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「生きている男祭り!」は死者差別だ!

お題   : 生きている男祭り!

必須要素 : つけ麺

制限時間 : 1時間(即興小説バトル参加作品)

 人類が死を克服してすでに半世紀以上が過ぎようとしていた時代。

 地球上の人間の数は増加の一途を辿っていた。人が死なないのだから当然である。


 死を克服とは一口で言っても、生き物である以上は本当に死なないわけではない。

 科学的な処理を施し、死後も人格や知能などを保ったままゾンビ化することで、疑似的に不死を実現していたのである。

 ゾンビとは一口で言っても、肉体が腐っていたり理性を失ったりはせず、至って生前と同じ生活を送ることができた。食事を楽しむこともできるし、眠ることもできるし、子作りだってできた。


 ゾンビは体が成長しなくなるという大きな違いはあるが、ある程度成長した人間にとっては実質的に不死と変わらないといえる。むしろ老化しなくなるので、若いうちに死を選んでゾンビとして生まれなおす選択をする人間が増加した時期があったほどだった。


 人が死なないのであらゆる国では人民があふれ出していた。

 食料も水も足りないし住む場所も足りないありさまだ。

 まあ誰も死なないのでそんなことは些細なことであった。


 ゾンビは死なないので働いて賃金を稼ぐ必要もない。

 働く必要があるのはまだ成長しきっていない「生きた我が子」を養う必要がある者だけである。


 やがてすべての国々は、生きている人間のために残された食料や水などの資源を分配して、ゾンビは生きている者のために様々な労役を課されるという社会システムを自然と採用しだした。

 そうやって今後の子孫に資源を残していかなければ、やがてはこの地球上にはゾンビしかいなくなるという喧伝がなされた。


 こういった社会システムやイデオロギーを、「ネオ生存主義」という。

 なおネオが付かないほうの生存主義とはまったく意味合いが共通しないことに各自留意されたし。


 このネオ生存主義が浸透し、しばらく世界はうまいこと廻っていた。

 ところが、あらゆる事象がそうであるように、このシステムにもやがて綻びが発生することになる。


 ネオ生存主義はざっくりと言ってしまえば「これからの子孫のためにあらゆるリソースを温存しないとやべーことになるから、ゾンビみんなで協力しよう」という趣旨の思想である。

 だがゾンビとなった者のなかからちらほらと、それに異を唱えるものが出始めたのだ。

 曰く、「子孫とか人類の未来とかぶっちゃげどうでもいい。俺たちは人生を長く永く楽しむためにゾンビとなったのだ」と。


 こうしてネオ生存主義は時代が進むにつれて、古臭い考え方と呼ばれるようになっていった。

 ゾンビは増える一方なのだから、反対派が増加するのもまた当然と言えた。

 初期のころにゾンビ化して地球上を覆っていたネオ生存主義者たちも、時代を重ねるごとに増えていく反対派の勢いに飲まれる事となった。


 ついには戦争が起きてしまう事態となったが、もちろん誰も死なないので勝敗がつくはずもない。

 そうこうしているうちに人類は宇宙に生存範囲を広げることに成功したので、ネオ生存主義者たちは地球以外に豊かな資源がある新しい惑星を求めて星の海に旅立っていった。

 彼らは死なないので、いつか必ずその目的を叶えるだろう。宇宙船のほうが壊れなければ。


 そして地上にはアンチネオ生存主義者が残され、いつしかほとんどの国がネオ生存主義を撤廃することとなっていったのだった。


 これを第一次生存騒動という。


ーーーーーー


 第二次生存騒動は人類の想像よりも早く訪れた。

 きっかけは日本で活躍する大人気ロックバンド「つけ麺四間飛車」のコンサートだった。


 つけ麺四間飛車は活動歴三百年の超ベテランで、将棋とつけ麺を世界に広げることを目的に結成された研究ユニットがたまたまバンドやってみた動画をSNSにアップしたらバズったという経緯で結成された異色のロックバンドである。


 そのつけ麺四間飛車の最新コンサートが、SNSで大炎上したのだ。

 その理由はコンサートの形式である。

 なんとそのコンサートは、生きている男性しか参加できない「生きている男祭り!」と銘打たれていたのである。


 この「生きている男祭り!」は完全なゾンビ差別、ついでに女性差別として大炎上した。

 つけ麺四間飛車のリーダーはゾンビ化技術が普及するよりも前に生まれていた旧時代人だったのでこのあたりの時代感覚が古かったというのもあるが、なにより彼自身が数少ないネオ生存主義者の生き残りであった。


 この炎上は全世界に新たな論争の火種をまき散らした。

 意外にも、つけ麺四間飛車に賛同する者も多く現れた。

 比較的最近ゾンビ化したものはやはり両親からある程度の期間は生者として大事に育てられていたので、そういったぬくもりを次世代に繋いでいく必要があると考えたのだろう。


 ゾンビたちが地球の資源を独占しているようでは、新たに生まれてくる子供たちの成長は望めない。

 このままでは人類の歴史は閉じ、ゾンビだけの世界になってしまう。


 このようにして人類の未来を賭けた第二次生存騒動が幕を開けたのだった。

 当初はアンチネオ生存主義者の方が数で優勢をキープしていく。

 だが最終的には宇宙に旅立っていたネオ生存主義者たちが宇宙人の軍勢を連れて戻ってきたので、ネオ生存主義者たちの大勝利で騒動は終わった。


 そしていろいろ検討した結果、ゾンビ化技術を捨てた方がいろいろといいよねという世界的な合意がなされて、世界から不死の技術は失われたのであった。

 めでたしめでたし。


 これが今から六千万年前のお話である。


【後書き】

 とんちきお題が出たときにありがちな、風呂敷を広げまくったSF作品。

 必須要素の「つけ麺」が代替可能なワードとしてのみの登場となっており、即興小説としてはポイントが低い出来になってしまった。


 それにしても今こうして読み返すまで、こんな作品を書いた記憶は全く消えていた。

 自分で書いたはずなのに展開が読めず、なんだか新鮮な気持ちであった。 

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