしまして、しばらく理解が追いつきませんでした。





 ご主人様は領主の仕事そっちのけで、国立大学考古学研究室のパトロンをなさっております。

 元々その研究室出身なのでございますが、趣味が高じてご卒業後も研究室に入りびたり、研究費補助を匂わせて口出しなさっております。


 そしてアッチの博物館、コッチの博物館、アッチの発掘現場、コッチの発掘現場へ顔を出しては学芸員を困らせているのでごさいます。


 ご主人様の研究内容は、ズバリ『超古代文明』。一万年ほど前に存在したのではないかとされるアレですね、オーパーツ?


 現在ご主人様が発掘調査を進めておりますのは二箇所。アンゲル国中部山岳地帯の洞窟と南西部の海岸地帯。

 どちらもリゾート地というのは偶然ですよ?


『発掘王になって歴史に名を残す! 超古代文明は存在した!』


 これがご主人様の主張なのでございます。


 ですが思ったように事は進まず、一進一退状態。目覚ましい発見はありません。

 チームヴァシリウス発行の『ヌー』という薄い本は、あまり売れていません。


 現在ご主人様は、大学の考古学研究への補助金を十倍にする法案を議会に提出するべく、コッソリ書類を作成中なのでございますが……。

 これといった功績もないくせに、予算だけ国から分捕ろうとするとは!


 それでもめげることなく、がめついご主人様は今日もお宝と名声目当ての発掘に勤しみ、国家から予算を分捕る悪企みをするのでありました。



 なぜなら、ご主人様は発掘王を目指しているからでございます!

☞次回、能天気ノア登場です。

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