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新釈古事記伝  作者: りんたろう


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50.イワナガヒメとコノハナサクヤヒメ~オオヤマツミとタケミカヅチ

 少年のころのツクヨミには会ったことのないニニギだが、面影が色濃くのこったオオヤマツミの姿にたじろいだ。

「この少年のような姿に驚いたのかな?天津神としては珍しくないはずだが?」 

「失礼いたしました。ニニギと申します。お目にかかれて嬉しいです。

 大叔父上であるツクヨミ様と良く似てらしたので少々驚いてしまいました。」

「ああ、こちらこそ会えてうれしいよ。聞き及んでるとおもうが、オオヤマツミという。ツクヨミ殿たちの兄にあたる。会ったことはないがね。容姿が似ているのかい?忘れられていた息子としては少々複雑だな。

 ああそうだ、改めて紹介しよう。君を案内した二人は私の娘で国津神のイワナガとコノハナサクヤだ。

 ところで、我々のクソ親父殿はどうしているかご存じかな?」

「あの、イザナギ様のことでよろしいのでしょうか?」

「ああそうだ。私の片割れのカグツチを切りつけたイザナギ殿のことだ。天津神の本質とは言え、母が命懸けで生んだ者を切りつける者などクソ親父で十分だろう。」

「スサノオ様の不祥事の責任をとると、岩穴に閉じこもられたままと聞いております。私が生まれるよりも前のことなので、お目にかかったことはありません。」

「ふん、息子の不祥事とな。子を殺しかけたという自分の不祥事は棚に上げて。」

「オモイカネ様より伺ったのですが、オモイカネ様を含め、高天原の皆様はカグツチ様へのイザナギ様の行いの記憶が奇妙なほどに薄かったそうです。オオヤマツミ様がお生まれになったことに関しては記憶に蓋がされていたように思い出せなかったとか。」

 イザナギへのわだかまりをあらわにするオオヤマツミに言い訳のようにニニギが言った。

「それを急に思い出したと。まぁ、星の巡りが変わったからだろうな。」

「それです!オモイカネ様もとある方にそう言われたと。どういうことなのでしょうか?」

「それに関しては、今度ゆっくり話そう。

 それよりもニニギ殿は我々に頼みごとがあってきたのではないのか?」

「・・・お見通しだとは存じますが、お願いがあってまいりました。

 我らにお力を貸していただけないでしょうか?

 我らはオニムカデと神の呪いより生まれし妖への対応に手も人材も足りません。

 高天原は現在完全封鎖をされており、こちらへの派遣は難しい状況です。」

「ああ、天津神の降臨以降のことは聞き及んでいる。

 どうやらそなたたちは人間の心の機微というものが読み切れていないようだな。」

「おっしゃる通りです。そのせいで少ない仲間をさらに減らすことになりました。」

「まったく天津神とは難儀な存在だ。まぁ、私も最初は苦労したが学ぼうとする姿勢があれば体験から学べるはずのものだ。自身の万能さに胡坐をかいていたのだろうな。」

「言葉もありません。」

「で、今回星の巡りが変わったから私のところにたどり着けたわけだが、何故まっすぐに来なかったのか?」

「あーそれは、その・・・。」

「大方私の縁の者を助けるなどして、こちらの懐に優位に入り込もうとしたか?」

「・・・お見通しなのですね。」

「おおかたスサノオ殿辺りの案だろう?中途半端に人間の心の機微を学んだ者が使いそうな手だ。天津神に対する対応としては大失敗だな。」

「・・・言葉もございません。」

 ニニギは恥ずかしさに顔を赤くしながら、この前の鏡通信の時に居たメンツを思い浮かべた。

 ”皆さん、中途半端だそうですよ”

「おいおい、いくら恨みがあるからってそんなに言うなよ。ニニギ殿が可哀そうだろう?」

 その時、低めの声と共にガタイの良い男の天津神が入ってきた。顔立ちはスサノオに良く似ているが、更に男臭さと野性味を加えたような風貌だ。一目で天津神であることが分かった。

 ここにいる天津神はオオヤマツミ一人だと思っていたニニギはとても驚き身構えた。後ろで控えていたゴーマとアキヒコもニニギを守るように前に出た。

「ああ、すまんすまん、兄上から紹介されるまで隠れているつもりだったが、ちょっと可哀そうになって、思わず出てきてしまった。」

 男は自分の頭を軽く小突き、オオヤマツミを軽くにらんだ。

「もう少しぐらい恨みごと言わせてもらってもいいだろうに。

 まぁ、いい。ニニギ殿、八つ当たりすまなかった。許してもらいたい。」

「いえいえ!!オオヤマツミ様の今までのことを考えれば八つ当たりなどと思いませんでした。

 生まれる前のこととはいえ、何も知らずに高天原にいた私に腹を立てられるのもしょうがありません。」

「なんて出来たぼっちゃんなんだ!」

 それを聞いた男の天津神が感激したように天を仰ぎ、早く紹介しろとオオヤマツミをつついた。

「こいつは私の弟のタケミカヅチだ。雷の神だ。おそらく高天原ではだれも把握していない存在だ。」

「弟君!?」

「ああ、クソ親父が切りつけたカグツチの血からうまれた。ニニギ殿も知っているように天津神は自身の体の一部から新たに神を生み出すことが出来るだろう?ツクヨミたちもそうだったはずだ。私が逃げ出すときに手の中にカグツチの血を握っていた。地上に降りて手を開くと赤子のタケミカヅチがいた。」

「私の血からは神の呪いが生まれたのですが・・・。」

「それは人によって流させられた血だろう?血を流す原因が神か人かの違いだ。

 まったく、どちらも痛みがあることには変わりないのにな。」

「兄上、お怒りは鎮めて本題に参りましょう。」

「ああ、そうだな。

 我々としてはこちらにニニギ殿が来られることもその目的もおおよそ把握していた。

 そして力を貸すこともやぶさかではない。

 まずは我々4人で葦国中原に参り、スサノオ殿と話をしたい。

 その後私は帰るが、イワナガとコノハナサクヤとタケミカヅチをそちらにお貸ししよう。」

「なぜそのように良くしてくださるのですか?」

 思いもかけない良い提案にニニギは驚き思わずつぶやいた。

「ああ、罠かなとか思ったのかい?

 星の巡りが変わったといったろう?それについて詳しくはスサノオ殿がいる時に話すが、天津神たちの存在意義が変わったのさ。

 我々は新たな経験と学びをえるための岐路に立たされた。そのために必要な手助けなのだよ。」

「ニニギ様、父上は天啓を受け、感覚で話をするので理解はなかなかできないと思います。おおよそのことが過ぎ去ったときに、ああこうゆうことだったんだなと周りの者がやっとわかるのです。混乱されているとは思いますが、父の提案を受け入れていただけませんか?」

 まさに今その通りに混乱しているニニギにイワナガが言い、ニニギは頷くしかなかった。

オオヤマツ→オオヤマツミの間違えです。本章以降はこちらの表記で・・・。

前の部分ものちほど修正いたします<(_ _)>→修正いたしました!

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