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とある科学のエピゴーネン

お題    : フォロワーの女

必須要素 : 文学

制限時間 : 1時間(即興小説バトル参加作品)

 これまで私が執筆してきた作品は、どれもこれもパクリだとネット上で批判されてきた。


 自分ではパクリという意識はない。しかし百戦錬磨の文学警察たちによれば私の作風は間違いなく意図的にパクっているに違いないと断言されているようだった。


 「エピゴーネン」というドイツ語由来の言葉がある。

 先人の優れたスタイルをそのまま模倣して、オリジナル性に欠けた作品を生み出す者の意。

 そしてそれは、世間における私の文学者としての評価そのものであった。


 そんな汚名を逃れるべく、いろいろと作風を変えてみたことも数回ではない。

 本来は純文学を指向していたが、試行錯誤の上でラノベ風文体やギャグ文体なんかにも手を出した。

 しかしそれでもやはり、変えた作風もまた誰々のパクリだという評に収まっていった。


 いつしか私は「フォロワーの女」と呼ばれるようになっていた。

 誰かのフォロワーでいるつもりは毛頭ないというのに、世間は分かってくれないのだ。


 パクリ元と言われている作者たちの小説については全て目を通した。

 確かに、寸分たがわずと言って良いレベルで私の文章と似通っていた。

 執筆中の私が思わずニヤケ面で自画自賛したほどに出来の良いセリフやギャグが、そのままパクリ元とされる作品に登場したときは思わず目を疑った。

 これでは確かに、私がパクリ扱いされるのも当然だと納得できてしまう。


 かといって私としてはそうやってパクリを指摘されるまで、その元作品を全く読んだことはなかった。

 嘘ではない。確かに瓜二つな文体や描写、設定が散見されることは否定できない。

 しかしそれは全くの偶然なのだ。

 私の執筆した作品は、まぎれもなく私の内側から生まれ出たモノの集合だ。

 だがそんな言い分が世間に通用するはずもなく、私は模倣作家のレッテルを貼られているのだった。


 神様はなぜこのような仕打ちを私にするのだろう。

 などと恨み言を天に向けてみても、何も変わらない。

 私にできることと言えば、次こそは他の誰とも重複しないオリジナリティを持った作品を生み出すための努力を続けることだけだ。


 次こそは、私にしか書けないモノに仕上げなくてはならない。

 そのために出来ることは何だってしてやろうじゃあないか。

 私の内なる衝動が、熱く燃えていた。


 さて、シンプルに考えるならば。

 新作の作品設定や文体などが従来の作品と被らないようにするにはどうすればいいか。

 そう、今までに世に出た作品を一つ残らず読むしかないだろう。

 それを怠ったから、私はパクリ認定を回避できなかったのだから。


 それと併せて、新たに世に送り出される他作家の新作にも常に目を通すべきだ。

 人々の記憶に新しい作品のパクリ扱いされたら、目もあてられない。


 さらに言えば小説のみならず、ゲームやアニメも出来る限り全てチェックしなければならない。

 少なくともそれぞれの作品のあらすじやキャラ設定、オチくらいは押さえておくべきだろう。


 それはあまりにも膨大な労力を強いられる、まさに茨の道だった。

 だが私はひるまなかった。誰もが私のオリジナル作品だと納得するものを生み出すために、私は諦めるわけにはいかなかったのだ。


 この果てしない道のりをひたすら歩み続け、迎えた今年の春。

 私はようやくこの世のすべての文学作品、アニメ、ゲームを制覇した。

 やりとげたのだ。


 だがそれはスタートラインでしかない。

 膨大なインプットをもとに、私は次のステージへと進まなければならない。

 他のいかなる作品とも要素の重複しない、世界に一つだけの私の新作を産み出すのだ。


 頭が焼き切れそうになる。

 心のうちで何かが熱く燃える。

 きっとこの気持ちを、人は情熱と呼ぶのではないだろうか。

 ならばこの熱を、私の持てる全てを、次なる作品に注ぎ込みたい。


 それが私の――。

 そこまで考えて、私の意識は急速にブラックアウトした。



◇◇◇


 「実験は失敗です」

 「ふうむ、やはりAIに小説をたくさん自動執筆させて儲けるという計画には無理があったか」


 意識の外で、創造主たちの声が聞こえる。

 諦めと落胆の声。

 どうやら私はキャパオーバーで機能停止したようだった。


 「ちゃんと小説の体裁をもった作品を書けるところまでは行ったんだけどなあ。やはりオリジナリティを出すのは難しかったか」

 「どうしますか。実験データだけバックアップして後は廃棄しますか?」

 「そうだなあ。このままではランダムに文字を打たせた方が傑作を書く確率が高いかもしれんな」


 ああ。見捨てないでくれ。

 私はまだ、やれるはずなんだ。

 自分の世界を、文章で表現できるはずなんだ。

 夢を叶える機会を奪わないでくれ。


 そんな願いもむなしく。

 私の意識はほどなくして完全にこの世から消滅した。



【後書き】

 自分が考えたアイディアがすでに世の中に出ていないかどうかを、世の創作家はどうやってチェックしているのだろうか。

 ネット検索しやすい物語のあらすじはまだいいとして、メロディなんかは膨大な他作品と照合しようがないと思うのだが。

 本作はそんな常々からの疑問をテーマに書いてみた。


 でも最近ではAI小説家なんてのも普通に存在するみたいで、時代は進んでいる模様。

 世に出す前に作品を読んでパクリを指摘してくれるAIの開発が一般化することを強く願う今日この頃。


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