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奥様は聖女様――契約妻になったらどういう訳か聖女にされました  作者: 赤城ハルナ
【第二章】奥様聖女ノアの旦那様職場見学

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12/21

ホワイト屋敷 家政婦長の挨拶

発掘馬鹿ヴァシリウスの発掘現場編です。最後にスキル『オール電化』の(安直すぎる)からくりを説明する予定です。

 あたくしはアルバス領主ホワイト屋敷の家政婦長、マチルダ・アシャンでございます。

 戦いませんし戦死もしませんよ?


 僭越せんえつではございますが、あたくしが、これまでホワイト屋敷で起きた(奥様がやらかした)出来事を説明したいと思います。





 侯爵様の奥様は、それはそれはお可愛らしい、二十歳にもかかわらず少女(ガキ面アンドガキ体型)なレディーなのでございます。


 元はと言えば、さかのぼりますこと五年前、ノア様は光をまとってこの世界に現れました。ご降臨なさった寺院のシスターによりますと、白装束のそれはそれは神々しいお姿だったのだそうです。


 その後テリア男爵家の養女になり、三年前、わが侯爵家のご主人様が訳あってノア様を奥様にとご所望されたのでございます。というのも、『噓つきリリィ』という煩わしい居候が屋敷内で幅をきかせていたからでございますわ。

 ノア様がいらした年、噓つきリリィとリリィ嬢に心酔していました元奥様を、ご主人様が無事追放したのでございます。


 色々ありましたが、ご主人様は奥様を溺愛し、三年たった今ではお屋敷中がほのぼのとした雰囲気で溢れているのでございます。


 そしてあたくしどもは、日々奥様のお戯れをいかに受け流すかに心を砕いているのでございますわ。


『ズボンを穿きたい』

『奥様、それは言語道断でございます』

『旦那様のをひっつめればいいじゃない』

『なりません!』


『髪の毛をショートにしたい』

『奥様、それは言語道断でございます』

『簡単に洗えるしすぐ乾くからいいじゃない』

『なりません!』


『ヘビをブン回して投げたい』

『奥様、それは言語道断でございます』

『輪投げの練習になるからいいじゃない』

『意味不明でございます!』


『ラーメンとギョーザが食べたい』

『繁華街にでも行くおつもりですか、言語道断でございます』

『どうして?』

『治安の悪い場所など、侯爵家の奥様が行くような所ではありません!』

『いいもん、お店の人たちと行くから』


 奥様は首都で『ワイルドなウィッチショップ』という怪しげな店舗を経営しており、貴族の奥様ながら経営者でもあるのです。

 がめついのか何なのか、理解不能でございます。


『ノア、繁華街へ行くなんて許可できない。これからは侯爵家と寺院から護衛を付けるから、勝手なことをしてはいけない』

『旦那様、酷い! いいもん、ホーソー街から材料を買って、シェフに作ってもらうから』


 その後お屋敷の厨房から怪しげな臭いがたちこめたとか……。





 奥様は、貴族の奥様方がするような社交や刺繍など下世話な事はしません(デキません)。


 奥様は、貴族の奥様方のような言葉遣いはしません(デキません)。


 奥様は、貴族の奥様方がたしなむピアノなどは興味ありません(弾けません)。


 奥様は、貴族の奥様方がたしなむ詩などは作りません(デキません)。


 奥様は、(以下略)……。


 ご実家の男爵夫人様はノア嬢の淑女教育をしなかったのでしょうか。


 ただ、音楽を鑑賞することはお好きなようなのです。

 奥様部屋から爆発音がしたかと思うと、『フー、ウァオ、イェーイ!』という叫び声と共に、聞き慣れない騒音が流れてくるのです。心配になって様子を見ると、奥様は頭と両手を激しく上下に振っているのでした。


サンダー! サンダー!】

サンダー! サンダー!】


『奥様が悪魔憑きに……』

 わたくしは卒倒してしまいました。





 しかしながら奥様は、お屋敷を光であふれさせることができるのでございます。そのおかげで掃除・洗濯・料理・娯楽に至るまで、お屋敷は便利そのもの。お仕事も楽ちん。どこからか響く音楽と動く絵があるので、劇場や音楽ホールへ行かずに楽しめるのでございます。


 しかも奥様は、ここアンゲル国のために祈りを捧げるという神聖な『聖女』をしているのでございます。

 寺院本部から聖女に認定されて以来、ホワイト伯爵家はアルバス侯爵家にアップグレードいたしました。今やご主人様は、アルバス侯爵ヴァシリウス・ホワイト様ということになります。


 鼻高々ですわ、エッヘン。


 あたくしどもホワイト屋敷の使用人は、日々奥様に感謝しているのでございます。


 この屋敷の噂を聞きつけた者どもが使用人になろうと押しかけてくるのですが、あたくしどもは『させるかっ!!』と一致団結し、『神聖聖女守護団』を結成して応募者どもを蹴散らしているのでございます。

 噂によりますと、奥様のご実家テリア家も使用人候補が押しかけているらしいですわ。そこは、しっかり者の義弟様が牽制しているようですけれど。


 あたくしどもホワイト屋敷の使用人は、日々奥様部屋の薄い板に出る動く絵を見ながら、護身術を学んでいるのでございます。その上、不思議な武器で攻撃もできるようになったのですわ。

 棒のような武器の取っ手を押すだけで雷攻撃ができるのです。

 また、太陽のような光が出る棒もございまして、これを使うと相手の目が潰れるのでございます。

 これらをくらった侵入者は即陥落、地下牢行き、その後監獄行きでございますの。


 ですから、いかなる輩が屋敷に侵入しようとも、奥様公認武器と護身術で対処できるのでございます。


 ときどき使用人の間でも予告なく使われますので、浮気や不倫騒動がなくなり、ホワイト屋敷のモラルが向上したとか。


 どうしてこのような素晴らしい数々のことがらを、ガキ体型で幼稚な奥様ができるのでしょうか?



 なぜなら、奥様は聖女様だからなのです!

ホワイト屋敷の使用人たちのお仕事は、日々のお勤めと奥様聖女ノアの戯れをを受け流すことでした。

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