無茶なお題の消化方法
お題 : 真紅の怒りをまといし真実
必須要素 : トランプを武器にして戦いそうな男
制限時間 : 1時間(即興小説バトル参加作品)
「トランプを武器にして戦いそうな男」
そう書かれた紙を引き当て、俺は思わず考え込んだ。
今日は高校の運動会。
俺が所属する赤組の逆転勝利が懸かったラスト前の競技、借り物競争でのことである。
もう一度引き当てた紙に書かれた内容をしげしげと読む。
「トランプを武器にして戦いそうな男」
やはりそう書いてあった。すでに書かれていることが変わるはずもない。
お題は「男」であるから、誰かをゴールまで連れて行かなくてはならない。
問題は、そいつがトランプを武器にして戦いそうかどうかである。
一体俺はどうすればいいのか。
突破口となる考え方は大きく三つあるように思われた。
一つ目。
とりあえずまずはトランプを入手し、後は適当な友達にそれをもたせてゴールに連れていく方法だ。
これが一番早いと思う。だが、そいつが「トランプを武器にして戦いそうな男」にカウントされるかどうかは運営次第。つまりは運になってしまう。
赤組勝利が懸かったこの局面で、ギャンブルを選ぶことはできない。
そう俺の心が叫んでいる。
二つ目。
トランプ大統領に顔が似ている男をゴールに連れていく方法である。
別名、トランプ違いです☆てへぺろ~でお茶濁す作戦。
しかしはたしてそれがトランプを武器にしているという判定になるかははなはだ疑問だった。
そもそもトランプ大統領に顔が似ている男が学校内にいるかどうかからして怪しい。
やばいやばい。
焦りすぎて思考が妙な方向に飛んで行ってしまっている。
何がトランプ違いだ。俺はアホなのか。アホだったわ。
残された最後の方法。
これはそのまんま、「トランプを武器にして戦いそうな男」を探してゴールする方法である。
まさに盲点の正攻法。気付くの遅いよ。
これができれば文句なく勝てる、最強の選択肢である。
じゃあトランプを武器にして戦いそうな男とは一体どういう男の事を指すのか。
最大の難関はやはりそこだった。
運営はそのあたりをどうやって判断するつもりなのか。
時間がない。急げ。急いで何か考え出さなくては。
とりあえずは、世間一般にトランプを武器にして戦いそうな男と思われているキャラを参考にするしかないだろうか。
トランプを武器にして戦いそうな男。
このフレーズを聞いて誰もが一番最初に思い浮かべるのはやはりそのフレーズの元ネタである蝶ヶ崎蛾々丸だろう。こいつの「不慮の事故」はマジで強すぎる能力だったよなあ。
俺にとっては今の状況がまさに「不慮の事故」なわけだが。
では蛾々丸みたいな恰好の男を探せば解決するだろうか。
無理だろう。あいつ確か高校生のくせに燕尾服にモノクルとかいうファッションだし。
そんな格好の男はこの運動場のどこを探してもいやしない。
保護者席にそんな男がいたらむしろ引くわ。
次点で思いつくのは、ヒソカとか男爵ディーノあたりか。
ロクなやつがいないな。
そういえばなんかの格ゲーにもトランプを武器にして戦う男がいた気がするけど、思い出せない。どっかの大統領を暗殺してそうな名前だった気がする。どうだっていいけど。
くそう。なんなんだ、このお題は。
なにが「トランプを武器にして戦いそうな男」だ。
どこで借りられるんだよ、くそったれ。せめて借りられるお題にしろや。
もう駄目だと思い、周囲を見渡して、俺はあることに気付いた。
他の参加者も、お題用紙を握りしめながら頭を抱えている。
どうやらみんな、癖のあるお題を借り物として指定されているらしい。
そのなかで、隣のクラスの蜂須賀くんが突然ブチ切れ出した。
彼は同じ赤組の仲間だ。握りしめられている彼のお題用紙をちらりと覗き見る。
「真紅の怒りをまといし真実」
と、これまた酷いお題が書かれていた。
「言うに事欠いてまさかの『真紅の怒りをまといし真実』だと!? そんな中二病みたいな真実が現実にあるわけねーだろ! 二次元と三次元の区別もつかねー馬鹿なんじゃねーのか!?」
蜂須賀くんはお題を決めたであろう運営に向かって怒り狂って中指を立てた。
その吼え猛るような怒り方と、彼のセリフ回しに、俺はどこか見覚えがあった。
ああ、今の蜂須賀くんはまんま蝶ヶ崎蛾々丸のキャラそのものじゃないか。
つまり蜂須賀くんこそ、トランプを武器にして戦いそうな男にふさわしい。
俺は蜂須賀くんの手を取った。
蜂須賀くんは気持ち悪そうに俺のことをみたが、俺が自分のお題用紙を彼に見せると、瞬時に俺の考えていることを理解したようだった。
このままでは共倒れ。
しかし俺が蜂須賀くんをゴールに連れて行けば、得点が入るに違いない。
二人の気持ちがひとつになったのだ。
結局、俺たちは連れ立ってゴールした。
一番乗りである。
蜂須賀くんは無事にトランプを武器にして戦いそうな男に認定された。
そしてそのまま他のゴール者は現れなかったため、赤組は見事に逆転優勝したのだった。
【後書き】
私の参加史上では最狂クラスのお題と最狂クラスの必須要素が組み合わさった無茶振り特化の挑戦回。
こうなってくるとあらすじ作りも困難なので、とりあえずオチも決めずに適当に書き始めるしかない。
こうしてその場のノリで執筆した結果、雑に展開して雑に終わってしまった。
気に入っている点としては、無茶振りに応えようとする筆者と無茶振りに応えようとする主人公がリンクするメタ構造とタイトルになっていること。
ダメな点はいろいろあるが、版権ネタが分からない人には後半がちんぷんかんぷんなところが特にダメ。




